第2話 始まりの道

 何かしたい事も夢も浮かばなかった俺は、高校を卒業した後サラリーマンという社会のネジをくだらないとしか思えず、サラリーマンになる選択肢を先延ばしにする為、パソコンの専門学校へとりあえず進んだ。両親には「これからの時代パソコンの需要が増えるから将来の役に立つから」と、無理やり説得をさせて1人暮らしも始めた。今思うと、俺が言ってた事はまんざら間違っていない世の中になった。

 勿論「とりあえず」で選んだ専門学校だったが、のちに役に立つから勉強しておかないといけないなんて考えは少しもなかった癖に、始めは真面目に通っていた。しかし、そこでつるむ様になった仲間に俺はギャンブルを教えてもらった。

 1番初めはパチンコ屋だった。教えてくれた奴は確かマサという男だった。「とりあえず2万ぐらい持ってくればなんとかなるから」とマサに言われ、バイトを少ししていた俺は入ったばかりの給料から2万抜いて、待ち合わせしたマサにパチンコ屋に連れてかれた。

「これ・・・どうするんだ?」

 初めて行ったパチンコ屋は少し窮屈で、普通に喋っても声が聞こえない騒音で居心地が悪かったが、俺の様子を見たマサはケタケタと笑いながら打ち方を説明してくれた。

 マサが奢ってくれた缶コーヒーをチビチビと飲みながら、よくわからない画面をただ見てるだけだったが玉がやたらと下から出てき始めて、あっという間に箱が積み上げられ、気が付くと3~4時間経っていた。隣に座っていたマサもいつの間にか居なくなっていたが、どこかから戻ってきたマサは「すげぇじゃん」とケタケタ笑い、終わった頃には玉は7枚の万札に変わっていた。2万の金が9万に増え、その帰りにはマサと飲みに行った。

 専門学校とバイトしかしてなかった俺の生活スタイルは、その日からギャンブルの時間も少し少し増えて行った。何千円しか勝てない日もあったが、なぜか俺は3~4か月勝ち続けのだ。それが今の俺になる道を作り始めていた事には全く気付くはずもなく、調子に乗ってた俺はギャンブルをしたいが為に学校にも通わなくなった。


 パチンコだけじゃなくスロットにも手を出し、俺は金の使い方がどんどん荒くなり、打ちたい気持ちも強くなった馬鹿な俺は、バイトの時間も減らしつつあった。勝負の結果も負けが多くなり、10万近くを1日で泡にしたある日、負けの憂さ晴らしに泥酔した俺はその愚痴をマサにこぼした。

「今月の家賃やべーな・・・クソがよぉ。」

「少し借りればいいじゃん。」

「誰に!お前が貸してくれるのか?」

「俺じゃねーよ。サラ金があるじゃん。」

「え?」

「俺も50万ぐらい借りてるし、余裕だよ」

 マサが借金してる事を全く知らなかった俺は少し驚いたが、今まで全くそんな影を匂わせなかったマサが言うなら安全なんだろう。酒で思考回路が甘くなってた俺は素直にそう思ってしまった。


 そしてさらに馬鹿な俺は、その飲んだくれた翌日の午後、2日酔いでグラグラした頭のままサラ金に電話をかけていた。

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