学校もチョコまみれ!?

 学校に着いたぞ!

 馴染とはここでお別れ。だってクラスどころか学校が違うもんね! 隣町だもの! 学区外だよ!


 ……さて、学校に着いたということは、ひとつ関門があるぞ。

 それは『下駄箱』! 恥ずかしくてチョコを渡せない女の子が、朝早くに思い人の下駄箱にチョコを入れておく……なんて甘いシチュエーション!


 去年まではマンガの中だけの話だったけど、今年からは俺にもそのチャンスがあるんだ! いざ、開け俺の下駄箱!


「おはよう! チョコ男」

「おはよう、頭子とうこ


 下駄箱を開けた瞬間に、前から声をかけられた。より正確に言えば下駄箱の中。

 俺の下駄箱の中にニッコリ笑う生首が入ってる!


 もちろんこれは殺人事件だとかそういうわけじゃないよ!

 少しボーイッシュな短髪が似合うこの子は頭子! 俺のハーレムの一員で、首から下がないだけの普通の女の子だ!

 名簿では男として登録されてるけど、本人が女の子って言ってるから女の子だよね! 首から下がなくて真相はわからないけど!


「あのさ! オレ……私、チョコを作ったから食べてほしいなって!」


 さっき下駄箱に入れるのは恥ずかしがりやさんだなんて言ってごめんね! こんなにも積極的な子もいるんだね!


「ほら」

「開けてもいいかな?」

「……いいよ。わ、笑うんじゃねーぞ?」


 ピンクの箱に赤いリボンのラッピング! うん! 金属じゃない!

 いや、他の子たちのも特徴的でかわいいよね! なんだか今生霊と怨念を感じちゃった!


「ええと……」


 中身は……頭子のミニチュアチョコ模型だ! すっごい精工。器用だね!


「その、材質にはこだわっててさ。ちゃんと頭を食べた食感になってるはずだから!」

「それはすごいね。俺は頭を食べたことないけど」


 ほんとだ! やわらかほっぺ♪

 頭子はこだわりの芸術家肌だなあ。溶けたら見た目的にエグそうだし、持って帰ったら一番に食べようね!


「中も鉄分を注入した赤いジャムだから」

「本格派だね」



 頭子をクラスに届けてから自分のクラスにやって来たぞ!


「おはようにゃあ」


 元気に挨拶してくれた彼女はタマちゃん。

 もれなくハーレムの一員で、みんなが大好き猫っ子だ!


 頭には猫耳が付いてる。っていうか顔が全部リアル猫。

 もはや体も猫。つーか猫。


 でも俺が好きだし問題ないね! なめ猫みたいで可愛いと思うよ! ちょっと古いね! わかんなかったらお父さんお母さんに聞いてね!

 タマちゃんを受け入れられる懐の広い学校に入れて幸せ!


「タマね、チョコ男にバレンタインを用意したんだにゃ」

「本当かい? 嬉しいな」

「他のみんなにはチ○ルチョコだけど、チョコ男だけは特別にゃ」


 語尾に『にゃ』がついてて愛らしいね! やっぱり猫っ子は萌えの王道だよ!

 あっ、話は少し変わるけど、チョコレートは猫にとって有害だから食べさせちゃだめだよ! 欲しがられても猫のためだからね! 我慢しよう!


 さあタマちゃんのチョコはどんなかな?


 ビチビチビチビチ……


 おう! 生のカツオだ! 新鮮だね!

 教室の床で跳ね回るもんだから、ホコリまみれで血まみれだよ! 魚からすればスプラッター映画だ!

 他のやつらはチロルチョコだなんて可哀想だなあ。今夜タタキにでもするよ!


 食べられるだけでちょっとまともに見えるから怖いね!

 でもカバンから生臭い臭いがするせいで、隣の席の奴がめっちゃイラだってる!

 正直ゴメンね!



 さあカツオを袋で二重に梱包して密封したぞ。そろそろホームルームだ。


 ガラガラガラ――


 教室のドアが開いて入ってきたのは、全身をチョコでコーティングした女性だね。

 彼女こそ我らが担任にしてハーレム一のお姉さん(霊は年齢不詳)、屑子くずこ先生だ! ハーレムに誘ってないんだけどね! 自称だよ!


 独身をこじらせてる可愛い三十路みそじさんで、婚活に失敗すると勝手にテストの点を下げるお茶目な先生だよ!

 一応体にリボンを巻いてて大事なところは隠れてるけど、もはや公然わいせつだね! 溶けたチョコで床がベッドベドだよ!


 あっ、事務員さんたちが入ってきたね。

 さすまたで挟まれて……先生がいなくなったし今日は自習かな! やったあ!


 うわあ、抵抗してるのか窓ガラスに茶色い手形が付いていくね。

 廊下側の生徒が軽く悲鳴を上げてるよ。


 本人のためを思って言うけど、そんなんだから結婚できないんだろうね!

 教員試験は、もう少し精神鑑定とかしっかりやった方が良いと思うよ!



 時間は過ぎて昼休み。

 屑子先生は泣きながら普通の服装になって帰って来たよ! たぶん今度のテストは平均点最悪だね!


 ちなみに俺は他のクラスの奴に呼び出されて、校舎裏で一人待機中だよ!

 これも一度は経験してみたいシチュエーションのひとつだね!


「チョコ男サマ」


 来た! 彼女は女子高生型ヒューマノイド、『JK7』だよ。みんなからは機体名をもじって、ななちゃんって呼ばれてるね!

 見た目は本当に人間みたいだよ! 一部の男子の間では『オリ○ント工業』って呼ばれてるぐらいだ!


「チョコ男サマ」

「うん、なんだい?」


 そして俺はななちゃんに人間の心を教えるための実験ってことで、ハーレムに迎え入れたんだ。

 ロボ子は球体関節以外認めねえって思ってたけど、結局可愛いは正義だね!


「今日ハ、バレンタインデス。コレヲドウゾ」


 ななちゃんの胸部が開いて、中からチョコが出てきた! ロボ子ならではの芸術点と、今のところ異常性が見られないのが高評価だね!


「博士ニ好キナモノヲ入レロト言ワレマシテ、重油ヲ混ゼ込ミマシタ」


 う~ん、前言撤回! 俺の部屋の棚が観賞用チョコで埋まっちゃうよ!

 純粋に俺のためを思ってやってくれているあたりが、めちゃくちゃ申し訳ないね!


「クランチ代ワリニ、ナットモ入レマシタ」


 博士とやらも止めようよ! もう少しでハッピーエンドだったよ?

 クランチどころか食感としてはク”ラ”ン”チ”って感じだね!


「ありがとう、嬉しいよ」

「オ役ニ立テテ、光栄デス」


 褒めて伸ばすスタイルです! ななちゃんは悪くないしね!

 今回の報告書は分厚くなりそうだ!

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