第7話 平穏
『貧乏暇なし。』
借金のせいで何も出来ないでいる今の俺に1番しっくりくる言葉だろう。
安立の借金が膨れた俺は束縛され、マンション麻雀で働きながらその寮と言われる場所に住んでいる。給料はほとんど返済に抜かれ、毎月手元には5~6万程度しか入らない。毎日の食事はほとんど仕事場で、客からのお情けや差し入れでたまにちょっと豪華な物を食えるが、ほとんどの場合はまともに腹を満たす事さえ出来ない。
家に帰ってもする事はなく、ただ出勤時間を待ってふて寝。それは人からしたら『暇』なのかもしれないが、俺にはただの待機時間であって暇と言えるようなモノではない。苦痛だった。まるでプログラムされた事をこなすロボットのような生活だ。
そんな俺にも細やかな楽しみはあった。それはギャンブルだった。昔ゲーセンでパチンコやスロットの台を遊べると流行ったせいなのか、今は安い金で打てるようになった。俺は食事を仕事場で済ませて浮かせた金や、客からのチップをギャンブルに使っていた。こんなクソ生活をしていてもギャンブルはやめられないでいる。
今日は大勝ちした客から貰ったご祝儀のチップを握りしめ、パチンコ屋へ向かった。いつもよりも少し多めな軍資金に足取りは軽い。
店内に入ってすぐに1台確保した。自販機に進みコーヒーを購入すると、俺は全部の台を確認しまわった。他に気になるデータの台は見当たらなかったから、確保した台に戻り打ち始める。千円でそこそこの回転数あったので5千円まで使ってもいいなと思っていたが、2千円で確変を引いてすぐに5箱の玉を積んだ。
しばらく打っていたが減りもせず増えもせず、ただ時間だけが過ぎた。時計を見ると午後2時近くになっていた。最終的に6箱にしかならなかったが、2箱分を煙草に交換して残りは換金。そして何か月ぶりかの外食を定食屋で済ませると、寮へ戻った時には午後3時半になっていた。
急いでベッドに潜り込むとまた昔の事を考え始めたが、俺は無理やりシャットアウトして眠りに包まれるのだった。
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