♯10 砂漠の国の女王
──砂漠の国ザアラに到着していたリディアら三人は、女王マルダに会うために王宮を目指した。ザアラは別名盗賊の国だ。女王マルダも元は盗賊なのだ。
「女王陛下から目を離すなよ、ジャンヌ」
コクっと頷いた。ジャンヌは話せない訳じゃないが、会話は労力を使うとかで話さないらしい。
周りは盗賊しかいない。ダンテが辺りを警戒し、ジャンヌはリディアを守るに徹している。
すると突然、目の前の空間が歪み人一人通れる輪が現れた。その向こう側にハルマキと一人の女性が佇んでいた。
「なんでアホが」
ダンテの言葉の途中で輪が消え、女性だけがその場に残った。
「あの、私ルナって言います。ハルマキさんに仲間になれって言われてて……。」
「ルナって、
「はい。女王陛下に会ってから、仲間になるかどうか決めたくて」
リディアが真剣な
「あの。戦争になったらたくさん死にますよね?」
「はい」
「どうして、戦争を起こすんですか」
リディアの瞳に力が宿った。
「……帝王は子供をたくさん殺しました。老人をたくさん殺しました。若い民も……。そしてこれからも虐殺は続くでしょう。……私は、絶対に許しません。あなたが人を殺すことに躊躇いがあるなら、無理には頼みません。虐殺を無くすために兵士を虐げる。どんなに言い繕っても、私たちがする事は殺人です。それをしなければ帝国のままなのです。私には責任があります。民を救うという責任があるのです」
リディアの瞳は真っ直ぐルナに向けられている。その目には一点の曇りもなかった。ルナは頭を垂れた。
「私の名前はルナです。二つ名は月影。月が出てる夜なら、ハルマキさんやカムイさんと同じ力で戦えます」
「ありがとうございます。あなたの力、頼りにしています」
ダンテが前に出てきた。
「ハルマキやカムイと同じ力って、本当か?」
「はい。カムイさんと満月の夜に戦いましたが……。襲ってきたので仕方なくですが。私、勝ちました」
皆が顔を見合わせた。月が出る夜、限定的だが城攻めの決定打になるかもしれない。
「決まりましたね。攻め込むのは昼にしましょう」
「え、夜じゃないんですか」
ダンテがやれやれと首を振った。
「明るい内に敵の数やら内部の様子を確認しなきゃいけねぇ。城に突入する奴らも明かりがないと厳しいしな」
「なるほどぉ」
リディアが胸の前で手を結んだ。
「私たちはこれから王宮に行きます」
「あ、私は帰ります。決行日が決まったら、鳥で知らせて下さい!」
ルナは再び空間をねじ曲げた。ハルマキが輪の向こうから覗き込んでいる。
「チャラ男、マルダ女王に失礼のないようにな」
「とっとと次の二つ名集めろよアホ!」
輪が消えた。ダンテは憤慨していたが、リディアは嬉しそうだった。
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