第1話 神様『に』転生しました(精霊歴2年)

「ざんねん、君は死んでしまった」


 真っ白な空間で、突如頭の中に声が響く。ここは一体どこで、この声の正体は誰だ?  異常な状況にもかかわらず、なぜか俺は平静だった。


「おや、冷静だね。素晴らしい、君には素質がある」


 思い出せ。俺は何をしていた? そうだ、期末テストが終わった帰りにゲームを買いに行ったんだ。

 その帰り道、目の前で子供が車道に飛び出して、トラックに轢かれそうになるのを目撃した。


 俺は、とっさに子供を庇って……経験したことのない衝撃、身体がバラバラになる感覚。泣きながら俺に縋りつく子供の姿が、最期の光景だった。子供が無事でよかったじゃねえか。


「うし、思いだした。俺、死んだんだな」

「その通りだけれど、君は本当に冷静だね。普通、死んだらショックじゃないのかい」

「過去は過去、気にしてクヨクヨするよりも、俺はいまに全力を注ぐ主義なんだ。親父の教えでな。親孝行できなかったのは申し訳ないけどさ。で、だ。俺を呼んだ目的はなんだ」

「切り替えが早いね。やはり君は逸材だ――神様転生って知ってるかい」



 てなわけで、喜び勇んで神様転生を承諾した俺は、異世界――リ=アースというらしい――の神様になりました。

 どこかの貴族の息子に転生して、大好きな内政チートをやりつつ、ハーレムを造る計画だったのに。


 神様『に』転生したのね。詐欺だ。


 テンプレかと思ったらテンプレじゃなかった。どうして俺が呼ばれたのか。それは、この世界が何度も滅びかけるほど不安定だからだ。

 当然、リ=アースの神様も、何とかしようと努力したんだが、うまくいかなかった。そこで彼女は、賭けに出た。新しい神様を呼んだんだ。


「―――それが俺。だいたいあってる?」

「ええ、勝手に呼び出してしまって悪いと思ってるわ。けれども、お願い! 世界を救って」


「いいよ」

「えっ? あっさり返事してくれたけれど、本当にいいの? 結構大変よ」

「男に二言はない。一緒に世界とやらを救ってやろうぜ?」

「……ありがとう。1日24時間労働、三食昼寝なし、衣食住皆無の世界へようこそ!」

「え」


 ほろりと涙を流している目の前の幼女こそが、リ=アースの神様だ。小学校三年生くらいのなりに、黄金の長髪とヘーゼルの瞳が特徴だ。かわいいが、ロリコンではない俺には、関係がなかった。


 軽く話を聞いたが、本当に苦労してきたのがよくわかる。

 たった一人で、世界を見守ってきたのだ。なにせこの世界は、二度も滅びかけている。

 そして、このまま放置していれば、三度目の滅びを迎えるだろう。なんて厄介な世界なんだ。


 ところで、お互い自己紹介したのだが、彼女には名前がなかった。呼びづらいから、名前を付けてくれと頼んだら、俺に頼まれた。


「リ=アース……"Re: Earth"地球よ再びか。ちょっと安直だが縮めて『レース』なんてどうだ?」

「うーん、初めて貰った名前だもの、気に入ったわ。私はいまからレース。レースって呼んでちょうだい。よろしくね、ヤト」


 あ、俺の名前は、八戸矢斗(はちのへやと)といいます。神様ネームは、ヤトにしました。 

 お互いを知るために、雑談を交わす。名前を呼ぶだけでも親近感がわくものだ。俺とレースは、一心同体の相棒。喧嘩して世界が滅んだら洒落にならん。

 会話が盛り上がってひと段落ついたところで本題に入るとしよう。


「ではレース、今世界はどうなっているんだ」

「いまはね、アストラハン統一帝国が大陸を支配しているわ。時間が経つにつれ腐敗していってね。一部の魔法使いが帝国を牛耳っているの。魔法至上主義っていうのかしら? さらにヒューマン至上主義でもあるから、平民や他種族が弾圧されているのよ。もう、酷いもんだわ」


