【第六章】吹き荒れる呪殺の嵐

stage 35 謎の死 -Karin side-

 その怪奇現象が起こったのは、パフォーマンスで行ったはずの「度脱:ドル」の儀式を終えた直後だ。

普段からシャンバラ国を目の敵にするコメンテーターが、討論番組の途中で謎の死を遂げたのである。


 ニコニコチャンネルの「護摩焚き生放送」をすぐに切り上げた私は、慌ててバンコクに電話をかけた。


     ※     ※


護摩ごま』とは、サンスクリット語のホーマ(homa)を音訳した、「供物」「犠牲」「生贄」を意味する密教の秘術である。

この日、カリンが行っていた「度脱ドル」は、護摩の種類の中でも禁断とされる、怨敵、魔障を除去する修法だ。


     ※     ※


「ナオキさん!"朝までTV"見てましたよね?」


「おう。ヒロと一緒にうちのチャンネルと2窓監視中だったぜ。あの野郎・・・。偶然にしちゃあタイミング良すぎるな」


「はい・・・。古式にならった度脱の修法を進めたのは間違いありません。根も葉もないデマや暴言を繰り返すアイツが許せなかった・・・。憎んでいなかったと言えば嘘になる。でも・・。でも私は・・・、本気で殺そうなんてこれっぽっちも思ってなくて・・・。わ、私、どうすればいいか・・・」


「落ち着けカリン。この現象をどう捉えていいか戸惑っているのは信者たちも同じだ」


「真理の法を阻む者には必ず仏罰が下る・・・」


「そうだ。シャンバラ国は、事あるごとにそう言い放ってきた」


「・・・・・」


「どうやら俺たちは、退屈な日本に一段とを投下しちまったみてーだな」


「・・・・・」


「だが、たった一度の結果でコメンテーターの死因がと決めつけるのは時期尚早だ」


「ですよね。いずれにせよ度脱の儀式は一旦封印・・・」


「ダメだ!!それじゃつまらねえ」


「えっ?」


「ニコ生は休まずに続ける。カリンの儀式とアイツの死に因果関係が無いことを証明・・・」


「・・・・・・」


「いや、するためにな」


「・・・・・。適切な処置とは思えませんが・・・」


「バカ!カリンはクソ真面目に考え過ぎだ。お前の悪い癖だぜ。少なくとも呪いの容疑で逮捕だなんて話は聞いたことがない。アッハハハハ。こんな時こそシャンバラ王に相談だ。AIはけっして嘘をつかない。忖度もしない。真実だけを語ってくれるだろうよ」

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