第6話 裏麻雀
「くそっ!」
今日はやけに昔の事を思い出す。10年前の事を連想させるような出来事があったか考えた。煙草をふかしながらカレンダーにふと目を止める。
「そうか、、、もうすぐあいつの命日か。」
「近藤さん、何か言いました?」
仕事仲間の男が俺の独り言に話しかけてきた。
「いや・・・。」
「俺、そろそろ時間なんで上がりますけど、あとはよろしくです。」
「ああ。」
上がり時間を書き入れたタイムカードを差し出され、俺はサインをしてやった。
「お疲れ。」
「お先に失礼します!」
俺は背中を見送って煙草をもみ消し、客に新しいお茶を煎れなおした。麻雀の調子がいい客のサイドテーブルを見ると、20万の束にまとめられた万札が15個は箱に入っていた。あの束5個でもあれば、4~5か月は楽な生活が出来るのに・・・。
「今日はこの間の負け分取り戻せたらいいんだがなぁ。」
俺の目線に気付いたその客が声をかけてきた。
「そうですね、戻せたらまた遊びにこれますね。」
「そういえば、そろそろ移動の時期じゃないか?」
「あと1か月ぐらいしたら移動の予定なので、またお知らせの連絡させてもらいますね。」
「ああ、頼むよ。」
マンション麻雀は高レートで行われる為、警察の摘発が入りにくくするように3~4か月で引越をする。あと1か月もすればこの店もまた引越をしなければならないのだが、客にはまた来てくれるように連絡をするのが決まりだった。俺がここで働き始めてから、もう10回ぐらいしているのではないだろうか?その為に俺自身も寮の引越を3回はしている。今回の引越で俺も移動にならなければいいが・・・。
それから何時間か過ぎ、客を全員見送ったあとに俺は店を閉めた。誰もいなくなった部屋でソファに腰掛け、余ったツマミで飯を食べてコーヒーを啜る。時計を見ると午前9時半になっていた。売上を金庫に入れ、俺はある場所へと向かった。
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