星
森のどこか、白い花のような青年はたった1人でその道を行く。
いつも浮かんでいた場所をこんなに離れたのは初めてだった。すこし肌が乾燥するけど、森の土は湿っていて思ったよりも心地よい。
どれだけ歩いただろう。別に弱い肉体じゃないからいくら歩いてもさほど問題は無いが、宛もなく歩き続けるのは気が遠くなる。木々によって太陽の光が遮られてるここは、花たちの鮮やかな色が全く無く、孤独感が増してゆく。
そんな気持ちを抱えたままひたすら歩くと、不意に自分の視界が明るくなるのを感じた。上の方から光が差し込んでいる。 段々と強くなるその光に思わず目を細める。
「あ〜らま、勘違いだったか〜」
突然光が消えると今度は声が聞こえる。
「……?キミは……?」
「君こそ何者だよ〜、紛らわしい雰囲気出しちゃって」
赤と黄と白と黒がキラキラと光る不思議な瞳の青年は、トンと地面に足をつけながら答える。
「キミ、ニンゲンじゃないね」
「君こそ〜……ニンゲンじゃない、でしょ〜?」
お前から名乗れ、キラキラ光る目がおれを見る。
「……おれは“ 花”だよ」
「そっか、じゃあボクは“ 星”かな〜?」
「星?」
「そう。たか〜い空から、死んで落ちちゃったちっちゃな星たちを拾いに来たの」
「星も死ぬんだ」
「そりゃ星だっていつかは死ぬでしょ〜」
白い星のような青年はよいしょとカバンを背負う。
「君はこんな所で何してるの〜?」
「特に何も、」
「じゃあ手伝ってよ。森の中は空と違って見通しが悪いんだ。君、いつも下にいるんだろ〜?」
「ほんとは水の中だけどね」
「まあまあ、いいじゃな〜い」
白い花のような青年は諦めたようにため息を吐くと、再び森を歩き出した。
その隣を白い星のような青年は満足そうに歩くのであった。
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