第2話
土属性を極めると決めた俺は、その意思を両親に伝えると微妙な表情をしつつも応援すると言ってくれた。
本当に良い両親である。
こういうファンタジーものでの貴族と言うのはメンツを第一に考えるので不遇な土属性ともなれば、嫌味の一つや二つ言われる覚悟をしていただけに拍子抜けである。
んで、両親に伝えた翌日に早速授業が始まった。
5歳の内から早くないかとも思ったが、魔法を使えるようになったなら取り返しがつかないことが起きる前に正しい情報は教えた方が良いので、まあこんなもんだろうとも思った。
それに他の国は分からないが日本でも保育園や幼稚園では簡単な勉強を教えるしそんな変なことでもないだろう。
そして両親が王都から呼んだという眼鏡を掛けた気難しそうな青年が本を広げながら話し始める。
「いいですか、アルバ様。魔法にはいくつかの属性があります」
本で読んでたので既に知っていたが、そんな事を喋って機嫌を悪くしてちゃんと教われなくなっても困るので俺は空気を読んで黙っている。
空気の読める男、人呼んでKY男。
あれ?なんかマイナスのイメージにしか見えない。
「属性は、炎 氷 風 土 闇 光 無の七属性があります」
その後の説明も特に本の内容とは変わらなかった。
やはり、ここは基礎の基礎らしい。
「この属性の中で最も派手で尚且つ火力が高いものは炎属性となり、先天属性が炎となった物の大半は一流の魔導士として王都で働いています」
やはり、そういう魔法の方が好まれて出世もしやすいのか。
「次に氷ですが……これはまあ、炎程ではありませんがこちらの属性も優遇されます。炎よりは威力はありませんが、水も操ることが出来、水の女神キャナル様の加護により回復魔法を扱うことが出来るので炎属性とはまた違った分野で活躍されています。貴方の母上は炎 父上は氷 どちらも攻撃、回復のトップクラスの実力で王都でも憧れの的でございます」
へえ、うちの両親ってそんな凄いのか。
そうそう、さっき話に出た水の女神キャナルっていうのは、この世界を司る四神の一柱だ。
この世界は4元素を司る四柱の女神に見守られていて、司る火の女神 アグニ 水の女神 キャナル 風の女神 ラファーガ 土の女神 ウィルダネス
が居るらしく、それぞれ先天属性が各女神の加護らしい。
闇と光、無はこのどれにも所属しておらず主神アキリの加護に入るらしい。
主神と言うのは先程の4女神を束ねるボスみたいなものである。
闇と光の属性は他の属性よりは多少珍しく1万人に1人の割合と言われていて我が国の王都にある魔術学園でも毎年1人入学するかしないかレベルらしい。
魔術学園というのは、この国に所属するものならば誰でも入学することが出来て、学費も一般家庭でも払えると言う中世的なこの世界では珍しい学校だ。
というのも、魔術学園の創始者が才能あるものならば生まれや育ちを問わず才能を伸ばすべきだという人物だったらしい。
そのために魔術学園の間口を広くしているのだと言う。
魔術学園は6歳から入学可能でそこから早ければ極端な話1年でも卒業でき基本15歳には卒業できる。
その後は、成績に応じて就職先が斡旋されるというわけだ。
「というわけで、アルバ様もあと1年もすれば王都の魔術学園に入学することになります。学園でも魔術について学ぶとは言え予習は必要です。1年間私が精一杯教えますのでよろしくお願いしますね」
そういって教師はペコリと頭を下げてくる。
大の大人が5歳児に敬語を使い頭を下げる。改めて貴族の権力の強さに戸惑ってしまう。
魔術についての軽い説明が終わった後、まずは魔力のコントロールの仕方について教わった。
魔法自体は、また後日ということだ。まずは魔力のコントロールの仕方を覚えて魔法が暴発しないようにする必要があるらしい。
「まずは、自身の魔力の流れを感じ取ってください。目を閉じてじっとするのです」
俺は、言われた通り目を閉じてじっとする。
「魔力は、常に体中を巡っており意識を集中しなければ日常で気づくことはありません。血液が常に体を巡っていても気づかないのと一緒です」
聞いてて分からない言葉はありますか?と尋ねられたが中身は20過ぎの大人なので言葉は理解できている為、大丈夫だと答える。
「やはり、あのお二人の子供だけあって、聡明でいらっしゃいますね。目を閉じましたら1回息を吐いて2回息を吸う。これをゆっくり繰り返してください」
俺は言われた通りの呼吸をし、何回かそれを行うと体中に血液とは別の何かが巡っていることに気づく。
しかし、それに嫌悪感は抱かずむしろ母親に抱かれているような安心感に包まれる。
「なんだか、抱きしめられているようなあったかい気持ちになる」
「それが魔力です。そのような気持ちになるのは実証はありませんが、通説では加護の女神様のぬくもりだと言われています。アルバ様は土属性なのでウィルダネス様に抱きしめられているというわけです」
土の女神ウィルダネス……教師は通説と言っていたが、もしかしたらその通りなのかもしれないと根拠はないが何故か確信めいたものを感じる。
「では、その感覚を忘れず右手に魔力が集まるように意識してください。ちなみに右手はこちらですよ」
教師は、俺の右手を包み込むように触る。
俺は言われた通りに魔力を右手に集中させようとするが上手く行かない。
その様子を見た教師は、何度も優しくアドバイスしてくれて試行錯誤の末、体感時間で1時間ほど経った頃、右手に魔力を集中させることが出来た。
「おお!ついに出来ましたね!アルバ様には魔法の才能がお有りのようだ」
貴族の息子だから褒めて伸ばしているのかもしれないが、それでも褒められると言うのはやはりうれしいものがある。
それに、この教師は見た目こそ気難しそうだが、懇切丁寧に教えてくれたりと見かけによらず世話好きな人なのかもしれない。
「お疲れかもしれませんが、今日中に魔力のコントロールの基本は抑えてもらいます。疲れたら休憩しますので頑張っていきましょう」
そう言う教師に俺は目を合わせ頷いた。
その日は、そのまま魔力のコントロールの授業を受けるのだった。
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