じゃあゾンビを観てみようか
初心者向けのゾンビ映画【コメディ編】
屍之山「お好きな映画は?」
腐胴「ブルーベルベットとエル・トポです」
屍之山「レベルの高い変態ですね」
腐胴「脳だモツだで喜んでる人間に言われたかねえよ」
屍之山「生徒の前で汚い言葉を使わないでください。では早速紹介に入ります」
【ショーン・オブ・ザ・デッド】
屍「最初は入りやすく、コメディから紹介していこうと思います。その中でも今までゾンビものを一度も観たことがない方に勧めやすいのがこの作品ですね。2004年公開、監督はイギリスのエドガー・ライトです」
腐「監督の『ベイビー・ドライバー』は今年のアカデミー賞にも他部門でノミネートされてますね」
屍「はい、そのライト監督のデビュー作がこれですね。英国では大ヒットでしたが日本では未公開DVDスルーです」
腐「大丈夫なんですか、それ」
屍「ええ。ショーン~の面白さに感動した日本のファンが、同じくDVDスルーのはずだった監督の次作を日本でも劇場公開してほしいと署名を集め、実現したというエピソードもあります」
腐「作品の出来は保証されているということですね」
屍「そう思います。内容の紹介に移りましょう。主人公は仕事では出世できず、三十路なのにニートの親友とシェアルームをしているという公私ともにダメな男ショーンです。彼が彼女に振られてやけ酒した翌日、気がつくとロンドン中にゾンビが溢れており、状況が把握できないまま、親友と一緒に元カノと両親を救出に向かう……といった感じですね」
腐「挿入歌が無駄におしゃれだったり、主人公が籠城するのに選ぶ場所がパブだったり、イギリス的なコメディなんですね」
屍「そして、初心者にお勧めしたい理由というのが、この作品には名作ゾンビ映画へのオマージュがたくさんあるんです」
腐「ライト監督はそういう作風の印象ありますね。それは逆に初心者にはキツいのでは?」
屍「知っているひとは更に楽しい程度で全く知らなくても十分楽しめます。ですから、古典ゾンビ映画に入るきっかけとしてもちょうどいいんですね」
腐「最初は敷居の低いコメディから入って、気になったら古典も、という形ですか」
屍「DVDには各登場人物の結末やメイキングも収録されています。疑問点があってもだいたいは解決されるというアフターフォローも、初心者には助かりますね」
【ゾンビランド】
屍「続いて紹介したいのがこの作品です。2009年公開、監督はアメリカのルーベン・フライシャーです。舞台はゾンビパンデミックがだいぶ進み、人類がほぼ絶滅した世界です。ゲーム好きで引きこもりの主人公が、屈強だけど駄菓子に異常な執着を燃やす大男と、成り行きで仲良くなった泥棒姉妹と協力しながらゾンビのいない地を目指す話です」
腐「主演は『ジャスティス・リーグ』にも出演したジェシー・アイゼンバーグ、大男役は現在公開中の『スリー・ビルボード』で保安官役のウディ・ハレルソン、泥棒の姉の方は『ラ・ラ・ランド』のヒロインのエマ・ストーン……キャストがやけに豪華ですね」
屍「他にも主人公たちが高級住宅街にある豪邸に入るシーンでは有名なハリウッド・スターがまさかの御本人役で登場してますよ」
腐「物真似番組じゃないんですから……」
屍「これも初心者に勧める理由があります。主人公はヲタクなのでとても弱いのですが、生き残るための鉄則として、ゾンビ映画の定番から学んだ32のルールを自身に架します」
腐「ビッチはすぐ死ぬ、みたいな奴ですか」
屍「講義中は言葉を選んでください。まあ、“肌の露出は最小限に”とか“二人組で行動しろ”とかですね。だいたいどのゾンビものにも共通するお約束を教えてくれるので、他の映画を見たときもすんなり受け入れたり、この後の展開を予測する楽しみが得られると思います」
【バタリアン】
屍「最後はちょっと古めなゾンビ映画成長期80年代からひとつご紹介しましょう。1985年にアメリカ公開の作品です。監督はSFやスプラッタを得意とするダン・オバノンですね」
腐「だいぶ先ほどふたつとは趣向が違うというか……ゾンビもチープですがそこそこグロいですし……」
屍「80年代は今と比べて放送コードも緩い時代ですからね。古典ゾンビへの足慣らしにはこれくらいがいいでしょう。面白いのがこの映画、2限目にお話ししたロメロ監督の『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』は実際にあった事件だという設定なんですね。作品は『ナイト~』の後、残ったゾンビをとある医療系会社で封印していたのが、職員がうっかり解凍してしまいパニックに……というものです」
腐「葬儀屋を『イタチの死骸だから』とごまかして解凍してしまったゾンビを処理させようとしたり、墓場でストリップをしていた若者たちがゾンビに食われたり、全体的にシニカルですね」
屍「ブラックコメディではありますが、ゾンビが生者を襲う理由に『脳みそを食べると常に感じている痛みが和らぐ』などロメロ監督も出さなかったアンサーがあったり、死者復活系ゾンビですが言語を扱うなど、けっこう革新的なところも多いんですよ」
腐「そう聞くと、あのラストもただ丸投げなエンドではなく意味あるものに感じますね」
屍「根底はロメロゾンビに通じる真剣なものだと思いますよ。ギャグとしても普通に面白いので、ぜひ結末を確かめてください」
【終わりに】
屍「さて、次回はコメディから入った後は真剣に怖かったり、完成度の高いゾンビを見たいという方に映画を紹介する【シリアス編】に入りたいと思います。先に言っておきますが、有名な『ワールド・ウォーZ』は紹介いたしません!」
腐「いきなりどうしました」
屍「マックス・ブルックスの原作はゾンビパンデミックを主婦から宇宙飛行士までのインタビュー調で書いたり、人間どうし国どうしの政治や宗教問題も描いていてとても面白いんですが、同タイトルの映画は最初の設定以外ほぼ別物なんですよね。原作の面白い部分がほぼ出ないまま結末を迎えるんです」
腐「インタビューで終わるAVみたいなもんだな」
屍「本当に生徒の前で汚い言葉を使わないでください。では次回のシリアス編でお会いしましょう。講義を終わります」
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