【第二章】僕らが大麻を吸う理由
stage 10 プッシャーを探せ! -Naoki side-
これは、ヴァンビエンから戻って3日目の朝の一コマだ。
「急遽みんなに集まってもらった理由は他でもない。親会社のAJコミニュケーションズからキツイお達しだ」
この日のために貸し切ったエクスチェンジタワーの大ホールには、総勢300名以上にのぼる現地採用社員が集まっていた。
「俺は会議に無駄な時間をかけるヤツはバカだと思ってる・・・。いや、バカどころかタチの悪い給料泥棒だ」
「・・・・・・」
「直球でいくぞ!この中に、まさか大麻なんてやってるヤツはいねーよな?ここ数日、当コールセンターのオペレーターを名乗るTwitterアカウントで、自慢げにハッパをふかす写真を連投する構ってちゃんがいるんだ」
内容を聞いて一瞬ざわついたスタッフたちは、再び水を打ったように静かになった。
「とはいえ・・・、ここはバンコク、欲望の街。綺麗事ばかりじゃねーのは叩き上げの俺が一番良くわかってる。そこでだ。もし仮に一度でも大麻を使った経験があるスタッフがいたら正直に申し出てくれ。期限は1週間以内。自己申告なら全てを赦す。それを過ぎて発覚した場合は即刻日本に帰ってもらう。以上、解散!」
※ ※
期限内に返信が届いた人数は43人だった。正直に申告しなかったであろうスタッフの数を計算に入れると、うちのセンターの大麻経験者率は300人中の50人、およそ17%になる。
「まぁ、こんなもんか・・・。若干物足りねーが、さっそくここから優秀なプッシャーの選抜にかかろう」
※ ※
フロアーの最奥部にある開かずの間に招き入れたのは、●●ヒロキという20代の若者だ。初めに目をつけたプッシャー候補の男は、伸ばし放題の髪にクルタパジャマで通勤する"センター随一の変わりもん"だった。
「呼びつけて悪かったな。これからはヒロって呼ばせてもらうぞ」
「は、はい・・・。ぼ、僕はやっぱりクビ・・・ですよね?」
「いやいや落ち着け。約束しただろ?自己申告なら全てを赦すってよ。俺はキミに興味があるんだ」
「僕に興味・・・?」
「そうだヒロ。支障の無い範囲でかまわない。経歴を聞かせてくれよ。この部屋での話は絶対に他へは漏らさない」
「経歴って・・・」
「よっしゃ。こっちから質問しよう。キミはなぜバンコクに来た?」
「・・・・・・」
「マリファナをキメて、タイねーちゃんとヤリたかったか?」
「そ、そんなんじゃ・・・・」
「恥ずかしいのか?男なら当然だろ。隠す必要なんてねーよ。なぜならな・・・」
「・・・・・」
「この俺も"マリファナをこよなく愛する一人"だからさ・・・」
「えっ!!」
「つまり・・・Twitterに画像を上げてた構ってちゃん本人だ」
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