第14話 協力者
先日の第三関門において不思議な夢を見ていたことを思い出す。
第三関門の中に入って最初に思ったことは今まで眠っていたのだろうかということだった。だから、関門に入って一番最初に得た感覚は目を覚ましたということだった。あの場所は一体どこだったのだろう。
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「懐かしいね、あるな」
その声を聞いて、何で君が出でくるのさ、と開口一番に発していた。そこにいたのはかつての澤奥兎洞だ。
さあ、僕にも未来があったってことなのかな。うん、あったのかな、こんな幸福な未来は。そう言って、目の前に映った幸せそうな、/悲しい風景を2人して見ていた。
「いいな、こんなに幸福だったら君に生きることを譲っていたら那古も蓑輪もみんな笑顔で入られたのだろうか。」
その風景で1番印象に残るのは那古の笑顔だった。1度も見ていないのだ。この、僕の目的に関わらないように遠ざけたものだった。そのために引越しさえした。だから、同盟の集まりの場に彼女がきたときはどうして、と思ったのだ。
「幸福だから正しいとは限らない」
そう君は知っているだろ、と澤奥兎洞は僕に語りかける。それに、と続けた。君は生きることを諦めるつもりなんて毛頭ないんだろ?無言を持ってその問いかけに答えた。「よかった」と彼は言った。そうでなければ君を殺していたかもね。「温和なきみが?」僕は笑いながら答える「そうだよ」その声は聞いたこともない声だったから、本当は生きたかったのでは、と推測させることに十分だった。幸せじゃないかもしれない、死にたいと思うかもしれない。けれど諦められないだろ、とかれは僕の後ろに座り込む。
「こうして座っているとさ、なんか安心しない?」ひどく優しい声だった。
「諦めることができなかった」と僕は呟いた。
そうだね、と返ってくる。
「それでいいんだよ」
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「蓑輪はどのみち僕を鬱陶しがっているだろうし、乗末さんは確実に僕を殺したいだろう。エアレスケイアは蓑輪の仲間だからこちらについてくれる線は薄いしなあ」とぼくは後ろの彼に向かってる呟く。
「那古はしらない」それに、那古はあまり巻き込みたくない。
「那古は見ての通りあのような性格だからね」どうひっくり返してくるかわからないよ、という言葉が微笑んでいる感覚を持って伝わってくる。
でも、もしかしたら、あんな淡い希望が頭をよぎる。
味方になってくれる、なんてそんな希望は持たない方がいいーーーー
「きみが先ほど見た未来は澤奥兎洞という人物のものであり、」
きみのものじゃない、と後ろの彼がつぶやく。僕たちは同時に2つの風景を見ていたことは気づいているね?と澤奥兎洞は言った。
「幸せだけに目をくらまされてはないよね?」
わかっているよ、と僕は返す。先ほど見た、もう1つの夢、それはあるなという僕の未来。その光景は独りでいる僕だった。
けれども、「乗末さんに頼んで見なよ」思考を始める前に後ろから声が聞こえる。君はどうして前回の同盟の際に生き延びたの?それに、君は・・・その言葉を遮って、言葉を出す。
「お見通しなのかな、」僕は笑って問いかけた。
「ある種、怖くて決め切れてなかったんだ」
もう大丈夫だよ、と言って
どうして君はこんなに僕に協力してくれたのかな?と問いかけた。けれども、その答えを聞くことに少しの恐怖もあって、返答を聞く前に言葉を続けてしまう。
「今回は君にお世話になっちゃったな」少し視線を下げながら声を出す。そういうと、僕はね、実際君に言いたいことがあったんだ、と澤奥兎洞はこちらを向いて手を伸ばした。
「何も言わない、行動しないってことは自分の選択肢を狭めるってことだろ」それがあまりにも勿体無く見えたんだ。そう言った。そしてほら、と手を伸ばす。
「握手しておこう?僕たちは仲間だよ」
ああ、そう言って僕は一歩を踏み出した。
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兎洞は元気でやっているのだろうか。
そうぼくは窓辺から空を眺めながらかつての旧友を思い浮かべる。
澤奥兎洞。いつも心あらずといった感じで、何か不幸なできことに直面してこちらに越してきたのだと聞いていた。
空を眺めることが好きだった文学少年。
いや、文学少年をいうには早計だったかな、と僕は思った。
だって彼の本を見ているときはあまりに辛そうだったから。
「また会おうぜ。もしこの街に来ることがあったら教えてくれよ。一緒に食事でも行こうぜ」
「ああ、そうだね」とかわした言葉もよく覚えている。
願うならどうか、幸あれ、と。僕は空を眺めた。
彼はこの空を何と形容したのだっけ。ふとそんなことをを思いながら空を眺めた。
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乗末さんと歩いていてふと安心する。乗末さんは僕に協力してくれそうだ。これなら僕の望みも叶えることはできるし、彼女の望みも叶う。プラマイゼロだ。
「あああああああもうぱーっとしない!」と後ろから声が聞こえる。何事だ?
