4章 災厄の息吹

♯51 突然の崩壊






 日本への旅行から帰ってきて、間もなく一月が経とうとしていた。アニスは読書に耽って、ハルマキは様々な財宝が載った雑誌を読んでいた。


 「欲しいんだよな、これ」


 アテナの王冠と呼ばれる伝説の冠だ。見た者は居ないと書いてあるのに、版画がしてある。不思議だ。


 「取ってくればいいじゃない」


 「いやいや。誰も見たことない物は探せないだろ」


 じゃあ諦めなさいと言いながら欠伸をするアニス。本当に平和ボケしている。ハルマキ自身も剣を全く握っていなかった。


 「体が鈍ってきたな。カムイと殺り合って来るかな」


 「いってらっしゃーい。夕飯までに帰って来なさいよ」


 お前は母ちゃんか。心の中で呟いた。


 




 「あ、アニス」


 ハルマキが振り返った時だった。椅子に座っていたはずの場所に石像が現れた。石像はアニスにそっくりで、本を読んでいる。


 「アニス!」


 ハルマキは石像に駆け寄った。どうなっているのだ。混乱に陥り外へ飛び出した。


 人の姿はなく、町の人間を型どった石像だけが無数にあった。


 「誰か!居ないか!」


 ハルマキの叫びは虚しく響いた。


 なんなんだ、これは。店の中に入っても、民家に入っても石像しかない。皆、石像にされてしまったのか。


 遠くの空に気配を感じた。何かがこちらに飛んでくる。


 ハルマキは咄嗟に路地に身を潜めた。


 飛翔体は徐々に近付いて来る。そして正体が分かった。リュークと共に冥界から来たガーゴイルだ。これはリュークの仕業なのか。


 




 町へ降り立ったガーゴイルは、町の中をさ迷い歩いた。何かを監視しているのか。


 ハルマキはガーゴイルを一体捕まえ、路地に引きずった。


 「何をした」


 ガーゴイルはただ暴れるだけだった。ハルマキはガーゴイルを斬った。


 城は無事だろうか。ハルマキはガーゴイルの視界をかいくぐり、城へ向かう事にした。






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