「ふむ、魔法を使える王侯貴族だけに、富と権力が集中しているのか」


 詳しく話を聞くと酷い酷い。魔法というのは、血筋がものをいうらしく、貴族がその血筋を独占しているのだ。

 帝国黎明期に貴重な戦力となった魔法使いが貴族になったわけだ。魔法を使えない平民は、貴族に搾取される他ない。


 いや、平民はまだいい。彼らはヒューマンだからだ。



 リ=アースには、多様な種族が暮らしている。


 もっとも数が多いヒューマン。

 獣の力をもつ獣人。

 魔法に秀でた美しいエルフ。

 鍛冶に愛されたドワーフ。

 数は少ないが強大な力をもつ魔族。


 大陸全土を支配しているアストラハン統一帝国は、ヒューマンの国だ。

 彼らは、他種族を亜人と蔑み、奴隷として酷使していた。その待遇は、酷いものだ。


「あれ? 思ったより怒りが沸かないな」

「神になったからよ。もうあなたはヒトではないもの」


 ちょっぴりショック。レース曰く神様だからね。そうか、俺人間辞めてたのか。でも、帝国の圧政が世界の歪を生んでいるのも事実。ちらりと除くと猫耳が狩られていた。

 

 ……よし、帝国を滅ぼそう。


「いきなりね!?」

「俺はネコミミ好きなんだ!」

「まあ、私も帝国をなんとかするのには賛成だけどね」


 帝国の歪さにはレースも気づいていたらしく、世界の均衡を保つため魔王を生み出した。

 共通の敵が存在すれば、仲間意識が芽生えると考えたからだ。だが、それは失敗に終わる。


 帝国が勇者を召喚し、あっさりと魔王を倒してしまったからだ。放っておいても腐敗した帝国はいずれ倒れるだろう。

 しかし、それではだめなのだ。身分や種族の差別は憎悪の連鎖をうむ。膨れ上がった憎悪は、世界を破壊するだろう。

 困ったレースは、俺を召喚したわけだ。



 ここでうれしい誤算が起きる。

 平民や奴隷の扱いに憤った勇者が、帝国に反旗を翻したからだ。

 こいつは使える。俺は、勇者をうまく利用して、新たな『都合のいい』文明を造ることを決意した。

 その実験場として、勇者の開拓村を選んだ。箱庭内政みたいで、わくわくする。


 まずノームとして顕現し勇者たちと契約しよう。サラマンダーも少数だが顕現しておく。


「お、食料問題は解決できたようだな」

「そうね。これなら冬を越せるでしょう。サラマンダーも契約するの?」

「ああ、樹海の魔物は強いからな……ほら、ゴブリンが攻めてきたぞ」


 奇襲されピンチになった村が見える。


「精霊使いが無双してるわね」

「これなら精霊をみんなが受け入れるだろうな」

「精霊システム普及の第一歩ね!」




【 精霊歴2年 】


「――――≪グロウ・プラント≫  ふぅ、これで今年も無事に冬を越せそうだな」

「全くです。いやはや、精霊魔法様様ですな。麦がみるみる成長していきますね」

「その代りだが……味がなあ」


「ははは、成長促進の代償ならば仕方ありません。飢えて死ぬよりずっとましです。それよりも、姫様の方が心配です」

「エリィは文句も言わず食べているよ。みんな飢えずに済んでうれしいって、笑顔でさ」


「姫様……立派にご成長なさって、うぅ」