隣の乗末さんを見るとため息をつきながらその声がした方向を見ていた。
「やっと出てきたか那古。」
蓑輪のあの変な調律能力?を見たとき冷や汗をかいたぞ。と乗末さんは那古に語りかけた。一方僕は、え、いつからいたの?とそんな声を出す。当の本人の那古はそんな言葉を無視してこちらに歩み寄る。
「何が起こってるのかさっぱりなんですけど、どうして乗末さんは蓑輪と敵対してるんですか、どうなってるのか説明してくださいよ!」
こんなのに興味はないんじゃなかったのか?那古、と不敵な笑みを浮かべて乗末さんは問いかける。
「いいから話して」
くっくと乗末さんは笑うと言葉を発した。手を僕のいる右手の方へ指し示し、
「私の目的はこいつを処理することだったんだが・・」
説明の途中に、ちょっ何言ってるんですか!と甲高い声が響き渡る。
「あれ、聞いてなかったの?」と僕は那古に問いかける。自分のことが話されていてなんだけど。那古は教理聖堂の構成員では無かったのか・・・?
「なあ那古。答えたくないなら答えなくていいし、とても那古に失礼な質問をするんだが」
「何?」
と那古はこちらを睨みつつ振り向く。ごめんねと思いつつ質問をする。
「那古は教理聖堂の構成員じゃないのか?」
「は?昔お世話になった人が教理聖堂の弾きものでその繋がりでお手伝いやってるだけよ。今回のは兎洞がいるって聞いたから・・・」
「僕?」
なんでもない、という言葉がとても重力というものを持っているようだった。僕は黙って彼女の言葉を待つ。
「知り合いがいたから私いたらべんりですよ〜?っていってついていっただけ」
「ついていっただけ」
僕は繰り返した。
「だから、兎洞を処理するつもりだったとかそんなこと知るか!んなこと行われるなら最初から協力してないわっ!」
ああ、嬉しいな、と思っている横で乗末さんの声が聞こえる。
「そうだろうなあ、だから秘密裏に行うつもりだったんだが那古が自ら興味ないって言ってくれて嬉しかったんだが」
んなことで嬉しがられてたまるか、と地面を足で何回も踏みつける。
「でもそれは無くなった」と乗末さんは続けた。
「へ?」
「こいつ人間じゃないから下手に殺すと蘇生するらしい。けれども、こいつが自身で僕はのちにいなくなるのでその時を見てくださればというから・・・」
ちょっちょっちょ!!!とまた那古の声が聞こえる。
「信じたんですかその話・・・」
と見たことない表情で乗末さんに問う。この表情はあなた本気ですか、ということを考えている表情だ。加えて僕の方も睨みつけられる。ごめんね〜那古、心の中で思う声も緩くなってしまうのだった。
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「まあ、わかりました。」
それでもうその考えに同意しますと投げやりな態度で僕たちをみる。でも、少し僕には疑問があった。ゆえ、那古に質問をする。
「君は僕を憎まないのか?」
「は?流石に憎いからって殺したいと・・・思わないことはなかったけど」
無かったのかと僕はツッコミを入れてふと考え込む。
「人が何考えていようともういいわよ、あなたはあるなだし」
続けて言った。
「兎洞は優しかった」
うん知ってる、と僕は答えた。
「最後の関門で助けてもらったからね」と付け加えて。
その答えに些か疑問の色を見せながら那古は言葉を発した。
「私もね、夢の中で現実と見間違えるほどの夢を見たの。その人柄を見たわ」
その言葉に、へえ奇遇だな、と僕は切り出した。君にも僕と同じように過去の人間と話せたんだね、と。那古は今にでも舌打ちをしそうな顔でこちらを見た後にふと呟く。
「かっこいい騎士様だったわ。」
へえ、と僕はから返事をする。
那古は続ける。だけど彼の願いを叶えることなんてできない。私には私の人生があるんだから。
「彼の思いは強かった。正直、同情したわ。未練ってああいう事を言うのね」
そう言いながら那古は自分の髪の毛を触りながら言う。私自身にも価値があるのかわからなくもなってたし、と那古は続けた。
「価値・・・?それはどうして?」
みんなは言うじゃない。友達はいた方がいい、明るい方がいい、積極的で優しくて分け隔てなくて差別なんてない人物がいいって。当時の私はそれとは程遠かった。それよりは、ああ言う人の方が、みんなにとっては有益なんだろう、といった。そんな時に現れたのが師匠で・・・とつづけた。
