第8話 都市

ふうん、やっぱり本当に妖精と取り替えられたのかどちらか・・・

そんなことをつぶやきながら、ノートを片手に私は華やかな街を歩いていた。

こちらは快晴。道中も快晴。

私的な予定は夜だから、昼前の明るいうちは観光という名目で街中を歩いていた。

見事だ。あの村では見慣れないものばかり。もちろん、村を貶める気持ちなんてありませんけれども。


そうして私は彼の家へ着いていた。

今、・・・私は兎洞の両親と話すことができていた。

ふと、ここに至った経緯を思い浮かべた。

まず最初に、彼の、兎洞の家へ行った。兎洞の中学校の時の友人です。お話をききたいのですがというと、彼の両親は快く受け入れてくれた。

彼らから、お茶を出されて幾らかの世間話をしたあと、現在の話へとなった。

兎洞自身は彼らからとても心配されていて、それでもって大切にされているなということが明確に理解できた。その癖にあいつは誰も自分のことを理解してくれないと言わんばかりの態度。であったときから腹が立って仕方がない。事故の影響だよとかいう前に自分の身の回りをみろ。理解しようと努めてくれている人から目をそらすな。

でも、という声に意識が戻される。

「でも初めのうちは戸惑っていたね、食器の使い方がわからない、友達と関わろうとしない」

食器?もの全般か?

「確か・・・あの事件の後転校したとのことでしたね。生活様式など変わったのでしょうか」

気分を悪くさせないように質問をする。

「そうだね、あまりに暗くて見ていられなくてね。・・・使っているものはどこでも変わらないと思うけどね・・・同じ国だし」

そうですよね。でなきゃ、この場所に住んでいない私も使い方がわからない、ということになりかねませんからね、と答えた。彼らは続けて答える。

「だいじょうぶかい?と尋ねると事故が悲惨だったんです、の一点張りで」

「私も性格や好みに対し質問するとその返答ばかりです」最も。それはただ私たちのただの記憶で、押し付けているということにもなるのだろうななどということも考えていた。そういえば、と彼らは続ける。事故の後興味の方向が変わったね、と言い

「あの子は古代の歴史に関して強い興味を持っていた」

と答えた。物語を書くのが好きだったけど、そんな夢空事だけでは現実に負けてしまうと思ったのか、歴史に興味を持っていた、と彼らは言った。

別に本を絵空事であるとは私は思わない。けれど、その受け取り方はそれぞれかな、そんなことを考えていたら彼らは言葉を続けて言った。

「本を読んで泣いていた時もあったよ、あとは言語・・・それらに関して強い興味を持ってた。そんなに興味があるのなら高等機関へ行ってもいいんだよ、と行ったのに断った。僕が知りたいことは全て知ることができましたから、」と。

話を聞けば近くの高等機関へアポイントをとって行っていたそうだ。なんという熱意と意欲だろう。内向的だった兎洞からは考えられない。

「どこからそんな思いが湧き出ているかは知らないけれど以上が変わった点かな」と彼らは言った。もう良い頃合いだ。ありがとうございます。と礼をして私は宿泊先のホテルへと帰った。


兎洞の両親は良い方々だった。本当に、良い人じゃないか兎洞・・・。

そう思いながら歩いていた途中。

「すみません」と誰からが声を掛けられた

「はい?何でしょうか?」

めんどくさいな、と思いつつふる笑顔で答える。

「澤奥兎洞のこと探ってたようですが」

知らない男性が目の前にいた。考え事をまとめたくて私は早くあっちへ行けと思いつつ対応する。

「そうですが?何か・・?」

僕は、とその人は続けた。

「僕は、澤奥兎洞の友人です」

ふーん友達なんていたんだ。

「いましたよ」とその男性は答えた。

うん?と思い返事をする。

「へ、私声に出てた?」

「いや、そんな顔をしていたので」

違いましたか?と温和な態度で答える。

ああなんだかめんどくさい。

「・・・私は畦倉那古です。兎洞は私の同僚・・・みたいなものよ」

へえ、だったら聞きたいことがあるなあ。どうですか、喫茶店で、と紳士的に、振る舞う彼の姿はどこか見たことがあるような姿で。

なんだかしてやられたなと思った私は、何か一つでも報酬を手に入れなければこのイライラが収まらなくなっていた。

「だったら、澤奥兎洞の知っていることについて話しなさい」

私も現状の兎洞について話すわ、と言い、その兎洞の友人とかいう人物の提案に乗った。



兎洞の友人と話を終えて、ホテルに着いたら私は恨みをぶつけるような意図を持っていたのかベットへ倒れ込みまず最初に枕を殴る。

「にしてももう少し疑い持ちなさいよあの親!どこからどう見ても人格変わりすぎでしょうが!」

ただの善人か、幸せ者か。この感情の行き場をどうすればいいのかわからない。それゆえ、私から見ても叩かれているまくらがかわいそうになっていた。うあーっとなってまくらへ顔を埋めた。と、同時に机の上の時計を見て飛び跳ねる

