第188話 ミス・トキコー④~どういう事だ?なんでこういう事になるんだ?

“それでは、エントリー者と推薦者の投票タイムに移りまーす”


 投票締め切りはPRタイム終了の10分後だ。俺と鈴村の二人でステージの中央に投票箱と机を持って行き、そこにエントリー番号1番の竹内先輩と推薦者の遠藤先輩から順番に投票していく事になる。この投票は毎年行われるセレモニーのような物で、ステージには新聞部も来て投票の様子を撮影しているけど、これは去年もこうだったから特に変わってない。それぞれ支持するエントリー者が投票すると会場から一斉に歓声や拍手が沸き起こるのは例年の事で、相沢先輩が投票したら歓声が上がった。藍の時も歓声が上がったが、相沢先輩とほぼ同じくらいの歓声だった。最後に藤本先輩が投票したが、相沢先輩や藍と殆ど同じくらいの歓声だと思ったのは俺だけだろうか?

 エントリー番号11番の藤本先輩と推薦者の本岡先輩が投票をしたところで新聞部はステージから降りていったけど、最後の投票者は実は藤本先輩ではない。


“それでは、実行委員長の唯も投票しまーす”


 唯はそう言うとエプロンのポケットに入れてあった投票用紙を取り出し、それを投票箱に入れた。でも、なぜか唯が投票用紙を取り出した時に大歓声があがり、しかもあちこちで写真を撮っている。それは唯が投票箱に投票用紙を入れた時も同じで、投票した瞬間に今までで一番の歓声が上がったのは間違いない。おまえらー、何度も言うが今日は唯が主役じゃあないぞ、唯はあくまで司会、つまり裏方だ。唯に歓声を上げてどうするつもりなんだ!?


“では、これから開票を行いますので、しばらくお待ちください”


 俺たち実行委員は4班に分かれて開票作業を始めた。ステージの上に大きなテーブルが4つ置かれ、それぞれの机の上に置いた投票箱のフタが開けられ、大量の投票用紙が出て来た。

 俺の班は安孫子先輩と鈴村、遠藤さん、中野さんの五人だ。事前に五人で役割分担について話をしてあって、俺が藍、遠藤さんが藤本先輩、中野さんが相沢先輩の票を集め、それを10票ずつ輪ゴムで綴じて手持ちの籠に入れていく作業を行う事になっている。安孫子先輩はエントリー番号1番から4番、鈴村がエントリー番号5番から8番の表を集め、やはり10票ずつ輪ゴムで綴じて籠に入れる作業を行う・・・予定であったのだが、どうもおかしい!

 最初に異変に気付いたのは俺だ。続いて安孫子先輩もおかしいという事に気付いた。それに鈴村、遠藤さん、中野さんもおかしいという事に気付いて全員が割り当てられた票を集める手を止めて顔を見合わせた。


「どういう事だ?」

「なんでこういう事になるんだ?」

「あきらかに変よ」

「仕方ない、作業方法を変えましょう」

「わたしも遠藤さんの意見に賛成よ」

「俺もそう思います」

「そうだな、変えた方がいいと思うぞ」

「よし、変えよう」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る