番外編 猫の夢
小学校から家に戻ると、冷たい麦茶とスイカが冷蔵庫の中に用意されてた。
私、(西村 麻衣)ムシムシとした夏の暑い日に、この二つはご褒美に近いものであった。
それは突然来た。昔から(山の悪戯)と村の風物詩のようなもので、、山がざわめきだしたかと思うと、強い風が吹き出すのだ。その風が私の髪をなびかせ、小さかった私はその強風に、体ごと吹き飛ばされてしまった。
この現象がおこるのは、夏のはじめ七月の中間辺りからであった。しかし、毎日でないのも、私たち子供には厄介なのだ。
ドンッ
頭をぶつけてしまったことで、気を失ってしまい眠ってしまった。
気がついたのは、夕方のことであった。モフモフとした毛布に包まれながら、私の頭上に赤く染まった夕陽が見えていた。
だが、四方を壁に囲まれてるのに気づいたとき、不意に奇妙な感覚におちいった。体の感覚に違和感をおぼえた。
自分の体なのに、起き上がれることが出来ない。四足の足でやっと体を支えることが出来たが、ぎこちなくなる。
いったい私に何が起きたのか、誰か助けてと叫んでいるのに、誰も振り向いてはくれない。
その時だ、子供の声が聞こえてきた。私と同じぐらいの子供が、学校終わり帰っていた。私は大声で叫んでみせた、彼らに聞こえるように、壁にへばり着き泣き叫んだ。
「・・・け、待てよ」
何か聞こえた、気づいたようだ。彼らは私の目の前に現れたとき、また、驚き気が遠のいてしまいそうになった。
彼らのその大きな巨体に、何ともいえない不安が込み上げてきた。
私は巨人の世界にでも来てしまったのではないか?私はこの年が同じ子供らに殺されるのではないかと、不安になってしまった。
しかし、私の異変の正体に気づいたのは、彼らが、私の体を軽々と持ち上げた時であった。向かえにある店の硝子戸に映る自分の姿は、確かに風に吹き飛ばされて頭を打ったときの私ではなく、可哀相に段ボールの箱に捨てられている一匹の私になっていたのだ。
それで始めて、声の届かない理由が判明したのだ。猫の鳴いた声なんかに耳を傾ける人間はいなかった。
本当に子供に出会えたのは、奇跡であった。
だが、それも永くは続かず、気がつくと夜をむかえていた。誰もいない寂しい世界、小さな箱が私の世界なのである。
一人の物静かな男性が私に餌をくれた。煮干だったがその味をしゃぶると、やっと安心してしまったのか、寝てしまった。
また、気がつくと家の中にいた。布団の上に寝かされていた。
「気づいたみたいだな」
その冷静な姿に、少し照れてしまった。
それからは、私は彼の家で暮らすことになった。
それからは、のんびりした一日を過ごせていた。
しかし月末の夜の、家に帰ってきた彼の不気味な笑だけは恐怖していた。
小型のトランクをトントン叩きながら、奥の部屋に入っていった。
その次の日のご飯は豪華であった。私も牛や豚など食べてきたが、不思議な肉の感触に病み付きになりながら、私は肉を完食した。
もっと欲しいとねだるが、彼はこれ以上肉をやることはなかった。
しかし、彼が私に肉をあげなかったことが、御主人様がとんでもない犯罪に手を染めていることに気づくことすらなかった。
私は、彼の隙をみて、扉の向こうに進入することができた。
大きな冷蔵庫があり、テーブルの上には出刃包丁が置かれ、なぜかそれと一緒にノコギリなども置かれてあった。
壁には不思議な紋様が貼られており、真ん中には少女の写真が貼られ住所なとがかかれちょっと不気味であった。
あれから、三時間がたとうとしていた。彼が扉を開ける音がしたので隠れた。
いつものように、トランクを持つときの御主人様の顔は不気味なほどの笑顔であった。
じっと物陰から仲を見ていると、トランクが開けられた。
中に入っていたのは、あの写真の少女であった。両手両足をロープ縛られながら、ガムテープで口をふさがれ、身動きがとれない私と同じ小学生である。
御主人は、ガムテープを外すと、わめき声をあげる少女に対して、「防音設備だから、外には漏れないよ」と言いながら、片手にもったナイフで服を切り裂き、次は手足を交互に刺していき、裸でわめく少女を見つめて、「もっと」とイカれた顔で刺し続けて、ラストには、まだ息のある少女の舌をナイフで切り取り、自分の口の中に「あーぁ、美味しかった」と笑いながら、少女の体を解体し始めた。首のみは、冷蔵庫の中に保管されていた。見えただけで六体の首が置かれてあった
私は、恐怖した、それは彼にもだが自分にもだ、知らないとは言え、自分は同じ年頃の少女の肉を味わいながら食べてしまったのだ。私はゲロしてしまった。その音に御主人様が気づき、私は捕まった。
それからは、その場所はオープンになった。その後も出された肉は食べた。美味しいからではない、恐ろしいからだ。
あるときからその写真の住所に行き、警告をするようになったが、それでも阻止できず、何人もの少女が彼と私のお腹の中に入っていった 。
ある日、私の捨てられた場所辺りの学校で、少女に警告をしようと待っていた。
すると、少女のクラスに、あの日捨てられた時に世話になった少年がいた。
少年達は、武器を持ちながら、私の後を着いてきた。
このまま、御主人様の帰らないうちに、少年達に、発見させて警察を呼んでもらおうとしたのだが、
奴は部屋の中におり、テーブルで少女の肉を食べていた。
それに気づいた少年達は、叫び声をあげて、気づかれてしまう。何とか私の手助けもしたが、逆にナイフで突き刺されてしまった。気がつくと、家の布団の中で寝ていた。悪い夢を見たようだ。
それから、月日が流れ小学校の先生になった。担当の教室に入り出席をとると、(鈴川 岳)の名前何か懐かしさを感じたが、それは遠い過去の物語、今では、(岳)の思い出を思い出すことはなかった。
完
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