第3章
第11話 第三関門/終焉
今回はみんな集れたね、と僕は言った。
「今回は楽しそうじゃない」
蓑輪がそう笑いながら言葉を出す。あの笑い方はからかっている、とかそういったものだ。「幸せそうね、よかった」というより「へえ幸せなんだ」と言うノリだ。
「まあ、今回のはすぐに終わるだろう、」と乗末さんはそんな雰囲気を崩すように割り出した。
「そこの森だもんねー」と那古はお菓子を食べつつ話に加わった。
なぜお菓子が。そう思いつつ、もう一人を見る。エアレスケイア・・・。
彼女が持ってきたものなのだろう、那古とエアレスケイアの二人は楽しそうにお菓子を食べつつこちらの会話をきいていた。
「・・・あの深い森か」
心底憎たらしそうに僕は言う。那古もその言葉と同時に口を黙らせる。そこはかつて僕たちが事故にあった、あの森であったのだから。
重い雰囲気を打ち破るように、その発端となった僕は「まあ、行こうか」と声に出した。僕たちが過去にあの森で事故にあったということをこの3人は知っているのだ。エアレスケイアは知らないだろうけど。知っている蓑輪と乗末さんは言いにくいだろう。だから、・・・
「関門に行くのであって、森へ行く、と言う名目ではないものね」と蓑輪が助け舟を出してくれる。
チラリを那古を見ると、寂しそうな顔をしていた。
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乗末さんと那古と教会を出て、目的地へと着いた。
「じゃあ行ってくるよ」と、何気無いふりをして僕はその森の奥へと足を運ぶ。
一人になって歩いた。まるで樹海だ、と思った。帰り道の方が気になってしまう。これから僕は最後の関門に行くのだと言うのに。周りの風景を見渡す。あの日の記憶を思い出してしまう。僕が事故にあった場所もこのような気に囲まれた場所だった。第一関門で見た、あの森と瓜二つだーーー関門というものがどう言う仕組みでできているのかはさっぱりわからないが。まあ、説明することなんて不可能だろうーーー多分これは第一世界のものだから。
さて、と僕はその関門の入り口にたしまるでスキップをするような形で・・・まるで鼻歌でも歌うような陽気さでその中へ入って行った。
きっと関門は慣れたものであった。今度も幻影かな?関門と言いつつ、僕にはこの関門が全く関門とは思えなかった。この場所と一致する言葉は関門、で正解なのだろうか?
そんなことを考えているといつもの如くあり得ないものが僕の前に現れてきた。ふふ、と笑ってしまう。未来なんてものはすでに覚悟してこの選択をしたのだ。過去に戻りたいと思うことは何度だってあるよ。けれども戻りたくない過去もある。いいや、違うな・・・僕がそれでも時を進める理由は、抗わない理由はね、未来に”未知”という救いを求めるからだよ。
でもね、という言葉が聞こえた。その続きはすでに知っている。
「そうだね、未来、僕は一人になるよ」
話しかけていた。相手を言い伏せたかったのか、それでもただ聞いて欲しかったのか。
「仕方ないことだよ、僕だって彼らを謀ったんだ。」
だから、彼らに裏切られてもいいというのかなあ、という声も聞こえた。
仕方ないことだよ、と紡ぐ。この場所でなくたって、僕たちはみんな別物なんだから。
仕方がないことだけどそれはとても苦しいことだね。そうだよ、とその言葉に答えた。うん、そうだね僕はそう思うよ。
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「クリアだよ」
僕は関門をクリアして、乗末さんと那古の待つ場所へと帰っていた。
「今までありがとう、乗末さん、それから那古も。」
先に言いたかった。言葉にしなければ僕の心がやまなくて。
同盟者だから当たり前だろ、と返事をされ、いつものように教会へと歩いて行く。あとはテイアに行くだけ。そしてその瞬間が”僕”と言う人物の終わりだ。
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「蓑輪ーっ」
明るいと言っても良いのかはわからない、けれど色々な感情が混ざり合った声がした。
「あら、どうしたの?アルベチーヌ?」
私はアルベチーヌの言うことを予想しつつもソファーで本を読んでいた。
「同盟期間終わったでしょ?」
だったら、私の出番よ、と私の数歩先まで歩いてきた。
「まだよ。本質は終わっているとしても、彼らがここにくるまでは終われない。」
それもそうだったわね、とアルベチーヌは私の隣へと座って背伸びをした。
「あーあ、こう言う時ってどうしたらいいかわからなくなるのよね」
とある重大な出来事の前。ただ時間だけがある時。
その時間をその出来事のために有意義に使うんだなって、まるで余命を宣告されているようで・・・どうも息苦しくなる。そのような言葉を聞いた。
懐かしい感覚が蘇る。私は本当閉じて、窓の外をみる。つられたのか、アルベチーヌも後ろを向く。
「ねえ、あなたにはあの文様どう見える?」
あえて”彼女”へ聞く。
「あの文様は私たちの軌跡でしょう?」
「・・・その私たちって誰なんでしょうね」
少し思いふける。彼らが帰ってくるまでに・・・
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さて終わったね、と僕たちはいつも通りに教会へ集まる。
教会に入った瞬間、蓑輪とエアレスケイアのお疲れ様、という言葉と
テイアへ至るにはトネに行くことが必要よ、という言葉を聞いた。
「は?トネに二回もいくならトネの関門最後に持ってこればよかったのに。・・・めんどくさい」
「2回目の観光ができるね」
と僕がなだめるように言うと「あんたはうっさい」と言う返事をもらった。うーん難しい。
「まあ短期間に行くことになってしまったものね」と蓑輪は苦笑いして言った。まあ、と乗末さんはいい、
「サワオクも疲れているだろう?行くのはいつがいい?」と僕に問いかける。
僕はふと覚悟を決めるように手をぎゅっと握って「全く疲れていないので明日で構わないですよ?ただ、ちょっと留意しておいて欲しいことがあるので、乗末さん。このあと少しお時間いただけますか?」と答えた。
「・・・」何か蓑輪の視線を感じた。その視線を
「んーー私たち守護する役割だもんね」と言う那古の言葉が破って行く。
「ありがとう那古」反射的に感謝の言葉を述べてしまう。那古は私なんかありがたがられるようなことしたっけ?って言いながら座っていた足をぶらつかせた。
「いいよ、」と乗末さんから返事をもらう。
「でも、そうだなあ出発は明後日にしよう?」と那古は提案した。
兎洞だけじゃなくて私たちも疲れてますし。と言って周囲を見渡す。
「いいと思うわ。」とそう言ったのはエアレスケイアだった。
ね、みんな異論ないでしょ?とその声で明後日に行くことが確定した。
そうね、と蓑輪が声を出した。それじゃあ各自準備をしてね。・・・解散。そうして今回の話し合いも終わって行く。
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