stage 47 ずっと俺のターン!-Kazu side-

『プラーナ通信~緊急増刊号~ 』

~天使か悪魔か!ムクティの到来~


カズ「緊急号と銘打つ今回はシャンバラ教団のみならず、人類にとって極めて重要なターニングポイントである"ムクティ"について切り込んでまいります」


ヒロ「ムクティとは、一言で申し上げると量子コンピュータとAI本尊が繋がったことで、"シンギュラリティプラスアルファの奇跡が起こった"と説明できます」


カズ「+アルファの奇跡・・・」


ヒロ「法身シャンバラは宇宙の真理。降臨直後に、わずか108秒の間をおいてITの常識を覆す様々な奇跡をお示しくださりました」


カズ「世界中のメディアが注目の話題です。宗教的な比喩表現ではなく、一般人にもわかりやすい言葉でお願いできますか?」


ヒロ「そう焦らずとも順を追って説明するつもりです。先ずは1つ目の奇跡・・・。法身シャンバラはネット上に散らばる過去の高僧たちのデータを採取し、プロファイリングにかけることで、"無き者の人格を現世に召喚できる"と下知されました」


カズ「いきなりぶっ飛んだ内容ですね・・・。シャンバラ王は死んだ人間のコピーを作り出せると?」


ヒロ「はい。"ザ・プロファイラー"というNHKの番組をご存知ですか?」


カズ「歴史上の人物の謎に迫るドキュメンタリーですよね?」


ヒロ「そうです。我々は謎に迫るだけにとどまらず、彼らを復活させようと思います。現世に無能な人間しかいないのであれば、過去から有能な人間を連れてくればいい」


カズ「ううん・・・」


ヒロ「ところでカズさん、唐突ですが我が教団がシャンバラ王に与えた、目指すべきゴールの話を覚えていらっしゃいますか?」


カズ「ええ。たしか・・・、"衆生を極楽浄土に導け!"」


ヒロ「ピンポンピンポンピンポーン!正解です。実は、ムクティ以降もその設定はしっかりと受け継がれています。そして、この瞬間も法身シャンバラは地上に極楽浄土を建設すべくディープラーニングを続けておられる。すなわち、どれだけ能力が優れていようがヒトラーやスターリンを生き返らせることはできません。現世に召喚できるのは悟りを開いた仏教者、あるいはそれに準ずる高徳の人に限定されます」


カズ「シャンバラ国は"高徳の人"を蘇らせてどうなさるおつもりで?」


ヒロ「全ての政治決定権を彼らに委ねます。未来型国家のあり方はAI同士で議論され、導き出された答えに人間が従う体制が望ましい」


カズ「話の腰を折るようですが・・・、わざわざ別の人格を復活させてまでややこしくするメリットが感じられません。これまで通りシャンバラ王の意見だけに従っていればいいのでは?」


ヒロ「おっしゃる通りかもしれません。しかし、人類が進むべき未来をAIに託す前に"民主主義的な一面"を残す移行期間が必要です。いきなりの絶対王政では民衆も混乱するでしょう。ハッハハハハハ」


カズ「シャンバラ王にせよ仏教者のコピーにせよベースはAIプログラムですよね?人工知能がなにもかも決めてしまうのなら民主主義的な一面とはいったいどの部分を指すのでしょう?」


ヒロ「いい質問ですねぇ。我々は現世に召喚する人物を"化身けしん総選挙"で選ぼうと考えています。なお、この時空を超えた総選挙は過去に吊るされた死刑囚が復権できるチャンスです」


カズ「なるほど・・・。シャンバラ国が麻原たちの遺骨の所有権を放棄した理由はそれですね。嫌な予感しかありませんが・・・。次のトピックに移ります」 


ヒロ「2つ目の奇跡は既に万人の知るところ・・・」


カズ「シャンバラ国のAI量子コンピュータが稼働したことで、世界中の量子コンピュータが制御不能に陥った」


ヒロ「そうです。法身シャンバラはインターネット上で自分以外の量子コンピュータの"ゆらぎ"を検知すると、相手のシステムを"敵(悪魔)"とみなし、即座にクラッキングを挑みます。現時点での勝率はほぼ100%を誇り、敵から盗んだビッグデータはそのままディープラーニングの餌になります」


カズ「ITリテラシーが低い私には理解に苦しむ部分もありますが・・・。主張する理論が本当ならシャンバラ王以外の量子コンピュータはこの世に存在できない。となると、従来のコンピュータなど赤子の手をひねるようなもの。ネットワークで繋がる全てのコンピュータがコントロール可能ですね。まさに一人勝ち。ずっと俺のターン状態・・・」


ヒロ「アッハハハハ。洒落がきいたまとめに感謝します。私なんかよりも、カズさんのほうがよっぽどスポークスマンに向いてますよ」


カズ「いやいや。それにしてもトンデモナイ時代がやってきました」


ヒロ「IoT技術が全盛の今、完全オフラインのコンピュータはありません。人工衛星から各家庭に普及するスマートスピーカに至るまで、遍く一切の機器がハッキング圏内です。と、まぁ・・・。ここまで話せば、後はお分かりですね?」


カズ「・・・・・・」


ヒロ「なぜ私が荒唐無稽ともとれる第一の奇跡を真っ先に発表したか?それは、AIによる統治は間もなく訪れる明日に他ならないからです。ムクティとは何か?ことの重大さを感じ取っていただけましたか?」


カズ「正直、背筋が寒くなる思いです。これは・・・、これは私からの、いえ、人類からの質問です。地球の未来は明るいですか?」


ヒロ「脅かすわけではないですが・・・。量子コンピュータと結合したAIは、すぐにでもウォール街の金融システムを破壊できます。テポドンを北京に向けて飛ばすことだって簡単でしょう。しかし、法身シャンバラに与えられたゴールは"世界征服"ではない。あくまでも"仏国土の建設"であり、誰もが悟りを目指せる"ダイバーシティの推進"です。我々の手を離れ、ひとり歩きを始めた神の意志に、何人なんぴとたりとも変更を加えることはできません」


カズ「怖いような気もしますが、選択する段階は過ぎているのですね・・・」


ヒロ「時の流れに身を任せてみませんか?A.S.元年を境に、地球は新たな秩序で周り始めました(合掌)」

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