「泣くなよセバスチャン」


 赤茶けた大地はかつての姿を変え、緑あふれる草原となった。

 開墾も順調に進み、広大な農地が広がる。


 この地へ来て早5年。最初は、冬越えだけで精一杯だった――いや、ノームが現れなければ、全滅していたかもしれない。


 俺は土の精霊ノームと契約して、最初の精霊使いとなった。

 精霊魔法はとても便利で、大地に栄養を与える魔法、農地を耕す魔法、植物を成長させる魔法など生活に密接していた。

 勇者時代にお世話になった魔法は使えなくなったが、それを引いても精霊魔法には大助かりだ。


「しかしタロウ様お一人に頼ってしまい申し訳が立たず」

「気にするな、といいたいところだけれど、俺一人じゃだめだよな。で、ノーム的にはどうよ?」


『そろそろ新たな精霊使いがうまれるとおもうぞ。開拓民たちは、実に善良な人々じゃな。これなら、一気に増えるじゃろ』


「そういってくれると助かるよ。彼らは、腐った帝国に嫌気がさして、こんな辺境までついてくれた仲間だ。悪人であるはずがないじゃないか」


「タロウ様、ノーム様はなんと?」

「ああ、俺にしか精霊が見えないんだっけ。ノームは、みんなが善良だからこれから精霊使いは増えていくだろうって言ってる」


 おお。なんと恐れ多いと再び感涙するセバスチャンをみて、苦笑してしまう。彼はもともとエリー付きの侍従長だった。

 素人の俺が解放戦争なんて大それた真似ができたのは、彼がブレーンとして影に日向に活躍してくれたからだ。

 もういい歳だというのに、まだまだ現役です、と言い放って俺たちの世話をあれこれとしてくれる。本当に頭が上がらない存在だ。


「た、タロウ様、大変です!」

「みんな慌ててどうした? まさか、また魔物が攻めてきたのか」

「違います違います。ほら、この手を見てください」

「契約の指輪!? そういえば、精霊がたくさん増えている……?」


 契約の指輪とは、精霊との契約の証である。正真正銘精霊使いになったのだ。

 この後は、大騒乱のあとみんなで宴会を開いて大騒ぎした。

 土の精霊ノームと契約したものが、八名。それに加えて、サラマンダーと契約したものが出た。 


 ここで精霊の容姿に触れると、ノームはいかにも頑固なおじさんの恰好をしていて、サラマンダーは筋骨隆々の青年の姿をしている。

 男ばかりで残念、と思っていたら、ウンディーネとシルフとアウラは、女性らしい。ノームに聞いた。


 これで開拓村の食料生産はぐんと上昇した。味を犠牲にして促成栽培していたが、余裕がでたことで、うまい飯を食えるようになった。


 ところで、この東方フロンティアに広がる樹海――俺たちは死の森と呼んでいる――は、強力な魔物ばかり生息している。正直開拓民では、敵わない。

 熟練の魔法使いと勇者パーティーだけで対応している。そこに、精霊使いが新たに増えたことで、戦術の幅が広がった。



「魔物が襲撃してきたぞ!」


 この日も、魔物が攻めてきた。たしかに、ここいらの魔物は、とんでもなく強い。連携の技術を磨くために、主力メンバーと精霊使い全員で出撃した。魔物を正面から粉砕して、あわよくば巣を破壊しようという作戦だ。


