私と「なにか」

 バイト帰りに、道で死んだ動物を見た。


 通り過ぎる一瞬では、何の動物だが分からなかったけれど、たしかに「なにか」死んでいた。


 きっと数時間前には、動いていたなにか。

 でも、今はもうそれも叶わない。


 一瞬のことだったが、気が動転した。


 うそ、なにいまの。

 うしろを振り向きたい。




 気がつくと、目の前の信号が赤にかわっていた。


 とっさにブレーキを強くふむ。

 ぎゅーっと不気味な音がして車が停止線を超えた。

 怪訝そうな目をこちらに向けながら、おばあさんが一人、横断歩道を渡った。




 明日には、きっと、あの死んだ「なにか」は、近所の人が連絡した保健所かなんかが「処分」してしまうだろう。

 そして、私も通報した人も保健所の人も、あの「なにか」を忘れてしまう。


 人間は残酷すぎる生き物だと思う。









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