第4話 幽霊風鈴
健が僕の家のチャイムをならしたのは、日曜の夕方であった。
僕、(鈴川 岳)が、(前乃宮 健)と知り合ったのは、蛙になった少女の事件からなのだが、何かと不思議なことが起こると、僕に相談してくる。
決して、彼と仲がいい友達とか僕に何かしら霊を祓うことが出来る力があるとかではない、
ただ、霊が見える変り者の僕にしか話す相手がいないだけなのだ。
そんな中で、今日持ってきた内容はお化け風鈴と言う、この町の都市伝説のような物であった。
子供が夕方の鐘が鳴りやまない時に、何処からか風鈴音色が聞こえてくる、オジさんが歩きながら風鈴を売っているのである。
子供達は、後をついて行くと無性に風鈴が欲しくなってきて、百円と安い値段で一つ買うことにする。
すると、それまで奏でられていた硝子と鉄の涼しげな音が聴こえなくなり、風鈴を見ると、二つの穴からゆらゆらと炎の光が漏れて、形は髑髏であった。
それを持ったままボーとしていると、見たことのない不気味な世界に迷いこんで、その子供は二度と戻れないという話であった。
どこにでもある都市伝説である。
その子供が不気味な世界から出られないことをどうやって知ったのか、作られた話であるとすぐにわかるのであった。
「単なる都市伝説だろうが、」
「それが、単なる都市伝説と違うみたいで、近所の低学年が見たんだってさ、風鈴屋を」
「そんな馬鹿な」
興味はそそられたが 信じる訳にはいけなかった。彼の手伝いをしなくてはいけなくなるからだ。
「いやいや、その低学年と一緒に遊んでた友達が、風鈴の音色聴きながらついて行ったら、その友達、帰って来ないまま三日が過ぎてるって言うんだ。」
「それで、何故に見ず知らずの低学年の依頼を僕が受けなきゃいけないのかな」
「それは、友達だから」
「いや、違うから、誰がいつ君と友達になったかな?」
冷たいかもしれないが、僕は平凡に生きたいのだ。
「酷いな、お前そんな奴とは思わなかったよ」
「思わなくて結構、それにやたら家の塀の向こうから顔を覗かせる女の子が気になるのだが、」
「その低学年の彼女なんだよね」
溜息をつきながら、僕は二人を家にあげた。二人を僕の部屋に通すと、二人は動きを止めた。
「どうしたの?入れば」
二人は部屋に入ろうとせずに、佇んでいる。
「なっなんだ、この部屋のビデオとポスターは?」
二人は、僕の趣味である外国のグロ映画のビデオと壁に貼られたポスターに恐怖していたのだ。
「なんだい入らないのかい?」
彼らは、少しオドオドした顔で部屋の中に入ると、体を二人ともくっつきながら小さなちゃぶ台に座る。
「で、彼女の行方が分からないからって何故僕が探偵の真似事をしないといけないんだい?」
彼らは、警察に風鈴屋の幽霊に連れて行かれたことを話したが、案の定信用されず、それで、僕の所に来たとのことだが、迷惑だ。
だが、話を聞いていなくても、本当の所興味はあったので、それから夕方になると公園の草むらで隠れることにした。
二週間が過ぎたときであった。鐘ね音がやまないうちに風鈴の音色が聞こえ始めた。
その音に引かれるように、子供達がついて行く、僕はその後を尾行して、風鈴屋のアジトに着いた。
古ぼけた境内の中に入って行くと、風鈴屋のオヤジのあとに続き、子供達は奥の部屋に吸い込まれていった。
遠くから部屋の中を見ると、狐の親子が八匹ほど親の周りを囲んで寝ているのである。
それからは、狐は小狐を寝かせたあと、また、奥の部屋に入っていった。
その時、先程まで風鈴を追いかけて、ついてきたはずの子供達が縄で縛られ、静かに奥の部屋から出てきて、黙って外に出された。
すると、何かに操られるかのように、境内から外に出て行ってしまった。
彼らを公園まで尾行したところ、全員正気戻り「さようなら」と口にして帰った。
だが、その中に女の子の友達の姿はなかった。
一ヶ月が過ぎた頃に、とあるアパートの一室でレイプされて、変わり果てた姿で彼女は見つかった。
健が僕の前に現れたのは、その女の子の友達の葬儀が終わった時であった。
「あの、風鈴屋のお化けはなんだったんだい?」
「ハッキリはわからないけど、あの風鈴屋は狐が化けていたもので、子供達も小狐だったんだよ。そして、あの風鈴は、僕らの夕方の時の寺の鐘と同じで、帰る時間を知らせるために鳴らしてたんだよ、」
「なら、髑髏は?」
「あれは、脚色されているだけ」
それから、住みかに帰って、狐の幻術により、静かに拘束されている子供達を自由にしてやり、操られながら公園へ帰えって行った。
彼女の友達の事件とは全く関係なく、狐は子供を拉致させて、自分の子供を人間世界に溶け込ませようとしていたのじゃないかと、推測を話した。
完
僕らの世界 西田 正歩 @hotarunohaka
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