 魔王すら倒した勇者パーティーの敵ではない。新人精霊使いたちの良い経験になる――――はずだった。


「くそっ、回り込まれた!」


 魔物の群れに真っ先に切り込んだのは、うかつだった。いつもなら、これで味方の士気があがる。

 だが、いつの間にか足の速い魔物が、迂回するように押し寄せてきたのだ。

 急いで避難所に向かうが、間に合いそうにない。最悪の事態を想像した俺が見た光景は、魔物と互角の戦いを繰り広げている精霊使いの姿だった。


 土の壁で非戦闘員を守り、炎を浴びせて焼き払う。農民、商人、軍人、貴族と出自がバラバラである。しかし、農民でさえ魔物と渡り合っているのだから驚きだ。


 とくに、サラマンダーと契約した元近衛騎士――エリーについてきた――は、鬼神のごとき活躍だった。

 サラマンダーは、炎を操るだけではなく、身体能力まで強化してくれるらしい。


 新たに生まれた精霊使いたちは、戦闘訓練を積んでいき、後世では英雄と呼ばれるようになる。

 そんな英雄たちによって開拓は加速していくことになった。




【 精霊と魔法の相違に関する批判的論考 著ティモシー・フィル・キュンメル 】


 精霊魔法とは、人間が使う魔法とは全くことなる技術である。

 まず、魔法とは何か。それは、人がもつ進化の可能性である。

 人類は最初から魔法を使えたわけではない。事実、科学文明や神聖文明で魔法を使っていた記録はない。


 魔法使いとは、繰り返される淘汰の果てに現れた、進化した人類なのである。

 優れた血統と才能を持つ人間だけに許された奇跡こそ魔法なのだ。

 聖王エルドリッジは、その最たる例である。アストラハン統一帝国による世界統一という人類初めての偉業の原動力となったものは、魔法であった。

 魔法は、敵を打ち払い、傷をいやし、便利な道具を生み出した。我々の魔法文明は、選ばれし人類の究極の発展形なのである。


 話を戻そう。では、なぜ精霊魔法は魔法とは異なるのか。

 それは、精霊と契約すると、人類の魔法が全く行使できなくなるからである。精霊は契約者の魔力を糧に、数々の精霊魔法を行使する。

 しかし、魔法の細かい制御は精霊任せであり、柔軟性に欠けるという大きな欠点をもつ。


 呪文を唱えるだけで、手軽に使える点をメリットと唱えるものもいるが、大いなる過誤である。

 何もかもを精霊に任せてしまっては、精霊の奴隷なることと同義である。

 精霊が契約者に反旗を翻す可能性とて皆無ではないのだ。


 人がもつ魔法という可能性を捨ててまで、精霊に迎合する昨今の情勢に、筆者は落胆を禁じ得ない。

 優良種たる魔法使いこそ、人類の導き手に相応しいと強く主張するものである。



【 誰でもわかる精霊魔法 著アウレリア精霊学校教育出版部 】


 精霊魔法とは、精霊と契約した人間だけが使える特別な魔法のことです。

 ただの魔法と異なり、精霊と協力して魔法を使うことで、誰でも簡単に魔法が使えるようになります。


 では、どうすれば契約できるのでしょうか。


 一般には、善行を積んだ人間の前に、精霊は現れるといいます。精霊側から契約をもちかけられ、承諾すると、契約の指輪を与えられます。

 この契約の指輪は譲渡可能で、先祖代々受け継いできた精霊使いもいます。

 精霊は善良な人間を好みます。たとえ、精霊使いになれても、悪行を積むと、精霊は去ってしまいます。

 ゆえに、精霊使いは信用されるのです。


 精霊魔法は、6種類の属性に分かれています。


 火のサラマンダー

 土のノーム

 水のウンディーネ

 風のシルフ

 光のアウラ

 闇のシェイド

 無のオリジン


 それぞれに特徴があり、扱える精霊魔法も全く異なっています。

 一度に契約できる精霊は一人までなので、複数の属性使いは、滅多に表れることはありません。

 次章で、個別の属性をみていきましょう。



【 第四文明論 ~精霊文明の勃興~ 著バネッサ・ブラス 】


 科学が支配した第一文明

 神々が統治した第二文明

 魔法が力をもつ第三文明

 精霊と共にある第四文明


 リ=アースは、四回の文明期と暗黒期を繰り返している。 

 第一文明は『科学』によって栄え、世界をあまねく支配した。しかし、その科学が生み出した大量破壊兵器によって滅んだ。


 ヒューマンによる国家が分立し、世界大戦が起こったからだと言われている。

 当時の遺産(アーティファクト)が時折遺跡から発掘されるが、今の我々では到底復元しえない高度な技術がつかわれていることが分かっている。


 その科学文明が衰退した暗黒期に、ヒューマンだけでなく、獣人、エルフ、ドワーフ、魔族といった種族が勢力を伸ばした。彼らがなぜ出現したのか。それは今なお論争になっている。


 帝国のヒューマン至上主義者は、科学文明を築いたヒューマンの優越を唱えている。獣人やエルフたちは亜人(ヒューマンのできそこない)であり、奴隷として使役されていたというのだ。

