stage 11 危険すぎる男 -Naoki side-
ヒロはまるでハトが豆鉄砲を食らったような顔だった。
「センター長・・・。僕は・・・僕はただ」
「ヒロ!俺らは同志じゃねーか。ナオキって呼べよ」
「そ、それじゃあナ、ナオキ・・さん」
「おう」
「あの方は、母性と父性の両面を併せ持つ不思議な包容力に溢れていました。ときに恐ろしく、ときに優しく」
「・・・・・・。なんだヒロ?まさか今もキマってんじゃねーだろうな?」
「いえ・・・。僕が大麻を吸う理由は"尊師と繋がりたいから"です・・・」
「は!?尊師?って・・・。あの麻原か?大麻だけに麻原なんてギャグはいらねーぞ」
「プッ・・・。ハッハハハ。そうです。いっとき世間を騒がせたオウム真理教の麻原教祖です」
「ヒロ、やっと笑ってくれたな。お前の回答はとても笑えたもんじゃねーけどよ・・・」
「僕は、小さな頃から一般世間の価値観にギャップを感じていたんです。現実社会には何かが足りないって・・・。そんな時、たまたま立ち寄った古本屋で出会ったのがオウムの書籍でした。すぐにこれだ!ってピーンときちゃったんです。周囲の反対を押し切り、あれよあれよという間にサマナ(出家信者)になるまで時間は掛かりませんでした」
「そうか・・・。でもよヒロ。どんな教祖を崇めるのも自由だが、地下鉄サリン事件や弁護士一家殺害事件はいただけねーぜ。俺が被害者家族だったら間違いなくこの場でブン殴ってたな・・・」
「ナオキさん・・。あえて非難を覚悟で言わせて下さい。尊師本人が何も語れない以上、僕はまだ、あの事件は誰かにハメられただけなんだって思いが拭いきれません。世界の闇で
「オウムは利用されただけに過ぎねーってか?」
「はい。おそらく・・・。村井さんの刺殺や尊師が口封じされている現状が動かぬ証拠です」
「なるほどなぁ。危険だ・・・。実に危険な思考ロジックだぜ・・・。ヒロ、俺が公安なら、お前はまずもって警戒対象だ」
「そうです。それこそが僕がバンコクに来た理由です」
「よくわかった。アソークコールセンターには様々な問題を抱えて日本を飛び出してくるヤツらがいる。今話題のLGBTに始まり、ジャンキー、元振り込め詐欺師、ただのバカまで飽きのこないラインナップだ。なぁヒロ、そんなメンバーの中でも、お前がバンコクを選んだ理由は誰よりも納得できる」
「そう言ってもらえて嬉しいです。クレーマーだらけの電話対応だって、もっと頑張ろう!って気になりました」
「ちょっと待て。せっかくヤル気になってくれたところ悪いがな。ヒロには今後、別業務に就いてもらうことになる。明日からの出社はフロアーじゃなくて直接この部屋に来てくれ」
「わ、わかりました・・・」
「あ、それともう一つ。日本には後継団体に属さねえ元オウム信者が沢山いるんだろ?バンコクに来る気があんなら全員採用してやるぜ。この俺がまとめて面倒を見る」
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