♯53 死神の助け


 そして、無造作に置かれた紙切れを見つけた。それを拾って読んでみた。


 ──やぁ、ハルマキ君。シチューは美味しかったかな?僕のお手製だ、残したら首を貰うよ。それとね、今回の異変はリュークの仕業じゃない。君が戦った魔物、どこから来たか分かるだろ?それと、石化してないのは僕と君だけだ。ま、君に全部を教えてやる筋合いはないし、あとは自分で調べてね。みんなが石にされたこの世界、正直嫌いじゃない。だから僕が手を貸すのはこれが最後だよ。せいぜい足掻きたまえ。死神より。


 ハルマキは手紙を読み終わり、しばらく考え込んだ。


 ローズがなぜ自分を助けたのかはなんとなく分かる。だが、ローズとハルマキだけが無事でいるのは何故なのだ。そして、冥界の魔物。


 





 

 「冥界」


 冥界とはつまり、あの世であるとアニスに説明されたことがある。


 冥界について調べる必要がありそうだ。ハルマキは城にある古い図書室を思い出した。そこならば冥界について書かれた書物があるかもしれない。


 ハルマキは身支度を整え、洞窟を出た。








 城の外門へ到着したハルマキ。城の中に気配は感じない。平原を一直線に走った。


 城門の前で一度立ち止まり、重い扉を開けた。


 廊下を進んだ。途中石にされた兵士とすれ違った。ハルマキは目を反らした。地下へ通じる扉を見つけてそれを開けた。狭い階段を下りて行く。


 やがて木製の扉が見えた。中へ入ると本が余る所なく詰まった棚が何十列も並んでいた。


 一冊ずつ背表紙を確認しながら、冥界の文字を探していった。







 夜が明け、太陽が昇った時。ハルマキは古びた一冊の本を手に取った。背表紙には冥界のすべてと書かれている。


 本の一番上のページを開いた。西暦230年と書いてある。今は西暦6215年。6000年前の本だ。


 じっくりと1ページずつ目を通す。


 冥界より魔物が現れた。魔物は強く、二つ名を持つ者しか倒せなかった。冥界の王、現る。人々は皆、石にされた。神の子を除いて。


 大昔にも二つ名は居たのか。それに冥界の王とは一体。似ている、今の状況に。


 ハルマキは本を閉じた。リュークが関わっているのかは分からないが、冥界の王がセロリアに来ているのかもしれない。神の子とは恐らく、ハルマキとローズ、カムイの事だ。三人は神の名を持つ二つ名だ。


 


 

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