君をを助けてくれた人、その人を尊敬してるんだね、と僕は言った。
「ええ」
と那古は返す。その人と話したの、魔法を見せくれたわ、その人は魔法のことを調律って呼んでた。気になる言葉を聞いたところで、で、と那古がこちらを見てくる。真剣な表情で。なんだい、と問いかける。
「さっきのあるなの言葉で気になったことがあったの。兎洞に助けてもらったって言ったでしょ、でもね、それはないのと思う」
どうして、と僕は問いかける。
たとえ何かの関門だとしても兎洞があるなになった時点でその人格はいなくなるの。どんな関門であっても、その人物はもういないのだから。
へえ、と聞く。でも関門はどのような仕組みかわからないからまた違う仕組みで動いているのかもしれないね、という言葉で会話が終わる。
そうして、那古は乗末さんと僕の方を振り返って問う。
「で、テイアはどうなったの?」
行こうとしたところで同盟が決裂してなあ、と乗末さんは言いながら僕を見る。
「でも、君はこないっていったんじゃないか?」僕は問う。
「いや、行かないといったのは事実だけど・・・」といいつつ、いや分かれよ、と僕を見てジト目でいう。乗末さんと僕の現状がわかって落ち着いたのか、
「あるなのそのボロボロの格好は蓑輪の攻撃のせいだろうけど、そもそも同盟決裂って・・・それにテイアの話も、とりあえず次は同盟の現状を話して」と那古はこちらを見てきた。隣を見ると乗末さんは笑いながらこの光景を見ていた。
「いいんじゃないか、状況の整理になって」
それに、お前ついてくるだろ?と那古の方をみる。もちろん、その声を聞いて僕は苦笑いをした。
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「ちょっと何してるの蓑輪!あの子放っておいていいの?」
「本来私がどうこうすることでもないのよ」
そう言ってテイアへの道を歩いた。
「どうして処理しないのよ、あの子さえ消せば面倒ごとはなくな・・・」と言ったところで何か考えることがあったのだろうか、ひどい人ね、という声が聞こえた。
「私でもまだやりたいことがあるの・・・だからいいわ」
とその声は慰めなのか否か。
「・・・でも。このままテイアに戻っちゃっていいの?」
という質問を聞く。
「いいの、だって彼らも来るだろうから。」
「・・・」
「どうして話さなかったのよ、」
「私にそのようなことを言う権利なんてないわ」
「権利なんて誰が定めるものでもないでしょうにね」
そう言ってかつては感じることができた道筋を歩く。
結局私は何を望んでいたのだろう?
「にしても心地よいぐらいのバラバラ同盟者だったわね・・・私たちと教理聖堂グループに分かれていたじゃない」隣の彼女が言う。「そんなものよ、もともと」人間なんて、と呟きかける。
けれど、と考えた。そんな混乱を拒んだのは本当に私の意思だったのかな、と言う私もいた気がしたから。
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お前の予測は当たった。だから何もいうことはないが、と乗末さんは切り出した。どうして自分に協力を申し出ようとしたのか。それは蓑輪ではいけなかったのかということを僕に聞いた。
「僕、蓑輪に聞いたことがあるんです。枯れない花と、枯れる花、どちらがいいのか、と。彼女は枯れない花の方がいい、と答えました。それはいいんです。僕も枯れない花の方が好ましいといっても嘘になりません。しかしその後に彼女は続けました。何もかもが決まっていて、緻密に計算せれた上に成り立っていて欲しい、と。何もかもが差し引き0で決まっていて、不幸もない世界がいい、と」
僕はさらに続ける
「その時点で僕は蓑輪の考えと僕の考えは決別してしまったのだな、と思いました。」
かつて、彼女が何のためにテイアへ行くことを欲したのかはもう今はわからない。彼女がかつてどんな望みを持って、どのような理想に自らを殉したのかもわからない。僕はその時、どうしようもなく幼かった。
「・・・ありがとございます、乗末さんそれに那古」
僕に協力してくれて。そう言って僕たちは先へ進んだ。
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