♯57 強き者





 ハルマキは剣を抜いた。


 「じゃあ、行きますか」


 ハルマキを先頭に二つ名たちは一斉に荒れ地を駆け抜けた。


 魔物が押し寄せてくる。


 徐々に距離が縮まり、激しくぶつかった。吹き飛ばされた魔物たちは絶命し、皆は魔物の群れの中を突き進んだ。


 そして皆は感じた。膨大な魔力を。


 「あれは僕の獲物だ!」


 ローズが城門の前に立ちすくむ鎧を纏った鬼を捉えた。魔力の主はあの鬼だ。


 ダンテは呼び止めようとしたが止めた。あの鬼はおそらく、三強であるハルマキらじゃないと倒せないだろう。それほどの魔力をあの鬼は放っているのだ。







 ローズは大鎌を構えた。鎧を纏った鬼に目前まで迫っていた。


 鬼は突然ローズに語りかけた。


 「我、慚愧ザンキ。貴様では我に勝てない」


 「ちっ、喋らないでくれるかな?しらけるからさ!」


 大鎌と慚愧の持つ巨大な日本刀がぶつかった。激しく火花を散らした。


  





 ローズは一太刀交えただけで理解した。慚愧との戦いが長引くことを。


 ローズは凶悪な笑みを浮かべた。


 「はぁ。……幸せ」


 ローズは目では追えぬ程の速さで鎌を振った。慚愧はそれら全てを刀で防いだ。


 「我には止まって見える」


 ローズは舌打ちした。


 「せっかく楽しいのに、君喋んないでくれる?」


 ローズの体から魔力が激しく吹き出した。








 ローズと慚愧の戦いが始まった頃、更なる異変をカムイは感じた。慚愧とは別の得体の知れぬ魔力を放つ者がいる。魔力自体は大きい訳ではないのだが、鋭さを感じる。


 カムイは魔力の主を探し、城門の中にいることを察知した。


 カムイは押し寄せる魔物を斬撃で沈めながら道を作った。


 そして城門の前まで辿り着いた。剣で扉を斬り裂いた。音を立てて城門は崩れ落ちた。


 






 城の中でただ一人、立ちすくむ悪魔のような者がいた。手には刀身の長い剣を携えている。


 悪魔はカムイに気付き頭を下げて一礼した。


 「私はエスパーダ。冥界の……」


 言い終わる前にカムイが斬り込んだ。だが、ギリギリで交わされた。


 距離を取ったエスパーダがまた話しはじめた。


 「私はエスパーダ。冥界の王子!貴様……。私の話してる途中で攻撃……」


 カムイは連撃を放ったのだが、剣で全て防がれた。


 エスパーダは額を痙攣させた。


 「貴様は……。死刑だ」





 

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