第5話 狩り
ユータとマルタ、そしてガイの3人はギルドへと向かい、冒険者登録を済ませて、アフレニア王国の外の世界、アーカランド大陸に足を進めていた。
カードゲームのMMOながら、モンスターと戦闘中である。だが、ただモンスターを狩ってレベルを上げるだけなら某RPGとシステムが変わらないが、この世界では相手モンスターを倒した時、キャプチャーを行うことができる。キャプチャーとは相手モンスターを一定確率でカード化させる能力のことである。自分のレベルと相手モンスターのレベルの差が低いほど成功確率が上がる。例えばレベルを上げすぎると、低レベルのレアモンスターをゲットする確率を下げることになる。そのため自分のレベルに応じて、モンスターの狩場を選ぶ必要がある。
「私、疲れちゃいました…そろそろ休憩しませんか?」
マルタは持参の水筒の水を飲み、岩場に座る。VRMMOだから実際に喉が潤うわけではない。だがこの世界では脳内信号で水を飲んだかのごとく癒される。
マルタはパーティの中で最年少だけど高校生くらいだと思われる。ユータの高校生の頃はあまりにも存在感が薄く、勉強もスポーツもできなかったことから影人と呼ばれてたこともあり、とにかく高校時代にはいい思い出がない。マルタはルックスもよく勉強もスポーツもできるいわゆる優等生でクラスの人気者であるらしい。そしてマルタにはクラスで好きな人がおり、その人はユータと同じくクラッシュモンスターズが好きで、勉強はそれなりだが、スポーツはダメらしい。でも彼の優しいところやいざという時に頼りになるところがマルタのハートを射止めたのだ。マルタに好きな人がいることを聞いて、少し落胆した。
「倒したのはスライムとマンドラゴラか…」
カード化出来たのはいいけど、能力がコスト2の雑魚モンスターだ。俺たちのパーティの平均レベルは5。序盤の雑魚ボスモンスターを倒すにはまだレベルが足りない。スライムはパワー2000ガード1000ブレイク2シールド1アビリティがこのカードを場に出した時デッキからスライムを手札に加えられる。スライムはスライムモンスターを中心に組むスラリンデッキと呼ばれるデッキなどに多く活用される。スライム系のモンスターは戦闘力は低いが、モンスター同士のコラボレーションや特殊なギミックで、一時期は環境の中心にスラ忍デッキというのが流行っていた。そしてマンドラゴラはスライムの戦闘力と同じだが、アビリティが場に出した時、手札のカードを1枚エネルギーゾーンに置く効果がある。自然エネルギーブーストデッキにマンドラゴラは採用される。エネルギーは1ターンに1枚しか手札に置けない。だがエネルギーブーストデッキではモンスターのアビリティでエネルギーをどんどんチャージして高コストモンスターを召喚するのがこのデッキの戦略だ。
「そういえばマルタ。お前クラッシュモンスターズ暦どれくらいなんだ?」
「3か月くらいです。現実世界では友達とちょくちょく対戦してました」
次々現れるスライムたちをガイ、ユータ、マルタの3人で刀で斬っていく。スライムを倒したあとには20%の確率で回復薬を落とし、30%の確率でスライムのカードを落とす。この作業を2時間ぐらい繰り返し、アイテムのストレージの中にはスライムのカードと回復薬で一杯になっていた。
ゲーム世界で日が暮れ、夕日が辺りを照らす。この世界にも現実とリンクする時間という概念が存在するようだ。モンスター狩りに勤しむプレイヤーたちは食事を済ませるため、一旦ログアウトをしてVRMMO世界のアフレニア王国から姿を消す。
「じゃあね、ガイ、ユータ。また明日会おうね」
「じゃあなマルタ、また明日な!」
ガイはマルタに手を振って見届ける。マルタはログアウトしてガイとユータの二人になった。
「あのなユータ。今日は悪かったな」
悪かったというのは昼間の騒動のことだろう。ガイはマルタに突っ掛かり、それをユータが止めたことだ。デュエルに勝利したあとにガイがパーティメンバーに入れてくれと言ったのは意外だったが、それ以上にマルタがガイを受け入れたのが想定外だった。
「いいんだ、昨日の敵は今日の友って言葉があるだろう。同じクラッシュモンスタープレイヤー同士仲良くしようってことさ」
「悪いな…じゃあ俺もう帰るわ。またなユータ」
「おう」
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