1限目……ゾンビって元々何なのさ

 第1回目の講義を始めます。講師の屍之山しのやまです。

まず最初に今回は「そもそもゾンビという言葉はどこから来たのか」と「ゾンビものはいつからあったのか」からお話ししたいと思います。

 

【そもそもゾンビってどこから来たのさ】

 「はじめに」で書いた通り、現在ゾンビのイメージとは「腐りかけ」「噛まれると感染する」「頭部を壊さないと死なない」などだと思います。でも、本来“ゾンビ”とはまったく別のものを指す言葉でした。


 ゾンビの起源は西アフリカの民間信仰ブードゥー教です。近代的なモンスターのだと思われていますが、わりと由緒正しいですね。ゾンビという言葉も、アフリカ大陸の一部で信仰されていた神々の人柱「ンザンビ」=「不思議な力を持つもの」が語源だそうです。その信仰が奴隷貿易によって広まり、カトリックなどの要素も混じったブードゥー教が生まれたことで、そこに取り入れられた「ンザンビ」の概念も「ゾンビ」に変化していきました。


 ブードゥー教というと呪術的なイメージが強いかと思いますが、「ゾンビ」もその神官が行う呪術のひとつであり、同時に刑罰でもありました。

内容はブードゥー教の神官が毒性の高い植物や動物の死骸などを使ったゾンビ・パウダーという粉で、人間を仮死状態にした後に復活させ、自由意志を奪った奴隷にする、というものです。

 Zora Neale Hurstonという学者が、1930年代にブードゥー教の土地・ハイチを巡り、実際に死亡したとされる女性が歩き回る姿を見たと自著『Tell My Horse 』に記し、雑誌に写真を投稿したりもしていますが、実際にそんなことができたのかは微妙です。

後にRoland Littlewoodという、ハイチに渡り、死者復活説を唱える現地住民を調査して「他人の空似じゃねえか!」と論破していくという、ゾンビみたいな執念と徘徊によってゾンビを全否定している学者もいます。彼が何にそれほど怒ったのかよくわかりません。


【ゾンビものはいつからあったのか】

 このように、ゾンビというのはブードゥー教発祥のものであり、映画のモチーフとして使われたときも、当初は今のようなスプラッタなものではなく、「奴隷化された仮死状態の人間」という本来の意味合いでした。


 最初に映画でゾンビを扱ったのは、1932年のアメリカ映画『恐怖城(原題:White Zombie)』だとされています。しかし、内容はホラーというよりメロドラマで、新婚カップルに嫉妬した金持ちがブードゥー教の司祭を使って新婦をゾンビにしたり、さらにゾンビ花嫁に惚れた司祭が金持ちもゾンビ化したり、最終的に内輪揉めで犯人ふたりが死んでハッピーエンドという、脳みそもモツも飛ばない退屈なものです。

 しかも、ゾンビといっても夢遊病患者のようなもので綺麗なままだし、ひとも食わないし、最後には花嫁のゾンビ化が解けるという超イージーモードでした。著作権が切れているのでYouTubeか何かでも観られるのですが、同じ1時間半あったら公園でカラスの死骸でも探した方が楽しいと思います。


 一応その後に始まった第二次世界大戦と絡めて、フランスがゾンビ軍隊を作ろうとする映画や、戦闘機がゾンビのいる島に不時着する映画なども作られたのですが、ゾンビものとして定着するほど流行りませんでした。


それでは、今イメージするようなゾンビものはどうやって生まれたのでしょうか。

次の講義では現代の皆さんが思い浮かべる「ゾンビ」の印象を作り上げた映画のお話です。

 では、今回の講義を終わります。お疲れ様でした。

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