「あ、時間・・・!準備しなくちゃ」

予定外のことが起こって時間がギリギリになってしまった。私はバタバタと準備を始める。さあ、今日はどんな夢を見れるかな・・・


:::::

教会の自室にてユラユラと振り子を揺らす。いまの私はなんという顔をしているのか。畦倉那古は元々兎洞の住んでいた土地へ行くと言っていた。毎回ご苦労なことだ。そんなことをしてもいまある違和感は変わらないのにな、と心の中でつぶやく。そして私、蘇我品蓑輪は手元の振り子に目を移した。

今まで考えていた考えを中断して手元の作業に集中する。次に行く関門の場所の順番ぐらいは私の独断で構わないだろう。途中経過の順番を気にしてても結果は何も変わらない。少なくとも今回の件については。

「ねえ、昔もこうやって調べてたの?」

アルベチーヌが横に座って興味深く眺めてくる。その声にいいや、と否定を持って私は答える。昔はこんな補助器が無くたってわかったよ。とこたえる。・・・少なくとも私なら。

「随分と自信家なのね」と微笑みながらアルベチーヌはいう。

「ええ、かつての私においては自信があるわ。」

一拍おいて私はアルベチーヌに問いかける。ねえ、世界は変わったわね。

第一世界においてはここまで電子機器は発展してなかったわ。便利になった半分、本来の技能は失われてしまっているわね。

そうね、と彼女は答える。

「本来の目的がなんだったのかなんてもうわかる人の方が少ないでしょう。・・・察しのいい歴史家や人類学者それ関連の人でもなければね」

私はずっとこうして昔の伝統を受け継ぐことをしてきたの。だから、そうね・・・なんて言ったらいいのかしら・・・・言葉を探す。そんな最中声がかかる。

「ねえ、見て蓑輪」

考えを中断して振り子を見る。ああ、なるほど。そこだったか。そう心の中で呟いて、彼女にも聞こえるように声を出す。

「場所はこれで確定ね」

複数あった候補地が残りの2つに限られていた。これで私の仕事も終わりかなと背筋を伸ばす。と、何か冷たいものが私の背筋を凍らせていた。

「どうしたの?」

アルベチーヌにも私の感情が伝わったのだろう、不思議そうな目でこちらを見る。例の持病よ、少し休むわと言って私はふらつく足取りでベットまで行って倒れこむ。そうして、ベットの中で電子鳩に手紙をつける。

「乗末と兎洞のところへ飛ばして」

準備が終わり、私のするべきことは終わった。アルベチーヌは元気だし、私が準備するべきもそうして私は眠りについた。

:::::


自分の予定から帰ってきて通信機を見ると着信履歴が残っていた。二件。

1つの名前は乗末さん。

深夜に電話しちゃまずいし、明日の朝にでも掛け直すかと考え、通信機を机の上におき、シャワーを浴びてベットへ入る。どうか良い夢が見られますように。

そうして起きた次の日。

私は帰り道の馬車の中で私は乗末さんに電話をしていた。私は乗末さんの補佐という形で蓑輪と兎洞と乗末さんの、3人の同盟に参加している。

「乗末さんどうしたの・・・・?ってはい?次の場所がわかった、と。なるほど・・・残りの場所までわかったということはもうこのような時間・・・」

何か不思議に思ったのか、乗末の言葉に、いえ、この同盟が続けばいい、という意図はないと弁明して話を続ける。なるほど、次の場所の位置がわかって帰り次第そちらに出向くと。

「なるほど、私は今から戻ります」

その言葉に、そうか、じゃあ道中気をつけてな、というそっけない言葉で通信が切れた。

しばらく通信機を見た。そしてため息をつくと、通信機をバックへとしまい、空を眺めた。

「大きな鉄壁よね、あれ。」

ああしまった、口に出してしまっていたようだ。兎洞はあの空が好きだった。多分、大方の人が好ましいものとして見ているのではないのだろうか。だからだろうか、天邪鬼だったのだろうか、私は空なんて興味ありませんよーっという態度を取り続けていた。今はどうだろう。今は・・・とても城が空に浮かんでいる気がするのだ。身を守り、そして相手を拒む城・・・

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