私とサインペン

「せんせー、できたー!」


 私なんて、ただの大学生なのに、こどもたちは私を「せんせー」と呼ぶ。



「できました、でしょ」


 本物の先生が言葉遣いをたしなめる。



「で、き、ま、し、た!」


 変な顔をして、わざとらしく一文字ずつ区切りながら笑って言った。



 私は提出された回答用紙を、赤のサインペンで丸つけするだけ。



 まる、ばつ、まる、ばつ、ばつ、まる

 まる、まる、まる、まる、まる、まる

 まる、ばつ、まる、まる、まる、まる






 しゅろっ、しゅるっ、というすべらかな音を立ててサインペンが動く。

 縦長の、変なカタチの赤いまる。

 厳しそうな、調子にのりすぎたような赤いばつ。


 その音に合わせて、こどもたちは首を動かし、声を上げる。



「えー、せんせー!これって間違えー?」

「やったあ!全問せいかーい!」

「まじで?1問ミスー!くそー」


 一本の赤ペンが作る、いびつなまるとばつに、一喜一憂するこどもたちを見ていると、なんだか残酷な気分になる。









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