第22話
「質問がいくつかあるんですがよろしいですか?」
「いいぞ」
スク水白衣合法ロリという属性過多な目の前の教師に俺が尋ねると、何でも聞けと言わんばかりに彼女は頷く。
「まず、なんで砂の中で寝てたんですか?」
それが一番の謎である。おかげでビビってしまったではないか。
「いやな。砂風呂は健康に良いって聞いてな。どうせ、私のところの授業は他の属性の授業と違って暇だから、ここの砂の中で試してたんだ。丁度日が当たる場所だから存外気持ち良くてつい寝てしまったんだよ」
……うん。色々ツッコミたいところはあるがまずは聞きたいことを全て聞こう。
「じゃあ、次にその格好はなんなんですか?」
「これか?昔、ある男が発明したらしくて特殊な素材を使っていて色んなバリエーションがあって、海水浴に行ったときとかに着る奴らしいぞ。私はシンプルなのが好きだから『旧スク』というタイプを愛用しているぞ」
水着を開発した男って絶対、地球の記憶保持者だろ。異世界でなんつー技術を伝えてんだ。まじグッジョブ。
「えーと、最後に本当に先生なんですか?その、見た目がとてもお若く見えるので」
見た目が子供みたいと言おうとしたが、なぜだか本能的にこういうタイプにそれを言ったらボディブローが飛んできそうだったので言葉を選んで尋ねる。
「ドワーフは知ってるか?男は見た目の成長が早く、女は見た目の成長が若いままで止まるんだ。そして小さい体躯が特徴だ。つまり、私は別に成長が遅いわけではない。むしろドワーフの中では発育が良い方だぞ」
そうやって、エストレア先生は無い胸を張って威張るが正直ただのロリっこにしか見えなかった。言わないがな。
「さて、もう質問はいいか?此処に居るって事はお前は授業を受けに来たんだろ?授業を始めるぞ……の前に自己紹介してもらおうか」
「あ、はい。僕の名前はアルバ・フォンテシウム・ランバートです。こっちは……」
「精霊のアルディだよ!アルバと契約してるんだ!」
「アルバ、アルバっと……ああ、これか。ふむ、確かに土属性の生徒のようだ。その年で精霊と契約してるとはな。土1本でやってくってことか?」
エストレア先生は名簿を確認し、俺の名前がある事を確かめるとアルディを見ながら尋ねてくる。
「そうですね。土ってだけで馬鹿にされているみたいなので僕がその地位を向上させようと思いまして」
「ふむふむ、若いのに立派な心がけだ。それにしても9歳の割に随分落ち着いているな?お前くらいの年だともっとこうはっちゃけてないか?」
まあ、それは中身が成人してるからなのだが言っても信じてもらえそうにないので適当にごまかしておく。
「案外、中身はおっさんだったりしてな」
「ははは、ご冗談を」
案外、鋭い人だ。
「さて、それじゃあボチボチやってくか。多少難しい言葉を使うかもしれないが分からなかったら聞けよ?教えてやるから」
エストレア先生は、そういうと椅子の上に立ち教壇に教科書を広げる。
ちなみに椅子の上に立ったのは単純に、教壇に届かなかったからだ。
「まず、土属性だが世間から不遇と言われているが私はそうは思わない。土属性は汎用性が高いと言うのもあるが炎や氷には無い利点がある。何か分かるか?」
俺は、質問されしばし考えてから自分の考えを答える。
「炎や氷と違って、そこかしこに土や砂、石があるって事ですか?」
「そうだ。もちろん、何かを燃やしたり湖などの水場に行けば条件は公平になるが、基本的には大地が占める割合が大きい。無から何かを生み出す際に詠唱が必要になるが、土の場合は詠唱無しで戦いやすい。これは大きなアドバンテージでもあるな」
確かに、土関連は外に出ればどこにでもあるし、魔力の操作が出来るのであればほとんど無詠唱で戦える。慣れていればの話だが。
「アルバは、どの程度操ることが出来る?」
「えーっと、事情があって最近は試してませんが、4年前はこれくらいの土人形を2,3歩歩かせるくらいは出来ました」
俺は、思い出しながら手で土人形の大きさを表現しながら説明する。
「4年前だったら、むしろ上出来だな。今、丁度ゴーレムの話題が出たからついでに教えるが、ゴーレムの種類は知っているか?」
「? 土だけじゃないんですか?」
「ああ、他にも炎で形成されたファイアゴーレム。氷で形成されたアイスゴーレムなんかも居るな。ただ、ゴーレムは国家兵器としてしか現在は運用されていない。理由は分かるか?」
エストレア先生の問いに俺は考えてみるが分からなかったので首を横に振る。
「単純に魔力の効率が悪いんだよ。ゴーレムの体が大きければ大きい程使用魔力は大きくなって動く度に魔力を体外に放出する。対応策として大勢の魔導士が集まって1体のゴーレムを操作するというのが現在の主流だ。まずこんなのは普通の奴らじゃ扱えないしな。魔力がゴーレム内で循環する技術でもあれば別だがな」
「魔石を埋め込むとかじゃダメなんですか?」
「それだって、元の魔力が必要だろ?」
ああ、確かにな。ふーむ、ゴーレムってのは意外と難しそうだな。
