美しき心中
「愛してる」
その言葉を彼が言ってくれなくなってからどれだけ経つだろう。
付き合ってから一年半。彼の口からその5文字が放たれることは無くなってしまった。
それでも私は彼を愛しているから、ぼんやりとした頭で、動きづらい口で、私は聞き続ける。
「ねぇ、私の事好き?」
重くなる瞼に必死に抵抗しながら、血まみれとなった震える手で彼の冷たい頬を撫でる。
体中を紅に染めた彼は答えない。答えてはくれない。
もう意識を保つことが出来なくなってきた。それでも彼と、大好きなこの人と、一緒にいけるのであれば、それはなんて……
あぁ、これぞ美しき心中。
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