カードマスターオンラインアフレニアの決闘者

土呂

第1話アフレニアの決闘者

俺は天才になりたい。


どんなジャンルでもよかった。だが現実はそう甘くはない。学校の勉強は成績が悪く、下から数えたほうが早い。でもって運動神経は悪く19の歳で彼女もいない。


そんな朝倉裕太の唯一の取り柄がトレーディングカードゲームのクラッシュモンスターズだ。大型企業のレクト社が開発・販売してるカードゲームで日本だけでなく、海外でも販売されてる、今や世界中でブームとなっている。ゲームの年齢層は発売当時は中学生を意識したゲームだったが、小学生にも人気が出始めた結果、子供につられてその親もプレイするようになった。


クラッシュモンスターズはデッキ50枚でプレイするもので、モンスターカードとスペシャルカードを操り相手のデッキを0枚にしたほうが勝ちである。

初めの頃は、勝利条件が山札を0枚にするという一風変わったルールであるため、発売当時は売れなかったが、初めにプレイした人が、ネットにこのゲーム結構ハマるぜ!みんなも買うの推奨と載せたことがきっかけに爆発的なブームとなったのだ。


そして、クラッシュモンスターズが発売して1年、ついにクラッシュモンスターズのVRMMOのソフトクラッシュモンスターズ・アフレニアの決闘者というゲームが発売されることになった。


「今日もクソみたいな1日だったな…だがお楽しみはこれからだ」


田丸大学の一年生の朝倉裕太は大学帰宅後、すぐに自室にこもり、パソコンの電源を入れた。裕太にとっては今日という日は誕生日やもし、彼女がいればリアじゅうの仲間入りのバレンタインの日よりも待ち望んでいた日だった。


なぜ裕太が今日を楽しみにしていたかというと、VRMMOのソフトクラッシュモンスターズ・アフレニアの決闘者のサービス開始の初日だからだ。


初日のうちにカード全部揃えたら、俺って神じゃねとか思いながらもVRキャプを被りゲームを起動する。現実世界から異世界へと世界が変わる。


MAPの情報によれば、今裕太がいる場所はアフレニア王国で円型の壁で覆われている大都市で、プレイヤーの拠点となる場所だ。


「おい、お前!俺とデュエルしようぜ」


肩に手をのせ、裕太に話しかけてきたのは、スキンヘッドで黒いTシャツを着たいかにもワルって感じのおっさんだった。現実世界であれば、デュエルするかどうかはともかくデュエルに応じることはできるが、裕太のいる世界はバーチャルリアリティの世界だ。残念だが、相手に応じることはできず、「悪いな」と台詞を残し、ギルドへと向かう。


「現実世界では何の取り柄もないけど、ここなら俺は天才になれるんだ」


裕太が天才にこだわるのは現実世界での劣等感を覆してやりたいという強い意志からなったものだ。


ギルドまで全力で走れば5分くらいで着く距離だが、アフレニアでは、というよりこのゲーム世界ではフィールドに見えないマス目が設定されていて、1歩で進める距離が決まっているため、思ったよりもギルドに着くのに時間がかかった。しかも、走るとスタミナゲージが視界の右上に表示され、ゲージがなくなると、15秒の間、進めなくなるのだ。何で運営はこのクソ仕様を取り入れたのか疑問だった。


ギルドまで向かう途中に他のプレイヤーが次々と出現される。このゲームの他のプレイヤーもログインをし、強いプレイヤーは今日のうちにゲームシステムを把握し、早いうちにゲーム攻略に勤しむだろう。


「誰にも負けたくないんだ。このゲームだけは!」





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