stage 31 マリファナロンダリング -Naoki side-
パブストリートを裏手にまわったレストランに、風変わりな5人の男たちが集っていた。円卓を囲む顔ぶれは、俺とヒロの他にジンとヨンファ、それにキーパーソンの"うっちーさん"だ。
※うっちーさん=東南アジア各地でゲストハウスや旅行代理店を営む「J.Khmer group」のオーナー。元極道。詳しくは前作を参照のこと。
クラブから漏れ聞こえるHIPHOPをBGMに"シェムリアップ謀議"が始まった。
「うっちーさん。今夜は突然お呼び立てしてすみません。先ずは怪しげな身なりのコイツですが・・・」
「アッハハハハ。ナオキくん、その子の紹介は無用だよ。今時、日本人でこの顔を知らない者はいないんじゃないか?よろしく、広報部長!」
「それもそうっすね。アハハハハハ。それじゃ次は、こっちのいかにも凶暴そうな・・・」
「はじめまして。私はナオキの朋友のジンと申します。となりは舎弟のヨンファです。以後お見知りおきを・・・」
「こちらこそよろしく。なんだナオキくん、凶暴どころか紳士的な方たちじゃないか」
一同が簡単な挨拶を終えたところに、ロックラックやバンチャエウなど定番のクメール料理が次々と運ばれてきた。
※ロックラック=牛肉のサイコロステーキ。バンチャエウ=カンボジア風お好み焼き
「せっかくなんで食事をしながら語らいましょう。うっちーさんに協力を仰ぎたい案件は2つです」
「飛ぶ鳥を落とす勢いの"シャンバラフィクサー"たちが、揃いも揃っていったい何の用だい?」
うっちーさんは不敵な笑みを浮かべながら鋭い眼光を放った。
(見込んだ通りだ・・・。この人はジンたちの殺気を前に露ほどもひるんじゃいねえ)
「それでは単刀直入に・・・。1つ目の相談は"日本の暴力団に口を利いてもらいたい"というお願いです。もちろん適切な報酬を支払う約束で・・・」
「・・・・・。ナオキくん。キミは僕にどんな依頼をしてるか分かってる?」
「気に触ったのであれば、この場で遠慮なくぶん殴ってください。でも・・・」
「でも?その先の言葉いかんによっては・・・。いくらキミがカズくんやアヤカちゃんの親友とはいえ僕はすぐにでも席を立たせてもらうよ」
「はい・・・」
「・・・・・」
「この俺には正しいと信じる夢がある!」
「・・・・・・」
「いつか俺は、どんな悪党だってゼロからやり直せる国、幸せが見つけられる国をつくってみせます!だから・・・」
「・・・・・・」
「だから、うっちーさん!どうか力になってください・・・。お願いします!」
「・・・・・・・」
「ガッハハハハ。キミの熱意は十分に伝わった。頭を上げてくれ」
「ありがとうございます!」
「だけど覚悟しておいてね。アイツらを黙らせるには現ナマが必要だぞ!ガッハハハハ」
「言い値でお支払いしましょう。多少の持ち合わせはあるもんで・・・」
「だろうね。アヤカちゃんから聞いてるよ。孤児院の増築工事に踏み切れたのは、シャンバラ国からの寄付のお陰だって・・・」
「もぉ・・。姐さんは意外と口が軽いなぁ。絶対に内緒だって釘を打ったんすけどねぇ」
「アッハハハハ。で、もう1つの案件とやらは?」
「はい。こっちの件は取り敢えずうっちーさんの耳に入れておく程度の話で・・・。実は、このジンが主導でトンレサップ湖に水上プラントを立ち上げる予定なんです」
「水上プラント・・・?おぉ。なるほど・・・」
この頃、ヴァンビエンで栽培された俺たちの大麻は、沙羅双樹の会員やコールセンターのスタッフに売り捌くだけでなく、口コミが口コミを呼び、今や「上物と言えばテルマ」と、バンコク、パタヤ界隈で名を
「ナオキくんは真面目だねぇ。わざわざ僕になんて報告する義理はなかったのに。本当にキミたちはツイてるよ。医療大麻の解禁を決めたタイ王国のビッグウェーブに、ドンピシャのタイミングで乗っかったわけだ」
「さすがうっちーさん。話が早い。これでアニキも立派な共犯者・・・。いや、革命の功労者です!アッハハハハ」
「それは良い!ガッハハハハ。微力ながら応援させてもらうよ。近所に名産地ができると知ればアヤカちゃんもウハウハだ」
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