探偵少女は推理しません!外伝
朝比奈ゆかり
外伝:VSバレンタインデー事件:村川
ある日、僕は真剣に考えていた。
時間は午前8時を回っている。
そろそろワイドショーが始まる時間帯だ。
テーブルの上には包装紙のチョコが置かれている。本日が二月十四日から考えて簡単に推測できるのはバレンタインデー関連だ。
「どうした、少年」
「由香さん、僕は真剣に考えているのです」
僕は言った。
事件が起きたのは数分前だ。僕が少し席を離れていた間に、テーブルの上へとチョコレートが置かれていた。それも僕の名前宛のチョコだ。
手紙には
「チョコ置いておいたよ!食べてね。良太」
良太。
つまり僕の名前である。
「これはどう言うことでしょうか?」
「知らん!!」
「チョコレートを食べないのか?」
「チョコは食べます」
僕の嫁である
「誰のか分からないのに、食べられませんよ」
「面倒くさいヤツだな」
僕は、チョコを見下ろし、言う。
「もしかして、由香さんが」
「違う」
由香は即答した。
「じゃあ、誰が?」
僕は、リビングに居てくつろいでいた。ここは僕の家であり、由香先輩が尋ねてきたのが今日。その前は、村川と言う女の子がいた。
でも村川さんは、昨夜に家の用事を思い出したとか言って帰ってしまった。当然、僕は彼女と一夜を過ごそうとしたが、電話がかかってきたのだ。
「村川さんの可能性はないな」
「なぜだ?]
「だって、昨夜、ここには何もありませんでしたよ」
すると由香は言った。
「分かったぞ、少年」
「何が、です?」
「チョコを置いたのが誰かだ」
「誰ですか?」
「村川本人しかないだろうが」
僕は首を傾げた。
「しかし、昨日はここには何もありませんでした。村川さんも何も言いませんでした。つまり、村川さんに犯行は不可能です」
「バカなのかい?君は…」
由香は鼻で笑った。
「この家には当時、少年と少年の母親がいたんだろう。村川が帰宅したのが昨夜の22時。チョコが置かれていたのが今日の午前8時と言う事を考えれば、チョコを置いたのは少年のお母様しかいないだろうが」
由香は言う。
僕は「ああ」と答えた。
「昨日、村川さんは、君のお母様に伝言を伝えたんだ。今日、冷蔵庫に入れたチョコをリビングに移動してくれと」
僕は指を弾いた。
「さすがですね、由香さん」
「当たり前だ。無論、村川に聞けばすぐに分かる」
僕は急いで村川さんにお礼を言った。
一言だけ美味しかったよ…と伝えた。
「フム。では帰るか」
「もう、帰るんですか?」
「当たり前だ。少年のチョコ話に興味はないからな」
そう告げて、由香先輩は玄関から出た。僕は由香先輩の背中を見送る。
「少年」
「はい?」
「バレンタインデーチョコだ」
それを手渡されて、僕は泣いてしまった。
まさか由香ちゃんからもらえるとか思わなかったからだ。僕は抱き着こうとしたが、理性が邪魔をして抱き着くことはしなかった。
そろそろ夏が来る。
夏休みが来れば、美少女に会えるかもしれない。
【探偵少女は推理しません!外伝-完-】
探偵少女は推理しません!外伝 朝比奈ゆかり @mamonohe
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