「あれ?でも、アルディの体も粘土で作られてて一応分類的にはゴーレムだと思うんですけどアルディは普通に動けてますよ?」
授業に飽きたのかゴロゴロしていたアルディは、俺に呼ばれトテトテと歩いてくる。
「それは、アルディという核が居るからだな。魔力を体外に放出せず循環させる働きを担っているのだろう。それでも動かすのに魔力を使うから動きすぎると疲労するはずだぞ」
そういえば、飛んだりすると疲れやすくなるって言ってたな。要は魔力の貯まった核さえあれば、動かせるって事だよな。ふむ……。
「まあ、ゴーレム云々は此処までにしておこう。まずはお前の実力が知りたいからな。ちょっとこっちへ来い」
エストレア先生に手招きされ隅にある砂場や土、小さな岩山がある場所へと近づく。
「まずは、比較的扱いやすい砂からだ。一応説明しておくと1粒1粒が小さい奴ほど操りやすい。この中で言えば砂が一番操りやすくて岩が操りにくい。もっとも、詠唱有ならば関係ないがな」
要は体積が小さい程、詠唱無しで操りやすいって事か。
「操る際は魔力を対象に流し込むイメージでもいいが直接触れた方が魔力を通しやすい。その点でも炎などに優っている点だな。流石に炎は触れないしな」
俺は、言われた通り砂に両手を付けて魔力を流し込むイメージをする。特にどういう風に動かせとは指示を受けていなかったので先程話題に出たゴーレムをイメージする。と言っても詳細な部分は特にイメージせず簡単な作りの俺より少し大きいかくらいの砂ゴーレムを作りだす。
やはり魔力が上がっていたのか、これくらいのゴーレムを作りだしてもまだ魔力が余っている感じがしたので、絶えず魔力を流し込みながらビシッとヒーローの様なポーズを取らせてみる。
魔石入りゴーレムを電池式とすれば、今俺がやっているのはアダプタに繋いだ電源式という所だろうか。常に魔力を流していれば思うように動かせるようだ。燃費は悪そうだが。
魔力が上がっているのもそうだが、心なしか砂にどういう風に魔力を流せばいいかが分かる気がする。なんだろう、上手く言えないが体が覚えてるって言った方が良いのだろうか。抵抗なく魔力を流せるのだ。
「ほう、中々じゃないか」
エストレア先生は、感心したように言う。
「魔力は高いと思ってたが何か特別なことでもしてたのか?」
「うーん、それが事情があってしばらく寝たきりだったんですよ。それで目が覚めたら髪がすごく伸びてて魔力が増えてたんです」
「ふむふむ。髪が伸びたのは現在の魔力容量以上の魔力が増えたからだろうな。原因は分からないがな」
エストレア先生は、顎に手を当てて考えるが、すぐに話題を変えて口を開く。
「さて、次は土だな。まだ魔力に余裕はあるか?」
「はい」
その後も土も似たような事をやり、岩を若干苦戦し操作して終了となった。
「やっぱり魔力の量がかなり多いな」
「そうなんですか?」
「ああ、少なくとも同年代ではダントツで魔力が高いかもな。さすがに大人と同程度……という程では無いがな」
そんなに高かったのか。そう考えればこの髪の長さも納得である。それにしても何でこんなに魔力が増えたんだろうか。謎である。
「よし、とりあえず時間まではさっきの繰り返しだな。魔力を鍛える一番の近道はひたすら消費する事だからな。詠唱有魔法は、とりあえず魔法具が来てからだな。授業が終わったら注文するからな」
「分かりました。注文したらどれくらいで来るんですか?」
「物にもよるが杖とかの一般的な魔法具なら明日の授業までには届くな。オーダーメイドだったら1週間っていったところか」
とりあえずは、普通の杖でやってみた方が良いかもな。ていうか、早く本格的な魔法使いたいし。そっから戦闘スタイルに合わせてオーダーメイドだな。ああ、でも金の問題もあるか。
両親がいくら俺に優しいとはいえ、俺の勝手な都合で金をそんなに使わせるわけにも行かないからな。
かといって、俺の小遣いで果たして買えるかどうかだな。まずオーダーメイド時の魔法具の相場を知らんし。
と、悩んでいると俺はハインさんの事を思い出す。そういえば、あの人は武器商人だったし、魔法具ももしかしたら格安で請け負ってくれるかもしれない。困ったときは頼れって言ってたしな。人の好意は素直に受け取る。これが俺の美点である。
とりあえず、杖を使ってみて合わなかったらフラムに取り次いでもらおう。
その後、エストレア先生の指示に従い、俺は授業が終わるまでひたすら土の操作を繰り返した。
授業後、魔法具の注文をした。既製品は数があるから大分安いらしくそんなに高くなかった。あえて、頼まないで学校の品をレンタルも出来るらしいが何かに使えるかもしれないので、俺はあえて注文することにした。幸い、俺の小遣いからでも払える額だったしな。
いよいよ、明日から本格的な魔法が使えると言う期待に胸を膨らませながら俺はその日を過ごしたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます