第156話 ついつい盛り上がって

 この質問を最後にトークショーは終わり、その後は明日以降の簡単なスケジュールの説明、さらには各クラス・部・同好会の代表によるイベント紹介があり、2年A組の場合はクラス委員の村田さんがA組のイベント紹介を行った。それらの紹介が全て終わった後は学校事務からの提供品であるトキコー祭の期間中に購買や食堂で使える食券やパンの引換券の抽選会が行われた。パソコンを使って当選者を決める抽選作業は生徒会女子四人が交代で行い、泰介がサンドイッチの引換券を当ててご機嫌になっていた。ただ、引換券は明日の朝クラス担任から渡されるので、今日は発表だけだ。


 これで前夜祭の行事は全て終了し、予定時間を少しオーバーしたが前夜祭は無事に終わった。

 俺たち2年A組の準備作業は全て終わっていたが、一部のクラスや部では準備作業が終わってないので引き続き作業を行うようだ。ただ、どんなに遅くとも午後8時半までに終わらせ、9時には門を閉める事になっているので、ダッシュで講堂を出ていく人も多かった。

 俺は準備作業が終わった事で帰る事にしたのだが・・・正直言って、今日は家に帰るのも憂鬱だからどうしようかと思っていたけど、それでも何もしないで教室にいるのも変だから帰ろうとしたらメールが入った。

『もう少ししたら生徒会の仕事も終わるよ。折角だから三人揃って絵里お姉さんに会おう! 唯より』

 そうかあ、藍と唯は俺と三人で姉貴に会いたいのかあ。少々不本意だけど三人で帰るとするかあ。

 俺は唯にOKの返信をしたけど、まだ1時間くらい後との返信があり、俺は先に学校を出ると送信して教室を出た。でも、俺が靴を履き替えようとしたら、たまたま泰介が歩美ちゃんと並んで歩いてくるのを見付けたから二人に声を掛け、大通りの地下街にあるWcDで藍と唯を待っている事にし、二人にメールで「大通りの地下街にあるWcDで泰介と歩美ちゃんと一緒に待ってる」と送信してから学校を出た。

 俺は泰介と歩美ちゃんとWcDでポテトとコーヒー注文してお喋りをしながら藍と唯が来るのを待ってたけど、二人が来たのは1時間以上も後だった。

「すみませーん、遅くなりましたあ」

 そう言って唯は謝ったけど、さすがの唯も今は制服だ。

「おー、遅いぞー」

「さすがのわたしも待ちくたびれたわよ」

泰介と歩美ちゃんも小言を言ったけど、目は笑ってる。

 藍と唯もポテトとコーヒーを注文した後に俺たちのテーブルに所へ来て、どうして遅くなったのかを笑いながら教えてくれた。

「あのね、前夜祭が終わった後に生徒会室で『生徒会女子四人組への質問書』が入った箱を全員で開けて質問内容を読んでたら、ついつい盛り上がっちゃってね」

「そうそう、トークショーの質問内容より、残っていた質問の方が面白かったから、私も結構楽しかったよ」

「へえ、わたしもその内容をちょっと知りたいなあ。泰介もそう思うでしょ?」

「おれも知りたいなあ。拓真は?」

「俺も同じだ。教えてくれ」

「いいわよー」

 そう言って藍と唯は『生徒会女子四人組への質問書』の内容を教えてくれた。

 相沢先輩への質問としては「2年前の冬に某スキー場のレストハウスで相沢先輩を見かけましたが、その時に相沢先輩は焼きそばを注文してましたけど、紅ショウガがセルフサービスになっていたから、どう見ても焼きそばよりも多く紅生姜を持って行きましたね。ひょっとして紅生姜好きですか?」「回転寿司でテーブルに置いてあるガリを食べまくって、さらにガリをお代わりし、それも全部ひとりで食べていたという話は本当ですか?」「WcDやマイスドでは、コーヒーを最低5回お替りしないと気が済まないという話は本当ですか?」と、殆ど暴露話に近い質問ばかりで、藤本先輩には「どういう条件だったら付き合ってくれますか?」「足を嘗めろと言えば嘗めますから付き合って下さい」「棘の鞭で叩かれてもいいから付き合ってください」という質問が大半だったらしい。当然だが藍や唯だけでなく宇津井先輩たちも当人にその答えを聞きまくって、大半は爆笑しながら答えをはぐらかしていたみたいだけど、相沢先輩に関してはその様子からして全部事実らしく、藤本先輩は「そこまでして私と付き合いたい奴がいたとは予想外」と逆に困惑していたらしい。

 唯に関しては「ヘアピンをいくつ持っていますか?」「一番お気に入りのヘアピンは何ですか?」「もしお気に入りのヘアピンを渡したら付き合ってくれますか?」など、ヘアピンに関する物が結構多かったようだ。ただ、トークショーではヘアピンに関する質問書が選ばれなかったので答えてなかったが、一番お気に入りのヘアピンについては『秘密』らしく、お気に入りのヘアピンを男の子から渡されたとしても『ごめんなさい』すると言ったようだ。

 藍には粒あんと和菓子に関する質問が大量に入っていて『一番好きな和菓子は何ですか?』という質問が結構多かったみたいだ。中には「粒あんぱんを差し出して『付き合って下さい』と言ったらOKしてくれますか?」「自分の家は和菓子屋なので、店中の和菓子を全部タダで食べてもいいから付き合って下さい」など、和菓子に関連した告白内容も結構多かったようだ。藍が言うには、粒あんを使った和菓子ならほとんど全部好きなようで、特に大福は目が無いようだ。ただ、和菓子を差し出して告白されても『全部断る』と答えたようで、相沢先輩からは「えー、もったいなーい」、藤本先輩からも「和菓子食べ放題なんて羨ましいのにどうして断るんだ?」と揶揄われたようだ。

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