 筆者はこの意見には全くもって反対であり、帝国の野蛮人の妄想としかいいようがない。


 種族間戦争が絶えず起こり、科学文明は破壊されつくした。これを見かねた創造神は、従属神を遣わし、神々の統治により、世界に安寧がもたらされた。

 これが、第二文明、通称神聖文明である。しかし、職業、民族や種族によってバラバラの神を崇めた結果、信者同士で確執が起こる。

 始まりは、どの神が優れているかという神学論争だった。それは従属神の間にも波及し、改宗を迫って戦争が勃発した。

 大戦によって世界は崩壊し、神々も去り第二文明は衰退した。

 

 この時期に、現代まで続く人類の脅威である『魔物』が誕生したといわれている。

 創造神の怒りに触れた人類への天罰こそが魔物だと主張する者もいる。筆者もこの見解を支持するが、いまだかつて創造神が降臨したことはなく、証明が困難である。

 結果として、強力な魔物の出現は、人類の生存領域を著しく縮小させた。


 宗教戦争で滅びた第二文明の後の暗黒期、唯一神を崇めるヒューマンの帝国が世界を統一した。

 彼らは、『魔法』という超常の技術を用いて、魔物を駆逐し、瞬く間に世界を征服してのけた。



 第三文明こと魔法文明の成立である。しかし、魔法の優劣は血統と才能に依存し、魔法の力をもつ特権階級を生み出した。

 貴族の始まりである。帝国の貴族は魔法の力を独占し、平民や他種族を虐げた。


 あるとき、『魔王』が誕生し、文明を脅かした。

 圧制を敷く帝国に対する創造神の天罰だという説を筆者は支持している。事実、魔王の最期を知る勇者とその一行は、創造神の関与を証言しているからだ。

 フィル=アッハ教やホーングレン派は、魔王は悪の化身であり人類の敵であると弾劾しているが、彼らこそ不正と腐敗の温床であった。


 しかしながら、帝国が召喚した勇者本人によって、魔王は速やかに退治された。腐敗や矛盾を抱えつつも帝国の支配は、盤石にみえた。



 ところが、その勇者の反乱によって、国が割れることになる。

 これはのちに、解放戦争と呼ばれ、一神教、ヒューマン至上主義との戦いだったといわれる。


 だが、時が経つにすれ当初の理想は忘れ去られ、単なる権力闘争へと変じていった。

 血で血を洗う凄惨な内乱は、魔法文明を衰退させた。帝国は、暗黒期を迎えることとなる。


 一方、勇者は失意のうちに王女とともに帝国を去り、人跡未踏の地、東方フロンティアへと向かった。

 未知の強大な魔物が住み着く大森林とそこにたどり着くまでの不毛な大地。大地は農地に適さず、大森林は危険が大きい。

 開拓は困難に思われた。――が、驚くほど順調に進んだ。


 その原動力となったのが、『精霊魔法』である。

 記録によると、勇者が世界最初の精霊契約者であった。我々精霊国人にとって、記念すべき日であり、精霊記念日として祝っているのは周知の事実であろう。


 新たな暦、精霊歴の始まりでもある。精霊魔法はすぐに開拓民へと広まった。

 精霊の力によって、開拓団は大きくなり、精霊国の礎となった。


 特に、開拓初期の精霊使いは、強力な使い手ばかりで、多くの英雄を輩出した。

 賢者アルバ・シュミット、聖女エリー、大商人グレゴリー・ホープウッド、鬼神エディン・フィル・デュランなど枚挙にいとまがないほどだ。

 

 人の善意を司る精霊は、我々に大きな恩恵をもたらす。

 種族差別も奴隷もない。精霊の前に人は平等なのである。衰退する一方の野蛮な帝国人とは好対照だ。

 もはや精霊魔法抜きには、現代世界を語ることはできないだろう。

 

 ――――そう、第四文明の幕開けである。

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