第3話 第一関門
目の前の何かに向かって僕は言論した。そのしっぺ返しだろうか
捉えようのない思いが広がって来る。
「うっ・・・・」
と僕は思わず声を出し考える。
これは誰のものなのか。
こんな状況を抜け出したい。そもそも、こいつは今までの光景を正しいと思っているのかどうか。僕が選んだ選択を否定するか、お前は。まだ痛みを感じる身体を起こして僕は声を出す。
「なあ、知っているか?間違っているとしても他人の意見を捻じ曲げたりも仕込んだりはしてはいけないんだよ。なぜかわかるか?そうすると1つの意見しかないことになるからだよ!」
そう叫んでからすぐにまたその重みは痛くなる。体が潰されているんじゃない、心が潰されている感覚がする。心、は何かの薬で治されるものではなく、自らの光によって導かれるのだと僕は思う。
「ぐっ」
状況は改善しない、言論がその火種だったのなら、この結果はあたり前のことだ。僕は火に油を注いだか・・・。ああもう、抵抗なんてしないよ、勝手にするといい・・・××!。そう心の中で叫んで地面に横たわる。・・・そうだね、お前はいつもそこにある。
「ああ・・・綺麗だ」
そういって僕は目の前の風景にいつものように惹きつけられた。
僕はこの風景が大好きだったのだ。
::::::
「乗末さん、兎洞は大丈夫でしょうか」
私は畦倉那古という。ここで私、那古とその上司、乗末さんは兎洞の帰りを待っている。
そっと空を見た。その風景は何か懐かしいものを思い出させた。
ねえ君、明日は雨だね。そんな言葉で始まった日だったと思う。
その日は晴れ渡るぐらいの晴天だった。だから師匠のその言葉を信じていたわけではなかった。でも、師匠の言うことは必ず当たったのだ。
「へ?そうなんですか?師匠?」幼い日の私はそう答えた。
そうだよ、だから、と師匠は続けた。けれど、その途中に兎洞が私を探しにやってきたのだ。
「あ、兎洞だ」
「君の友達かい?」
そうです、と私は少し期待をしながら答えた。
この人が何かに興味を持つなんて珍しいなあと思ったから。
そっと師匠は私の額に手を乗せた。そして、離し、ほら、行ってきなさい?と背中を押してくれた。
「兎洞くんと遊んできなよ。僕はまた会えるんだからさ」
その次の日だったな、と思い出していた。
あの日から私の日常は変わってしまった。
師匠が言っていた、天気予報は当たった。とても大雨の日だった。
「心配か?那古」
乗末さんのその言葉で意識を戻す。
「どうでしょう」
よくわかりません、と私は返答した。実際どっちでもいい・・・私はどのみち合わせる顔がない。
::::::
これは僕の相だったのだろうか。空を見るのが眩しくなってきて、体を横へ向ける。
「・・・知ってるよ、僕もきっとそっち側にも行きたかった」
誰に話しているのかはわからない。その何物かなのかもしれないし、もっと古い独自なのかもしれなかった。
目を閉じて、思い出す。数々の出来事を。時代が変わっても人は変わらないんだなあと思ったことが最初の感想だった。
目指したいものがある。けれど、それは遠くにある。
怖い。恐ろしい。1人だ。ずっと。
ふと暖かい感触。・・・そうだったね。僕はもう1人ではなかった。
もう、思っているだけでは伝わらないもんね、そう思ってなんとか声を出す。
「いいや、違う」
そう言って顔を上げた。
そら。満天にかがやく彼らの願い。忘れられない出来事。誰かのために願った風景・・・僕はこの光景が大好きだったのだ。
「・・・」
目の前に映るもの、それを目に焼き付けた。
懐かしさ、愚かさ、希望願い・・・そんなものが伝わってくるのだ。
だから、僕は歴史を無視することなんてできなかった。
「僕に力をください・・・」
そうつぶやいて手を伸ばす。
それはまるで何かを支えるかのように。
ーーー微笑む少女。懐かしい影。戻らない時間。
ーーーー本当に、大好きだったもの。
・・・ふと一瞬懐かしい影を見た。
「つっ・・・」
ふと目頭が熱くなる。
それを隠さず僕は目の前の景色に集中した。
大好きだ。
きっとそれは違う感情なんだっていう声も聞こえるけれど。
そして、突然僕はふと座り込んだ。
幾つも映っては通り過ぎていく現象。・・・それを、絶対に手放さない。手放してたまるものか。
僕は、僕の願いを叶えるんだ。
懐かしい感覚がした。僕は涙を拭いてちゃんと自分に異常がないことを確認してから洞窟から出ることにする。
:::::
ぼくは花束を抱えていた。この道の先に彼らの碑があることはわかっている。けれど、今更どうして、自分だけがその場所に行けようか。
もういいんだよ、と声をかける。
そして僕は明るい声で何かの言葉をかけた。
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「これで第一関門はクリアかな」
周りは岩場。そう、僕は洞窟へ入って言って、そこできっと今までの・・・幻覚のようなものを見せられていたのだ。幻覚こそが、あの深い森。そうだ、僕たちは今トネという岩の街にいるのだから、この近辺に森はない。
そもそも、幻覚で現れた森はいま僕たちが来ている場所より遥か彼方にあるのだから、その時点でおかしいと気づけただろ、と顧みた。まあ、幻覚の前にそれは傲慢というものか。
「まあ、少し休んでから行ってもいいだろ」
那古や乗末さんの元へ行くのは少し休んでからにした。懐かしい風景を見た。僕はその風景へたどり着くことはできますか?
そんなことを言って、洞窟の中で少し寝転がった。
残念だ。ここではあの空が見えないーーー
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