捌滴:殺意 - Intentio Occidere -
※ ※ ※ ※ ※
「
本日の『サムライ
虎徹さん、本日も宜しくお願いします!」
「あい、よろしゅ~」
「いやぁ~、劇場、あったまって來ましたね~!」
「そうだね~、あっついねぇ~。今、劇場内の室温、ドレくらい?」
「25度、体感では30度、
「35度!?そりゃ凄いなっ!今の時期でこんなに暑いんじゃ、年末には80度越えちゃうだろ!ガハハ」
「…
どうですか、虎徹さん!」
「うん!いいよね、凄いよねぇ~」
「虎徹さんの目から見ても、
「そりゃあ、あんな小さい少女がさぁ~、七番勝負に挑むんだ、凄くない訳ないだろ~?
「…
―――――
より上位のクラスへの昇級には、
C級2組からC級1組への昇級、
帝國
クローディアが現在挑戰中の“
半年以内に上位クラスに在る殺戮士達と
クローディアは
クローディアの
特に
驚く
丁・如意蘇我に
若松劇場では
彼女がどれに
――LIVE中継
「さあ、
本日もメロディアスでハード、ドラスティックな入場テーマソングに乗せて
いや~、
「
「えぇっ!?虎徹さん、クローディア
「いいえ、全然知りませんよ」
「えっ?」
「ほら、彼女の名前。
「…おーっと、テーマソングが和ロックに変わりました!
B級2組からの
本日もド派手な
虎徹さん、どうでしょう、蕭の調子は?」
「良く見えるね!彼、今日
「ほ~、そんなに調子良く見えますか?」
「うん、いいね。こりゃ~
「ほほぅ、
「ほら、彼の
「…それでは
――
舞台上、二人の
今回の
セコンドによるタオル投入は
TKOが存在しない為、もし、一方が反則となる銃器を隠し持ち、
クローディアは渋々、蕭と握手を交わす。
恐らく、舞台袖に
程なくして死合開始の
開始線から半歩分足を引き、半身の体勢の
左手を軽く開き前方にくの字に腕を緩やかに突き出し、右手は何かを掴む
――
馬歩、弓歩、
少なくとも、
クローディアは不用心丸出しの儘、カクンカクンと
彼女に武術や
其の“生來”の
以前、1度だけ龍也はクローディアに尋ねた事がある。
何故、白兵戰や戰鬭法に就いて調べず、自分に聞かないのか。
恐らく、龍也が自分の中で最も自信のある
知らず知らず
にも関わらず、彼女は一切尋ね聞いて來ない。
其の理由に彼女はこう答えた。
――人間の戰い方を学び、知ってしまうと、その知識や情報による先入観に惑わされ、遅れをとって
――、と。
龍也は
そう、記憶している。
彼女は、人が、人間が縛れる
触れてはいけない存在、
其れが神々しいものなのか、禍々しいものなのか、そんな事はどうでもいい。
只、想うのは、
――無事に勝って欲しい。
其れだけ。
そんな龍也の期待とは裏腹に、クローディアの体は自由を奪われ、急に浮き上がり、両手を拡げられ、
舞台床から2mくらいの高さ、何も無い中空に、どう云う原理なのか、釘付けとなり、制されている。
「ウ・カ・ツ!
――はっ!?
舞台照明に照らされ、
観客席からでは視認不可能なのではなかろうか、と云う程に細い糸の存在。
ピアノ線ではない。
恐らくは、釣り糸の
其の糸が、クローディアの両手首に巻き付けられ、舞台の
あっ――
死合前の握手。
クロの僅かばかりの怪訝な表情の正体は“これ”に気付いての事だったのか。
クタンと首を斜めに倒し、無表情に
「…ナに、コレ?」
「その
仮に人工筋肉を埋め込んでいたとしても、其の絲を
「ヘー…
「ふふふっ、是を見よ!」
蕭は右手でピースサインを裏向きに出し、甲をクローディアに向ける。
其のボールを器用に指の間を転がし、行ったり來たりを繰り返し移動させると、
「
強い彈性に加え、予測不能な彈道を描く上、衝撃際には内容物たる水銀の慣性に
首を
「ふーン…
「堪えられるか此の技をッ!
蕭はクローディア目掛け、勢い良くボールを放つ。
宙吊りにされ身動きの取れないクローディアの体にボールが打ち込まれ、跳ね返っては舞台の壁や床で跳弾を繰り返し、再び彼女の体を打つ。
出鱈目な軌道を取りながらも跳弾は的確にクローディアを襲い、ゴスロリ衣装の一部は裂け、レースや飾りは破れ、露出した肌に痣を作る。
唇を切ったのか、
「さあ、お孃さん。早く
唇からの鮮血を其の小さな舌でぺろりと
「死合ヲ投げル程のダめージは負ッてナイよ?」
「――仕方あるまい…」
蕭はニンジャ裝束の
続いて、腰から下げた合成樹脂で作られた竹筒風の容器を
「小娘相手に出す
竹筒の飲み口から黒っぽい
狙い
「
其れ程激しくはない火力故、身を焦がす程、火焔は大きくはない。
併し、其れでも衣装を焦がし、肌に軽度の熱傷を与える程度には熱い。
焼け焦げ落ちる服の装飾を見て、微かに表情を曇らせるも、クローディアは落ち着いた様子で語る。
「オジSAN、殺意ヲ
「…私は
「ソっか――
「ん?なに??」
クローディアの指先の爪がみるみると伸びる。
鋭い
伸ばした爪を再び短く収納し、手首を握り、その感触を確かめ
「なんだとッ!?伸縮性の
蕭は両手共、
左足を引き、膝を曲げ、右足を伸ばして重心を落とし、近付くクローディアに身構え、シーッ、と息を吐き出す。
そんな蕭の構え
互いの距離が
クローディアはスローモーに両腕を上げ、蕭の鷹爪を防ごうと動く。
其の彼女の動きに合わせるかの
「かかったな!奥義“
蕭は床すれすれに迄頭を下げ
驚く程の柔軟性に意外な攻撃手段、死角からの打撃の巧妙さに舞台袖で見守る龍也は目を見張り、慌てる。
クローディアは蕭の前転やバレエの動きにも似た縦回転の後ろ蹴りからの踵落としを
続け
クローディアは投げ捨てられた
舞台袖から龍也は声を張る。
「クロっ!大丈夫かい?
タオルをぎゅっと握り締める。
クローディアはふらふらと立ち上がり、舞台袖を振り返り、無表情の儘
「ダイじょーぶ、問題なイ。
「気丈な小娘だ。良かろう、投了せぬというのであれば、意識を断つ迄。
確実に、
龍也は先程の蕭の動きから、
クロは恐らく気付いていない。
蕭は
であればこそ――
龍也は、蕭の一足一刀の閒合いに入る一歩手前の
蕭は
クロもチラリとこちらに視線を向けた、ような。
蕭が目を
ピンポイントで顎先を打ち抜かれた蕭の脳は首を支点に激しく揺すぶられ、間もなく白目をぐるんと剥いて垂直に腰を落とし、膝を床に付け、其の儘
慌てた素振りで
――舞台裏楽屋
通常であればB級2組の殺戮士は大部屋となるが、所屬
「
不機嫌そうにクロは語る。
あンな、と云うのは俺がタオルを投げ入れ
クロの勝利を信じていなかった訳ではないが、酷い目に遭う
敢えて、気付かない振りをする。
「何の事だい、クロ?」
「
タオルの話ではなく、
「――当然だよ。クロを苦しめる相手に、敵意を向けるのは
「違ウ。アれハ故意に仕向ケた殺意。其レに気付イたオジSANハ氣が
其れが生存本能から齎されるものなのか、防衛本能からなのか迄は分からないものの、武人や兵士の危機意識にも似た感覚を、ナチュラルに身に着けている。
「…うん、ごめん。彼程
あれ以上、クロが痛い目に合う姿を見たくなかったから…」
クロは少し
「――…謝っタかラ
其レにボクも
気の
いつも無表情な彼女が、僅かに微笑む、そんな気がした。
良かった。
機嫌を直してくれて。
俺の近くに居る者が苦しむ姿を、もう是以上見たくない。
妹も、勿論、クロも。
「…でモね、
「!?えっ、なに?」
「コれだケは
ボクに危険ガ迫っテも、
「
「
「…分かったよ。でも、俺も何かクロの為に出来れば、と……」
「
「それは?」
「――“血”ノ一滴」
そうだった――
彼女は、主人。
俺は、
忠誠を誓う
――
俺は
妄想帝國断罪乙女 - Sadistic Gothic Lolita's Virgin of the Vendetta - 武論斗 @marianoel
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