第6話 戦略

そして一人だけになった。

賑わっていた時と比べ、18時となった今は道を歩いている人が少ない。ユータはログアウトせずにギルドへと向かった。その目的はまずはたまったスライムのカードの売却だ。スライムのカードは1枚5ゴールドの価値があり、溜まってるスライムカードの枚数は30枚。ちょうどスタンダードパックを1枚買えるゴールドは稼げたということだ。しかし今日1日でたった1パック。明日からはもっと効率の良い場所に行く必要があるな。


新しいデッキを作るなら一般的にはストラクチャーデッキを買うのが定番だが、この世界はバーチャル世界。わざわざ未完成の1500円相当のデッキを買う必要なんてない。というより現実世界で中級者レベルで強くなりたいならストラクチャーデッキを3使って、そのデッキのコンボ成功率を上げるのがいいだろう。だがユータが目指しているのはプロフェッショナルの世界だ。中途半端な戦術のためにカードを買うのは勿体無いということだ。まずはスタンダードパックに収録されているカードを調べる。このゲームの紹介PVをネットで見た時、アフレニア王国ではこれまでの収録されたカードは全て廃止され、全て新作のカードが収録されている。つまり今までの常識が通用しないということだ。全てのカードが新しい今、スタンダードパック10種類の収録カードの中から50枚を事前に調べて、効率よく、その50枚を集める必要があるということだ。


ユータはログアウトボタンを押す。世界がアフレニア王国から現実の裕太の自室へと戻る。ユータは夕食を済ませて、すぐさま自室のパソコンでクラッシュモンスターズの収録カードと検索し、WIKIの情報などを調べる。初日で殆どのスタンダードパックの情報が載せられていた。おそらくリセマラをしたのだろう。リセマラとはゲームのインストールとアンインストールを繰り返し、ゲームの初期化とパックの購入を繰り返し、何度もパックを購入して開ける技術のことだ。スマホのオンラインゲームで非課金勢はリセマラでレアなアイテムやキャラクターやカードを手に入れてからゲームをプレイする人が多い。今載っているオススメデッキはブースト錬金デッキ。ロストパンドラデッキ、新生ドラゴンデッキ、ネクロ蘇生デッキ、オープン神獣デッキ、スペシャル魔獣デッキなどなど。現在プロプレイヤーの中ではこんなデッキが考察されているらしい。プロプレイヤーのブログサイトを開けば、カードの解説が鮮明に記載されている。


「初日から凄まじいな…もうここまで考察されているのか…」


世界的規模で大流行のクラッシュモンスターズ。現実世界の販売からVRMMOへと進展した。そのうちにVRMMO内で大会とか開かれるのだろうか…。


たくさんデッキが紹介されてるが、所詮これはまだ一部に過ぎない。クラッシュモンスターズのパックは1つのパックにつき500~1000種類のカードが収録されており、今出てるのが10種類のスタンダードパックだから、およそ5000~10000枚のカードが存在することになる。


このゲームで勝ち上がるには戦術が必要だ。


「しっかし、これだけカードがあると、どの組み合わせが強いか分からないな…」


今日は疲れたから、明日になってから考えるか…と。裕太は眠りについた。

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