ギターを買う

 いつもの日常に戻り、俺は18歳になった。

「18歳になった記念だ」

 と言われ、誕生日に友人からエロゲをプレゼントされてしまったのはいい思い出。

 それにしても切ない話である。

 おかげさまで自分でもエロゲを買うようになってしまった。

 本当にありがとうよコンチクショウ!


 他に変わったことと言えば、自動車免許を取り、ギターを買ったことくらいだろうか。

 

「なあ、なんで俺たちってなんでモテないんだろうな」

「学校が男ばっかりだからじゃね」

「いや、それでも彼女いるやつはいるだろ」

「じゃあ他校の女子に手出す?」

「そんな勇気、俺らにあると思うか?」

「じゃあバイトとかで出会いを求めよう」

「このバイト、男しかいねえじゃねえか・・・」


 当時働いていたバイト先でこんな会話をしていた。

 俺が働いていたのは地元にある定食屋で、バイトのメンバーは俺が通っていた学校の人間ばかりであった。

 今までの雰囲気で伝わっているとは思うが、俺の学校は男ばかりであり、女子との交流なんてそうそうあったものではない。

 女子とお近づきになりたい男ばかりが集まったバイトである。

 その定食屋の大将が、

「同じ学校だけで集めた方があんたらで連絡取り合いやすいだろう」

 というスタンスだったため、シフト管理もとても雑で、シフトの管理も俺たちバイトメンバーが行っていた。

 だからこそバイトの人間が各々連絡を取り合い、急用で抜けたシフトの穴などを勝手に埋める形になっていた。

 大将はその日に誰がシフトに入っていようが大して気にしておらず、人数さえそろっていれば別に構わないようだ。

 そんなテキトーさもあり、ちゃんと働くときに働いていれば客の少ない時間帯などは裏でおしゃべりしたりふざけたりしても何も咎められなかった。


「じゃあいつ出会いがあってもいいように自分を磨こう」

「具体的には?」

「うーむ・・・」


 悩んだ末に出た答えが、


「ギャップ萌えってどうよ?」


 だった。

 ギャップが何かはいまいち把握できないまま話は進み、各々特技を身に付ける流れとなった。


「俺がギターで弾き語りとか上手かったらギャップじゃね?」

「あ、それギャップだわ!いいね」


 ということで俺はギターを買うことになった。

 ノリというのは恐ろしい。

 ギャップをいまいち理解できていない男たちがギャップを語っている。

 俺はギターを、友人の一人はベースを買うこととなった。

 ちなみにバンドを組んだりなどの展開は無いので、そこは期待しないでほしい。


 俺が買ったのは初心者セットのような安価で買えるアコースティックギターだった。

 スタンドやらチューナーやら教本がごちゃごちゃ入っていた。

 とりあえずチューナーをセットし、チューニングをしてみる。

 

 ジャラーン


 お、なんかミュージシャンぽいぞ。

 

 だが早速練習するも指が動かない。

 簡単なコードでさえ躓く日々。

 まずコードが覚えられない。

 一つのコードを弾き終え、さて次のコード・・・となるが、いちいちコード表をめくらないと減の押さえ方もわからない。

「なんでみんなあんなに簡単そうに弾いてるんだよ・・・」

 苦難の毎日ではあったが、クラスにはギターをやっている友人もいたため、その友人の教えもありなんとか簡単な曲を一曲通して弾けるようになってきた。

 やはり好きな曲を練習するのが取っ掛かりとしては一番だな。

 興味の無い曲よりもモチベーションが上がりやすい。

 コード符と呼ばれる、歌詞にコードが記載された譜面とにらめっこをしながらではあるが、弾ける曲が少しずつ増えることでギターがどんどん楽しくなってきた。


 そして俺は、あのSNSにも弾き語りの演奏を上げるようになっていた。

 言ったでしょ?

 ちやほやされたいって。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る