第4話 バレンタイン

「広瀬くん、これ……。バレンタインなんだけど、もらってくれる? 」



「うわあ。ありがとうございます! ……今、食べてもいいですか? 」



「どうぞ 」


 あたしがそう言うと、広瀬くんは丸いお菓子を一つ、ぱくっと口に入れた。


「……どうかな? 」



「……ちょっと懐かしいですね。確か、トリュフトリュフチョコレート、でしたっけ 」



「あ、知ってた? ……懐かしいって、食べたことあるの? 」



「一度だけありますよ。 俺が入学したての頃、部活の体験期間あったじゃないですか。 あの時、俺、先輩が入部されてた家庭科部に一回行ってるんですよ。 その時、トリュフトリュフチョコレート作りを担当されてたのが先輩だったんですけど……。 ……その時の先輩がすごくキレイで。いつの間にか先輩を見かける度に目で追ってました。去年とかも……、いや一昨年になるんでしょうか、あの時もたまたま先輩を見かけたんで声を掛けようとしたら、後ろから車が突っ込んできたんです 」




 ――そうだったんだ……。

  って、え!?

  ……これってもしかしなくても告白……っ!?



「え!? そっ、そーだったんだー! ……あのさ、広瀬くん……今、言ってたこと……」



「え? ……あ。 ああーーっ! ちょっと! あーー! あのっ、その! ……忘れてくださいよ……。 本当はこの後に改まって切り出すつもりだったのに……。まあ、いいです。今からでも遅くない、うん。 あの、先輩。 さっきのことは聞かなかったことにしてください。 そして、改めて言わせてください。 先輩、僕は―― 」



そこで一回途切れさせ、顔を真っ赤にさせながら、それでも広瀬くんは言った。



「先輩、僕は先輩のことが好きです。付き合ってください 」


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