♯45 自転車への憧れ





 「金貨なんだけど」


 ハルマキは腰の巾着袋から金貨を20枚取り出して、カウンターに積んだ。


 質屋の店主は金貨を一枚一枚確かめた。


 「1枚5万、20枚で100万でどうでしょう」


 「はい、それでよろしくお願いします」








 ハルマキを待っている間に、リディアらは辺りを見渡していた。


 「おっせーな、あいつ。女王陛下、俺たちだけで行っちゃいましょうか」


 リディアはクスクスと笑った。


 「ほんとに仲がいいのですね」


 ダンテはしかめっ面をした。


 「あれは何かしら」


 アニスが指差した先には自転車が並べられていた。


 リディアは目を細めた。


 「車輪が二つ付いてますね」


 ロキは無表情で言った。


 「車輪があるのなら人が乗って動くものだろ。ハルマキに聞けばいい」


 「私でも乗れるかな?あれ乗りたいかも」


 ハルマキが質屋から出てきた。


 アニスが必死に駐輪場の方へ指を差していた。


 「あれに乗りたいわ」


 ハルマキは眉を潜めて言った。


 「無理だ、あれは練習が必要だ。……いや、魔法を使えばいけるな」


 「でも、魔法はダメだって」


 「それ位なら大丈夫だ」


 アニスは小さなガッツポーズをした。


 その時、ジャンヌの腹がぐぅ、と鳴った。ジャンヌは真顔で自分の腹を指差した。


 「ははっ。じゃ飯にするか」









 ハルマキらはファミリーレストランに来ていた。平日の昼過ぎなだけあって、ガラガラだった。


 皆はメニューを見ていた。


 「これ、旨そうだな」


 ダンテはステーキを指差した。


 アニスとルナ、ジャンヌ、リディアはクリームパスタとサラダのセット。ロキとハルマキも赤身の牛ステーキに決めた。


 ボタンを押して店員がやって来た。周りからおぉー。と感嘆の声が漏れた。


 ハルマキは注文を終え、皆に言った。


 「フリードリンクだから、飲み物は好きなの飲み放題だ」


 とりあえずハルマキのあとに付いてゆき、ドリンクサーバーの前に到着した。


 「コップを置いて飲みたいボタンを押せ」


 女性陣が眼を輝かせた。


 


 

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