第37話
「そう!もっと激しく!それでいて情熱的に!ああ、凄い……灼熱の炎が私を包んでるわ!」
サラマンダーの炎の息を大盾で防ぎながらスターディは、熱さのせいか単に気持ちいいのか分からないが息を荒くして頬を上気させている。
「ああ、んっ……そろそろ来ちゃう……」
「ア、アルバ!あれが発動しちゃいそうだよ!早く!」
「今丁度完了したところだ!離れて!」
俺は魔法発動の準備が終わると囮となっていた皆に声を掛ける。フラムやヤツフサ、アルディは俺の声に反応してその場から離れるがスターディは、その場から動こうとしない。
「ちょっとスターディさん!早くお逃げになってください!」
「ふん!私は誰の命令にも従わないわ!私が気持ちよくなるのを誰も防げはしないのよ!」
女王様系ドMというめんどくさいタイプのスターディは高圧的にMな発言をしフラムのセリフを一蹴する。
サラマンダーの炎の息にも耐えるスターディの防御力ならあるいはイケるかもしれないが、そんな博打を打つほど俺は馬鹿じゃない。
このままだと、スターディの
迷宮内限定ならアルディなら魔力無制限で、俺はアルディから魔力を貰うことが出来るので問題ないが他の3人はそうもいかない。
魔力ポーションも安くは無いのだからあまり無駄遣いは出来ない。
一応、ダメ元でフラムに話しかけてもらったが実はこれの対策は出来ており何度か実践している。
ただまあ、なんというか……出来ればあまりこの手法は使いたくない。
なら、フラムやヤツフサにそれを代わりにやってもらうというのもあるが、あれはあまり教育によろしくない為、子供にやらせるのはいただけない。
なので、俺はもはや慣れた口調でスターディに向かって叫ぶ。
「おら雌豚!さっさとそこをどきやがれ!」
「はいご主人様!」
俺の強い口調にスターディは顔を赤くしながら後退する。
まあ、勿体ぶって言った割にはなんて事は無い。ただ、乱暴な口調で命令すればいいだけである。
簡単じゃないかと思った諸君は考えて欲しい。
パーティの中では最年長とはいえスターディは13歳。日本で言えばまだ中1である。
そんな少女に乱暴な口調で命令しご主人様と呼ばせる。これほど通報レベルのまずい絵面があるだろうか。
かといって、ヤツフサやフラムにやらせるのもまずいので結局自分しかやる者が居ないのである。
実はこの対処法は、スターディ本人から聞いた方法で戦闘中の性格が変わっている間は普通の指示じゃいう事を聞かず強い口調で言われないとだめだと言われたのだ。
スターディ自身も自分が性格が変わっていると言う自覚はあるのだが、なんというか自分であって自分じゃないと言っていたので一種の二重人格みたいなものかもしれない。
まあ、そんな事よりも俺の命令によりスターディが引いた隙を逃さず俺は自分の周りで加速させていた弾丸を一気に放つ。
「喰らえ!
充分に速度が乗った弾丸は、轟音と共にサラマンダーへと発射されサラマンダーは為す術も無く消滅する。
「……ふう、何とか倒したみたいだな」
サラマンダーが完全に消滅したのを見届けると俺は地面に座り込む。
難度10では最奥ボスの他に所謂、中ボスというのが一定階層毎に存在しサラマンダーも中ボスの1体だった。
「今のが噂の
盾を背中に戻して性格が元に戻っているスターディが感心しながら近づいてくる。
「ああ、そういえば見るの初めてでしたっけ」
「もー、敬語使わないでくださいって言ったじゃないですかぁ」
スターディは、頬を膨らませながらプリプリと怒る。
「戦闘中は、仕方ないにしてもスターディさんは年上ですし……スターディさんも敬語使ってるじゃないですか」
「私のは癖ですもん。それに、年下の男の子に乱暴な口調で命令されるって素敵じゃありません?」
いや、顔を赤くして体をくねらせながらありません?って聞かれても反応に困るんだが……
戦闘中は女王様系ドMで通常時はただのMとか1粒で2度美味しいとかそういう次元じゃねーな。
「それに、ヤツフサさんもアルバさんより年上なのにタメ口じゃないですかぁ」
少し離れたところで回復薬を飲んでいたヤツフサが急に呼ばれてこちらを振り向いたので何でもないと手を振って誤魔化した。
「いや、ヤツフサは親友ですしフラムも幼馴染でアルディは、そもそも一心同体的な存在ですし」
「え?私は友達じゃないんですかぁ……?あ、でも体だけの関係ってのも良いですよねぇ……」
「顔を赤らめながら誤解を招く言い方はやめてくださいよ!友達です!友達ですから!」
体だけの関係って部分でフラムがめっちゃ睨んできて怖いから!
ドMってマジでメンタルつえーから無敵すぎる。ていうか、13歳でこれって業が深すぎんだろ。
「うふふ、良かったです。なら、私にもタメ口で話してくださいねぇ?」
「うーん……わかりまし……分かったよ」
下手に断って、要らんことを吹聴されても困るしな。
そんなこんなでスターディと会話しつつ休憩をはさみ俺達は、次の階層へと進むのだった。
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