【第五章】ロマンチック航路の行方
stage 30 ネオオウム -Naoki side-
ヴィクラマシーラの開山を皮切りに、シャンバラ国は信者の数を爆発的に伸ばしていった。嬉しい誤算だったスマホアプリの大ヒットや、宗教界に返り咲いたアーチャリー、人気YouTuberの出家騒動、海外セレブからの多額献金など、多彩なファクターが追い風となり、我が教団は破竹の勢いで世を席巻中である。また、シャンバラ国の推薦道場に指定された沙羅双樹では、アヤカ姐さんが主催するクンダリーニ・ヨーガの模範シークエンスセミナーが人気を博し、日本とタイでの両輪体制も盤石だ。
※シークエンス=クンダリーニ覚醒に至るまでの効果的なヨガの構成。
※ ※
俺とヒロはアソークコールセンターの"開かずの間"にこもって、教団運営の諸問題を語り合っていた。
「ヒロ、今が正念場だぜ。俺らの目標は国家の樹立。金はいくらあっても足りねーよ」
「いやぁ、ここまでくると、もはや手の届かぬ夢物語ではなくなってきましたね」
「ヴィクラマシーラに連日のごとく押しかける右翼の街宣車やデモ隊、近隣住民による嫌がらせ、各メディアからのバッシング・・・。裏を返せば、それら全てが俺たちを脅威だと認めた証だ。始まったんだよ。本格的な"反シャンバラキャンペーン"がな・・・。なにがSEX教団だ!30過ぎの処女や童貞がゴロゴロいる国に未来はねーだろ。日本民族はどうやって少子化を乗り切るつもりだ!」
「ナオキさん。仏教では輪廻の種を植えつける性行為、つまり、生まれいづる現象を必ずしも良しとはしません」
「まぁ、そりゃそうなんだけどよお・・・」
「悲しいかな、無明の衆生には性瑜伽と交尾が同等に映るのでしょう・・・」
「・・・・・・」
「それはさておき、昨日の深夜番組にでてたパネリストの言い草は酷すぎですよね?」
「ネオオウムか?」
「はい・・・。いつの時代も同じです。結局テレビは視聴率が命。毎週のようにアンチシャンバラの特集番組が組まれてますもんね。ただ・・・」
「ただ?」
「誹謗中傷ならまだしも過激な行動に出る連中や公安の態度は気になるところです。ヴィクラマシーラで寝泊まりするサマナの話によると、敷地内に火炎瓶を投げ入れた暴漢をポリス小屋の警官はスルーしたそうです」
「ったく、ふざけやがって!カルト教団になら何をやっても許されるとでも思ってんのか?マスコミも大概にしろよ。バカどもの敵愾心を煽りやがって・・・」
「・・・・・」
「とにかくだ。そろそろ正攻法が通用しねー時期にきてるのかもな」
「ええ・・・。反対派のデモ隊には某大手宗教団体の信者が紛れ込んでいるようです。早めに手を打たないと面倒なことになりますよ」
「俺たちシャンバラ国は左右の両陣営のみならず、国家権力や同業者にまで目をつけられちまったか・・・」
「まさに四面楚歌・・・」
「よしっ!ヒロ、来週早々カンボジアに飛ぶぞ。お前もついてこい!」
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