第3話 プロファイリング
彼の名前は
アイコンは、外国のサッカー選手だった。カバー画像は友達五人と、おそらく体育祭で撮ったと思われる写真。白いTシャツに『3‐6』というクラス名と、数十人の人間の顔が少女漫画風のイラストで描かれていた。おそらくクラスTシャツだろう。絵のうまい子が書いた似顔絵だ。
頭に水色のハチマキが巻かれていた。今よりも日に焼けた姿。冬の今ではお目にかかれないが、わりとがっしりした筋肉がTシャツやハーフパンツからのぞいている。運動部だったのだろうか。
一通りプロファイリングをして、颯斗くんのことを知る。すっかり「颯斗くん」と呼ぶようになっていた。
さて、問題はどうやって連絡をとるか。
『お世話になっております。先ほどお話しさせていただいた
ビジネスメールか。全消し。
『やっほー、タブレットのことについて知りたい?』
勧誘みたいだからダメ。
はぁ、と一息つく。こういうの、見たことあるなぁ。漫画やドラマで散々描かれた自分会議。それを自分もやるようになるなんて。どこか誇らしい気持ちにすらなった。
恋っていいものだな。メルの顔が浮かぶ。
いやいや、関係ない。それに、私はひとつ重大なことを言わなくてはならない。颯斗くんが知ったら、引いてしまうことだ。隠しておくか、先に話して傷が浅いうちに撤退するか。
それを考えると、気が重い。私はスマホの画面を閉じて、ベッドに横になる。
目を閉じて、ため息をしながら寝返りをうつ。
考えるの、疲れた。やっぱり恋ってめんどくさいかもしれない。
このまま寝てしまいたいけれど、お風呂に入らなければ。むくりと起きた途端、通知音が響いた。滅多に鳴らないから、こんな音を設定していたのかと驚く。
期待を込めて画面を見ると、ポップアップされたメッセージが目に入る。差出人は、「はやと」だ。
「きたぁぁぁ!」
声を押し殺してガッツポーズをする。向こうから送ってきてくれた!
『こんばんは。先ほど連絡先を交換した荻颯斗です』
その一文のみだった。返事をどうしようかと思っていると、すぐにもう一文が届く。
『メッセージのやりとりで相談するのはちょっと苦手なので』
うん? これで終わり?
『実際お会いして話しませんか』
続きあるのね……って、はい?
『いつもと違う場所で』
えっ?
クマが首をかしげて「?」を浮かべているスタンプが来た。
しばらく待ってみたが、どうやらメッセージはこれで終わりのようだ。私自身は一回の送信で言いたいことはすべて詰め込むタイプだから、こうして短文が連投されるというのも新鮮だった。
いや、そういうことを言っている場合じゃない。これは、この誘いはなんだ。なんなんだ! クマ可愛い!
最初にメッセージが来てから、二分しかたっていない。短時間で、私の未来が決まろうとしているのか。
受けて立つ!
『ぜひぜひ!』
すぐに返信した。がっついていると思われてもいい。この興奮は抑えられない。手汗でスマホを落としそうだ。
『実は、付き合って欲しいところがあって。男一人とか、男友達とは行きにくいから』
はて、どんな場所だろう。でも、女性とでなくては行けない場所に、私を誘ってくれた。光栄の至りだ。
約束は、次の土曜日。つまり明後日だ。どうしよう、新しい服を買わなくちゃ。
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