初心者向けのゾンビ映画【シリアス編】
【はじめに】
屍之山「カクヨムのジャンル別ランキングのエッセイ・ノンフィクションでこの講座の記録が週間1位となったようです。ありがとうございます。今回は緊張感溢れるシリアスなゾンビものが観たいという方にお勧めの映画を紹介していきたいと思います」
腐胴「ゾンビがエッセイに入るのどう考えてもおかしいよな。あ、今回紹介する作品のリストを見たんですが『28日後…』は入ってないんですね」
屍之山「ああ、観たければ観てもいいですよ」
腐胴「何でそんなに投げやりなんですか」
屍之山「ゾンビ映画の歴史的に大事な一本ですし、質も高いとは思うんですが、個人的にあまり好きではないんですよね……。人間ドラマもゾンビものの醍醐味なんですが、後半はそれが多すぎて、あまりゾンビが関係しないというか。内容は既に3限目で触れていますし、興味ある方は損はないと思いますので実際ご覧になってもいいと思います。ゾンビ映画に珍しく監督も俳優も有名ですしね」
腐胴「主演のキリアン・マーフィー、この映画じゃただの郵便配達員のくせに軍隊より強いんだけど、アメコミ映画で悪役やるとヒロインより弱いんだよな」
屍之山「初心者向けが前提なので洋画俳優の知識が求められる話題はやめましょう。では紹介に移ります」
【ドーン・オブ・ザ・デッド】
屍「まずはこちら、2004年公開のアメリカ映画です」
腐「監督は『300』や『ワンダーウーマン』などアクションで有名なザック・スナイダーですね。あれ、このタイトル……」
屍「そう、この映画は2限目でお話しした、ゾンビものの元祖ロメロ『Dawn of the Dead(邦題:ゾンビ)』のリメイクなんです。内容は、原典で登場人物の設定変更やエピソードの追加はありますが、ゾンビから逃げ、籠城戦、そこからの脱出を目指すという大筋は変わりません」
腐「80年代よりCGや撮影技術も発達してますし、原典にはないゾンビが走るって設定も加えられてるんで迫力ありますね」
屍「また、主人公が籠城する場所も原典通りショッピングモールですね。ロメロ監督は思考停止して物を買い漁るという消費社会への皮肉も込めて、『ゾンビ』の舞台に商店を選んだそうです」
腐「物に溢れたモールに立てこもる主人公たちと、隣の銃しかない店に孤立無援で籠城する男との交流とか、原典にはないですが象徴的なシーンですね」
屍「古典ゾンビ映画の魅力を今見ても恐怖を感じられる映像で楽しめるのがお勧めの理由です。そうそう、ご覧の際はエンドロールの後までしっかり見てくださいね」
腐「映画館でエンドロールと同時に携帯出す奴とか、屈まずに前通って出て行く奴とか殺したくなりますよね」
屍「受講者が怖がりますのでそういう言葉は控えてください」
【REC/レック】
屍「続いては2007年、スペインのジャウマ・バラゲロ監督製作の作品です。ストーリーは、消防署を密着取材する女性レポーターが、事故があったと通報を受けて同行したマンションでゾンビパニックが起こり、建物ごと隔離されてしまうという展開ですね。設定に合わせ、この映画は作中のドキュメンタリー番組を撮影するカメラマンのビデオカメラを使った一人称視点で全編進みます」
腐「『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』から始まって一時流行した手法ですね」
屍「情報を制限して見えない怖さを演出できるのでホラーと親和性が高いんでしょうね。死角から突然襲い掛かるゾンビや撮影を妨害されたり暗闇になると音声のみになるなど恐怖を煽るのに役立っています」
腐「撮影経費を削減できる分、クソみたいな出来の映画も多いけどな」
屍「受講者の前で汚い言葉はよしてくださいって言ったばかりですよね。珍しいのが、この映画のゾンビは呪術的な力が原因なんです」
腐「これ、2000年代の映画ですよね。ウィルスではなく?」
屍「はい。ゾンビというよりは悪魔憑きに近い存在のようですね。主人公たちはジャーナリストですが、閉鎖空間で悪魔の力という未知の存在と直面し、唯一の武器である情報が通用しないという怖さが、この一人称視点の映像に現れていると思います」
腐「現代の情報社会でも通用するホラーってことですか」
屍「そうですね。『REC/レック』はシリーズ化され、現時点で4作目まであるので、レンタルする際には順番にお気をつけください」
【ペット・セメタリー】
屍「最後はちょっと趣向の違うこちらです。1989年のアメリカ製作、メアリー・ランバートという監督の作品です。ゾンビもので女性がメガホンをとったものは少し珍しいですね」
腐「原作は去年リメイクされた『IT』などのホラーや、それ以外にも『スタンド・バイ・ミー』など数々の名作を出してる作家スティーヴン・キングですね」
屍「脚本もキング書き下ろしだそうです。幸せな家庭を持つ若い医者が引っ越してきた田舎町には、埋めた動物がゾンビ化してしまうペット霊園があり……というのが導入ですね」
腐「古めの作品ですし話の舞台も小規模ですし、今の観客が見て怖いと思うでしょうか?」
屍「小規模でいいんです。この映画で恐怖はあまり重要ではないんです」
腐「ゾンビものなのにですか」
屍「はい。元々ゾンビの怖さといえば死んだ人間が怪物になって戻ってくることですが、裏を返せば、それは形はどうであれ死に別れたひとが生き返ってくれるという仄暗い希望でもあります。この映画はそういう話なんですね」
腐「どのゾンビ映画にも家族や恋人が怪物になったときの葛藤は描かれますけど、撃ち殺さないと自分も危ないから結構サクッと解決しますよね」
屍「大規模なパニックの渦中では悩んでる暇もありませんが、静かな田舎で愛するひととの死別に否応なく向き合う時間が与えられているとき、復活という選択肢に手を出さずにいられるか……。ゾンビが持つ怖さだけではなく悲しさの側面が強く現れている映画だと思います」
腐「そこら辺のテーマは普遍的ですし、今観ても共感しやすそうですね」
屍「DVDはエンドロールが始まったらすぐ止めていいですよ」
腐「ドーン〜の紹介と真逆のこと言ってませんか?」
屍「ロールと同時に流れる主題歌が合わなさすぎて、ラストの余韻が台無しになるんですよ……」
腐「速攻で停止した方が良さそうですね。続編もあるようですが?」
屍「あれはキングが一切関わっていないので、見所が『ターミネーター2』の子役が出ているくらいしかありません」
腐「ホラーの続編じゃよくある話ですね」
【終わりに】
屍「今回、前回とそれぞれコメディ編、シリアス編に分けてゾンビ映画を紹介してきましたが、いずれも欧米の作品ばかりでしたね。次回はアジア編に移りたいと思います」
腐「屍之山さん、以前の講義でウィルス性ゾンビの概念が生まれてから、日本でも作りやすくなったと言ってましたね」
屍「はい、日本だけでなくシリアス編で取り上げるか迷ったほどの名作韓国映画なども紹介する予定ですよ」
腐「あの邦題がクソダサいやつですか」
屍「次言ったら、ふん縛って吐くまで『死霊の盆踊り』観せますからね」
腐「ゾンビ映画を脅迫の材料に使うなよ……」
屍「あれはゾンビとは認めません。では、講義を終わります」
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