妄想帝國断罪乙女 - Sadistic Gothic Lolita's Virgin of the Vendetta -
貳滴:ワルツ第零番ト短調”犬死のワルツ” - Death Metal Waltz -
貳滴:ワルツ第零番ト短調”犬死のワルツ” - Death Metal Waltz -
※ ※ ※ ※ ※
――
創立100年以上の老舗
ドールハウスとは言ったものの、
客席数100席の小劇場だが
狭い会場は空気が薄くなり息苦しく、空調の悪さの
若松劇場の人気は、何と言ってもストリップ小屋らしい心謎解色絲鬭のカードが組まれる事。
この舞台に上がれる殺戮士は性転換を伴わない生来の女性に限られ、
奴婢訓――
女殺戮士達による心謎解色絲鬭により敗北した女性は、その生死に関わらず、生板ショーの対象、即ち、観客との性交が行われる。
特に敗死した殺戮士の体の解体ショーとバラバラにされた部位を客席に投げ、記念品がてらに持ち帰らせるサービス“
この奴婢訓が実施されているドールハウスは、帝都外に多く見られ、主にストリップ小屋で開催されている。
東京5区では条例で禁止されている。
風紀
それくらい、世の中は腐りきっている。
C
此処から色々引かれ、実際に殺戮士が手にする事の出来る額は4万圓天ちょっと。
これでも並の風俗嬢が稼ぐ額より多い。
ここに指名チケットの販売ノルマを越えた分、僅かにボーナスが入る。
残念ながらC級殺戮士には、客の賭け金は分配されない。
但し、奴婢訓の場合、別途客引きが出来る。
客引きを行い、特殊サービスを実施すれば、その売上の半金が手元に入る。
そういった状況から、女殺戮士達は奴婢訓有りの心謎解色絲鬭に出場する。
これが殺戮士の出演が後を絶たない理由である。
本日も
その中に、
――若松劇場の舞台上
今宵の大トリ、
花魁とギャルファッションに格闘ゲームの女性キャラクター宛らのコスプレ的な要素を掛け合わせたかの様な衣装。首には緩めに着けられた
踊り子としても舞台に上がる彼女は
明らかに、他の殺戮士達とは雰囲気が違う。
踊り子を兼ねる殺戮士は、心謎解色絲鬭で命の遣り取りをしない、と相場が決まっている。
従って、幾つものルールが事前に取り決めされており、
演者、と呼ばれる殺戮士で、E級、と揶揄される。
殺戮士はC級迄しか存在しない為、本来はC級殺戮士なのだが殺し合いをしないので、演技の頭文字からE級と呼ばれる。
ちなみに、殺戮士として心謎解色絲鬭の舞台に上がらず、ストリートファイトを行う者達をD級と呼ぶ事がある。
殺戮士ライセンスは
評議會への会費も馬鹿にならない為、多くのC級殺戮士は評議會ではなく、各劇場に所属するのが通例となっている。
今、この舞台に上がっている彼女は、
B級2組に属する彼女は本物の殺戮士。
生死の狭間を生き抜いてきた彼女の舞踏は、ストリップでありながら芸術の域。
若松劇場の花形の一人。
赫映は命の遣り取りから台本迄
勿論、本気の勝負で負けた事は一度も無い。
その彼女が、今日の大トリでは生死を賭けた勝負をしない、というセーフティールールを提案した。
その理由は、対戦相手が心謎解色絲鬭初デビュー戦、且つ、幼い少女だから。
少女の
不健康そうな
安直だが的確、在りがちだが適切、当たり前だが適当。
初めての舞台でのギミックとしては、是で十分。
無論、本物の吸血鬼であったとしたら間違いなくA級以上の殺戮士だが、そんな稀少種はほんの一握りに過ぎないし、この劇場では荷が重い。
本物等、誰も求めていない。
そう云う時代、そう云う世、そう云う世界、
幼い少女がストリップ劇場で開催される心謎解色絲鬭に出場する事自体が
この非常に珍しいケースであれば大トリに
奴婢訓や破狡褸は、一部の勘違いした強いと思い込んでいる女殺戮士達だけでいい。
この少女には、今後も劇場を盛り上げて貰う為にも、E級で活躍して貰わねば。
ゴシック&ロリータと呼ばれる衣装を身に
彼女の其れは、正統なゴスロリ・ファッションとは違うらしい。
らしいと言うのも、其れを詳しく知る者がいないから。
そんな事より、驚くべきは彼女の演技力、表現力、演出力。
子役も真っ青な程、
現代の
舞台
セーフティールールを採用したとは言え、台本は無い。
そもそも、心謎解色絲鬭初出場の少女に台本を覚えさせるのは困難。
素手での戰いに限定し、兇器の使用を認めない。
どうやって
あたしの見せ場も作りつつ、少女の
身長差があるので上段攻撃は本来無意味だが、
少女の頭上ギリギリを
そんな
対峙して多少の
緊迫感も演出の一つ。
焦りは
舞台の上も
視線から感じる
見逃さない、
――シッ!
赫映は、息を素早く吹きつつ、
其れだけで本物と分かる。
少女の頭上に鋭い蹴りが繰り出され、其の風圧で
髪飾りだけ蹴り飛ばそうと振り抜いた
試合の組み立てに気を取られ、精度が落ちている。
こんなんじゃ、少女に怪我を負わせ兼ねない。
「…オバ
「えっ!?お、おば……喋れるのかい、アンタ」
戦いの場には相応しくない程、
「オバ
「――ふ~ん…で、あたしにその気がなかったんなら、アンタはどうすんだい?」
「カンケーシ」
「ん?…どういう意味?」
「オバSANニ
「フフッ、それじゃあ、どうするんだい」
床板に
「えっ!?」
赫映は倒れそうになった少女を押さえようと手を伸ばす。
其の小さな体躯を抱えた赫映は、カラコン
「――コウ
――ザンッ!
赫映の顔が血に染まり、左腕が重力を失ったかの様に宙を舞う。
張り出し舞台から吹き飛ばされた片腕は
観客達は
――ギャアアアァァァーーーッ!
肩口近くの上腕から
赫映は右手で傷口を押さえ、舞台上を転げ回る。
暴れれば暴れる程、その前衛的な朱の
ジタバタと暴れる赫映の横顔を厚底の
少女は
「命迄ハ奪ワナイデ上ゲルヨ、オバSAN。
既に赫映は気絶している。
赫映は此の劇場の花形、自ずと
本来であれば大トリの後にストリップショーで締める筈の舞台は、不慮の事故の影響で中止となり、若松劇場は火を落とす。
観客達からの
関係者がバタバタしている最中、
張り出し舞台迄は距離がある上、
こんな怖ろしい心謎解色絲鬭の舞台で、
其れしか少年には出来ないのだから。
ほっと胸を撫で下ろし、クローディアを待つ。
少女は何食わぬ顔、と云うより、
「オ
と、ぼそりと
其の一言で察する事が出来る様になる迄、もう少しだけ時間が必要だった。
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