第119話 7人目と8人目

 そして放課後。

 トキコー祭実行委員会は唯の予想通り紛糾寸前までいったが、舞が執行部側に立って意見を述べ懇切丁寧に論破した事で無事解決し、また、質問事項に対しても相沢先輩や唯にピンポイントなアドバイスを送って平穏に解決させ、各種印刷物の確認作業も終了して予定よりも少しオーバーしたが無事に終了した。

 舞は再び存在感を示し、とうとう相沢先輩が『実行委員長補佐』なる肩書を勝手につけて生徒会室へ連れていってしまった。相沢先輩が言うには、既にミステリー研究会側には了承を得ているので7人目の執行部メンバーとしてトキコー祭終了まで準備作業を手伝ってもらう事になるようだ。

 蛇足だが臨時職員会議の議題になった例の生徒たちについては、斎藤先生と植村先生のダブルの『ありがたーいお話(?)』を長々と聞かされた挙句、全員に反省文提出、所属する部とクラスのイベントに参加する事が義務付けられた。それにより各クラス・部の人員配置に余裕が生まれ、結果として2年F組とG組の問題は解消された。今日の実行委員会でも鈴村が「皆さんのお陰で目途がつきました。ありがとうございました」と謝意を述べていた。

 俺たちは実行委員会終了後に2年A組に戻ったが、軽音楽同好会のサイドギター担当でトキコー祭実行委員でもある2年D組の中野明日香さんも参加する事になった。

 俺たちがA組に戻ったら、既に山口先生と高崎先生、それに他の面子も揃っていて、ある程度の話が進んでいる状態だった。ただ、昼休みの時には聞いてなかったが田中先輩と同じ3年E組の真鍋穂乃香先輩も来ている。俺と藍、唯、それと中野さんは途中から参加する形になった。

「おーい、たいすけー、待たせたな」

「遅いぞー、こっちは先にやってたぞー」

「すまんすまん、で、どうなった?」

「あー、それだがなあー、結構決まってるぞ」

 泰介の話を総合すると、当日の講堂の使用は準備・片付けを含めて1時間。ただ、山口先生の計らいで明日の放課後にリハーサルを行える事になり、楽器はそのまま講堂のステージに残したまま鍵を掛けるので準備作業自体は問題ないとの事だった。

 メンバーのうち、ベース担当の3年A組秋山美穂先輩、キーボード担当の1年A組琴木紬さん以外は1時間授業が少ないので授業が終わり次第講堂へ集合となる。問題なのは開場前に講堂周辺で入場順や場所取りの騒動が起きる可能性だ。だから事前に田中先輩が風紀委員でもある中野さん、それと田中先輩のクラスの風紀委員である真鍋先輩を今日の会議に呼んでいたのだ。

 風紀委員は通常の活動以外にも、個人の判断で風紀委員の腕章をして活動する事が認められている。だから開場前の講堂周辺の警備は中野さんと真鍋先輩が風紀委員の腕章をして行い、2年A組の授業が終了したら藍が中野さんに代わって風紀委員の腕章をして警備に参加する段取に決まった。開場したら誘導も担当し、そのまま真鍋先輩と藍は最後まで腕章をして会場内を監視する役目を行う事になる。唯も会場内の誘導と監視だが、こちらは風紀委員ではないので腕章は無いが、唯が行けば騒動も収まるので風紀委員並みに効果がある。終了後の講堂の清掃は2年A組が担当する事になるが、それは明日の朝に山口先生が説明し、藍と唯がみんなに協力をお願いする段取りになった。ただ、真鍋先輩と藍、唯は明日のリハーサルには参加しない。

 歩美ちゃんはMCの担当で、俺が照明、泰介が音響を担当し、明日のリハーサルに合わせて歩美ちゃんから使い方を教わる事になった。

 それと・・・高崎先生のゲスト参加は1曲だけだが、その前に軽音楽同好会だけで1曲披露するので実際には2曲やる事になる。

 ただ、山口先生が

「準備作業に時間が掛からないので、全部で4曲くらいやっても余裕があるぞ」

とか言い出したから、田中先輩と中野さんが妙にやる気を出して高崎先生に迫った。高崎先生もその熱意に負けて2曲ボーカルを担当する事で同意した。

 最終的に全部で3曲演奏し、その1曲目を軽音楽同好会のリードギター兼ボーカルである3年C組平山唯先輩と高崎先生が、最後の3曲目を高崎先生がソロでボーカルをやる事になった。当初は昨日練習した中で一番気に入った曲だけを披露するはずだったが、どちらにするか迷った曲があるのでそれを1曲目にやる事にしたのだ。

 これで今日の打ち合わせは全て終わり、明日の放課後に講堂で会おうという話をした後、俺は約束通り藍と唯と一緒に生徒会室へ行ってトキコー祭の準備作業を手伝った。

 俺は前回同様、藍たちと一緒に校正作業や各種パンフレットの作成作業などを手伝った。もう助っ人作業にも慣れて来たけど、特に藤本先輩は俺を顎でこき使うから、最後はヘトヘトだった。宇津井先輩も本岡先輩もよくこれに耐えられるなあ。ひょっとして、あなた方はMですかあ!?

 それに引き替え、唯は今日も舞を連れて生徒会室を出て行った。今日の会議で問題になった事項を確認するため、二人で2年F組、G組、それと吹奏楽部や演劇部などの文化部、サッカー部や野球部などの運動部を回って問題解決のために奔走していた。ここでも舞は調整能力を発揮し、時には先輩相手に論争を挑み、理路整然と論破して先輩たちも唯も感心していたらしい。当然、相沢先輩も予想以上の成果だったといって手放しで喜んでいた。

 舞は執行部の頭脳・・・まさに7人目の執行部として重宝されているが・・・俺は執行部の便利屋というか雑用係・・・舞とは別の意味で執行部から重宝(?)され、8人目として存在感を増していると感じさせる・・・。

 ホントにこれでいいのかあ!!

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