第17話 自信
「カイル、やれ」
メイさんは通信石でカイルを連絡した。
私達が戦闘続行が厳しいと判断した時にカイル兄さんに連絡入れると、ヒバリさんは催眠ガスの代わりに、怯えさせるガスを放出するように、召喚獣に命じる。
ドスウングイスサウルスは群れのリーダーなんだけど、別にウングイスサウルスと比べて数段強い訳ではない。けど、ウングイスサウルス達は群の長であるドスウングイスサウルスの命令に逆らえない。物量差を覆す、包囲されない為に洞窟に籠城した私達がもう戦えない時に、ドスウングイスサウルスを怯えさせ、ウングイスサウルス達を呼び戻すように仕向け、その間に私達が倒したウングイスサウルスの尻尾を回収して撤退、カイル兄さん達はドスウングイスサウルスを倒してそのトサカを回収して撤退するのが、私が…私達が考えた作戦の全貌だ。
「尻尾が73本あります。すごいです! メアリー、いい仲間を持ったね。お姉さん嬉しいよ」
「もう、やめてよ、お姉さん」
「この子ったら、照れちゃって。あ、これが今回の報酬、九十三銀になります」
九十三銀…ドスウングイスサウルスは二十銀で、ウングイスサウルスが一銀で間違いないよね。
「一金近くあるよ、すごい」
私が足を引っ張らなければもっと稼いだはず。
「おい、何かを食べに行こうよ、カイル」
「おお!」
百匹以上いるのに、七十三匹しか倒せなかった。私のせいで…
「何食べる?」
「何ても注文して、金ならあるから」
「では遠慮なく」
「そうそう、食べたあと金を分けるね」
「ちょ、おま…おい、メイ、あんまり高いもの頼まないでよ」
「なんでここで私の名前が出る? ケイリやメアリーにも言っとけ」
「ケイリとメアリーは空気読めるからな」
「私は空気を読めないとでも言いたいのか?」
「そこまでは言ってない!」
「ヒバリ、モグラ、遠慮しなくでいいぞ! こっちが高いものを頼んであっちの報酬も少なくなるから」
「おい、てめえらずるいぞ」
「お前らも高いものを注文したらどうだ? 盛り上がろうぜ」
どうしてこうなっちゃたの?この魔力の弓をせい? ううん、そんなことない。そもそも、私がこの弓を使っているのは、他の武器を扱えないからだ。
カイル兄さんが剣の腕を磨いてる時、私は何をやっているの? メアリーが有名なパーティに入ってる時も、メイが召喚獣の不足を気付き、槍に手を伸ばしてる時も、私は何をやっているの?
「ヒバリ、そういえば、お前の召喚獣、反則すぎない?」
「そんなことないよ。色々制限あるし、下準備も色々必要だし」
「はは、ご謙遜を」
「謙遜なんかじゃない! このガスはアンデットみたいな、呼吸しないものに効かない。だから、お前達が前に倒したダンジュン主は私達じゃ倒せない相手だ。それに、色々準備をする必要がある。例えば、催眠ガスを出させる為に、先にネムリの花を食べさせる必要がある」
「じゃあさ、あの怯えさせるガスを出すには、何を食べさせればいい?」
「ああ、それね。マンドレイクと言う植物があるんだ。食べると幻覚を見ると言われてる。試したけどどうやら私の召喚獣は見せる幻覚の内容をコントロール出来るらしい」
そもそも、私みたいな村娘がどうして冒険者になったでしょ? 場違いにもいいところだ。
「アンデット相手だと無能になるけどね」
「そっちのワンコだって同じじゃない。冷気はアンデットに効かないし」
「そういえば、ケイリ、最初はダンジュン主を倒した実力を見込んでお前達を誘ったけど、まさかの頭脳派チームだったとはな」
「ケイリ?」
私は元々カイル兄さんと一緒に冒険者になる予定はなかった。だからただ呑気に生活してた。私は最初から冒険者になるべきではなかった。
「ケイリ、どうしたの?」
「あ、何?」
「ケイリのことを話してるんだ。みんなお前のことを褒めてるよ」
「私を? どうして?」
「ケイリが凄い作戦を考えたから」
「私、ではなく、私達が、考えた作戦だ」
「何を言う、ケイリが作戦を考えようと言う前に、俺たちはドスウングイスサウルスを暗殺するつもりだった。元々ヒバリの召喚獣は百匹以上のウングイスサウルスを寝かせるほどのガスを出せないからお前達を誘った。本来は追加報酬を狙うなんて考えもしなかった。だからケイリのこと本当にすごいと思うよ」
やめてよ! 全然すごくない。こんなの、ウングイサウルスの生態を知ってる人なら誰でも考える作戦だ。
ご飯の後、私達は報酬を分けた。私達は四人チームだから、十銀ずつ分けられた。
その後、私は部屋に戻って、手紙を書き始めた。
ゴンゴン!
「ケイリ、いるか」
カイル兄さん…
「どうしたの?」
「それはこっちのセリフだ。ケイリ、なんだか、思い詰めてるような」
「何てもない、よ?」
「僕はケイリのこと心配してるんだ。何があったのか」
心配させてしまったか…
「カイル兄さん、本当は、もっと、ウングイスサウルスを倒せた、はず…でも、私が、魔力切れたから…」
「そうか、そうだったのか。全然気にしなくでいいから。ケイリはケイリなりの、誇りに思える才能があるから」
「違う! もし私の代わりに、メアリーくらい、強い人が後衛を、務めれば、ウングイサウルスを全滅した、かも」
「ケイリ、自分に厳しすぎ」
「カイル兄さんは、どうして、あの時、私を誘ったの?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます