第2話 始まり

アフレニアの噴水の時計の長針と短針は12時を指している。裕太はギルドにつく。そこには他のプレイヤーで賑わっていた。現実世界で友達同士のプレイヤーが同席しているようだ。


「あの、デュエリストになりたいんですけど」


受付カウンターのお姉さんにそう言うと、うんうんと頷いて、机の上にデッキとデッキケースをおいて説明を始めた。


「デュエリストの方にはまず、初心者用デッキとデッキケースが渡されます。ここにあるスタンダードデッキとスタンダードパックはモンスターを倒した時に手に入るゴールドで購入することができます」


要するに某RPGのようにモンスターを倒さないとお金は手に入らないというわけか。

いやいや、ちょっと待て!それじゃ、パーティ組まないと強いモンスター倒せないじゃん。


開幕初日にして、詰んだ気がした。ギルドを後にして、裕太は外に出た。すでにアフレニアにはどこもかしこもプレイヤーで溢れていて、街全体が賑わっていた。


このままじゃまずいと思った矢先に視界に映ったのは、一人の少女が2人の人相が悪そうなおっさんに絡まれてる光景だった。


「あいつら、大人気ない真似しやがって、すぐに助けないと」


背丈が160センチくらいで金髪の少女の前に裕太は両手を広げ、少女を庇うようにおじさんらの前に立ちふさがった。


「やめろよ!お前らこの子に何をしようとしてるんだ!?」


「何だお前!こいつがぶつかってきたから金かカードをよこせって言ってるんだよ!」


「ならデュエルで決着を決めようじゃねえか」


裕太はデッキケースから初心者用デッキを取り出し、メニューのコマンドからデュエルディスクを出現させ、デッキをデュエルディスクに装着する。それにつられて男もデュエルディスクにデッキを装着。これでデュエルの準備は整ったわけだ。男と男の真剣勝負、サービス初日からこんな輩がいるとは思わなかったが、こういうシチュエーションは嫌いじゃない。


「君、大丈夫かい?」


「はい、私マルタです。こんなことに巻き込んでごめんなさい…」


「気にするな。必ず勝って君を守ってみせるから」


「はい!」


マルタは微笑み、両手を絡め、目を瞑る。裕太が勝つよう祈ってくれているのだろう。こんな可愛い子の前で無様に負けるわけにはいかない。


だが、現実はそう甘くはない。俺たちが使ってるデッキはおそらく2人とも同じ初心者用デッキだ。初手の手札とプレイングが勝負を左右する。初手の手札を見て、裕太の険相が悪くなる。いわゆる手札事故ってやつだ。コスト4以上のカードしか手札にない…。


先攻後攻を決めるのがコイントスシステムだ。二人の中心にコインが投げられ、それが表か裏か。どちらを当てたほうが先攻となる。


「よし、表だ…」


コインは空中を回転し、それが地面に着きコインは表向きに地面に倒れた。


先攻は裕太のターンで、エネルギーをためる。プレイヤーはターンのドローフェイズ後に手札のカードを1枚エネルギーゾーンに置ける。またエネルギーチャージだけでなくSPチャージも行う。


「おい、次はおっさんのターンだぜ」


「おっさんではない、ガイだ。俺のターン!どうやらお前は初心者用デッキを使ってるみたいだが、俺様はそうじゃないぜ。俺様はストラクチャーデッキを使ってるのさ」


「バカな!?ゲーム開始初日でそこまで時間が経ってないのに、何故ストラクチャーデッキを使ってるんだ!?」


ちょっと待て…。そういえばこのゲームには課金システムがあって、プリペイドカードを買って、それをゲーム内のゴールドにできるんだったな…。

やつのストラクチャーデッキは何だ?エネルギーゾーンに置いてあるカードから察するに、あれは…「「パンドラの箱」」デッキ…。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る