♯11 沈んだ心
ハルマキはルナと別れた後、二つ名の膨大な魔力を頼りに町を経由しながら旅を続けた。その経由地であるラズナという小さな町に立ち寄った。
「あんた、ハルマキかい」
ハルマキは心臓が止まりそうになった。
「い、いや。違うけど」
髭を長く伸ばした老人がハルマキにそっくりな顔が絵書かれた手配書を握りしめている。
「嘘を言うんじゃない。兵士を1万人殺した大罪人。わしらの英雄じゃ!」
「へ?」
ハルマキはキョトンとした。兵士は全員気絶させた筈で、殺してはいない。帝国側に何らかの意図があるのだろう。
老人の話によるとこの町の住人は全員、帝国を好んでいないようだった。
「まぁまぁ、お茶でもしていきなされ」
ハルマキはこのあと町長の屋敷に招かれ豪華な食事をとった。
「ありがとう。その、嬉しかった」
町長はすかさず言った。
「あなたは私たちの希望だ。帝国を終わらせてくれ」
ハルマキは別れ際に握手をして、町を去った。
ああいう人たちも居たんだな。ハルマキは胸に暖かいものを感じた。
ラズナを出て3日。次の町であるユグトへ到着したハルマキは、ある異変に気が付いた。ラズナ方面で無数の魔力を感じた。10や20じゃない、数え切れぬ程の魔力を持った者達。
ハルマキは飛竜を置いて自ら炎の翼を出現させ、飛び立った。この翼は飛竜より速い。
頼む、間に合ってくれ。
ラズナに到着したハルマキは、言葉を失った。焼け落ちた民家、道端に転がる大量の死体。
帝国兵がまだ息のある者を次々と処刑していた。
ハルマキの体内に蓄積された怒りと魔力が、身体中から吹き出した。
「町の制圧完了しました!」
広場に集まった2千の兵士は用の無くなった町を退散しようとしていた。
「ぐっ」
断末魔と共に一人が倒れた。
「なんだ!」
次々と兵士が倒れて行く。
「くそ!なにが起きて……」
言った兵士は自らの頭と身体が切断されている事に気付いた。
復讐の鬼と化したハルマキは、次々と兵士を殺害してゆく。
2千の兵士を皆殺しにしたハルマキは、町人を土の中へ還して回った。
性別も分からない子供の焼け焦げた遺体を抱いた。
許さない。許してなるものか。
ハルマキは血の涙を流しながら町人全員を埋葬した。
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