♯44 エスカレーターの魅力

 ルナが満面の笑みを浮かべて二階に到着した。


 「お待たせしましたぁ。あぁ、楽しかった!」


 ハルマキは歩き始めた。皆が後ろをついて行く。


 駅の改札の前を横切った。


 「凄い人、きゃっ!」


 アニスにサラリーマンがぶつかった。何事も無かったようにサラリーマンの男は歩き去った。


 アニスは男を睨み付けている。


 「まぁまぁ、この国の人達は疲れてんだよ。働きすぎでな。だからイライラしてんだ。許してやってくれ」


 「ここは人が多すぎる。移動しようぜ、アホ」


 ハルマキはそれに同意し、歩きだした。売店の前を通った時、スポーツ紙に目をやった。2017年4月15日と小さく書いてあった。


 「春か。やっぱ4年経ってたか」


 リディアが胸の前に手を置いた。


 「ハルって、なんですか?」


 「あぁ、日本には季節がある。セロリアにはないもんな。寒かったり暑かったりする時期がある。今は暖かい春って季節だ」


 皆がなるほど、と頷いた。そしてまたエスカレーターが下の階へと続いている。


 「私は階段で降りるから」


 アニスはスタスタと階段を駆け降りた。


 「下りもいいですぅ」


 ルナはご機嫌だ。皆はアニスと合流し、ハルマキの後ろをひたすら歩いた。


 





 そして信号機の前で止まった。


 「なんで止まるんだ」


 ロキを含め皆が疑問をもった。


 「ほれ。あれ、赤いだろ。あれが青にならないと進めない」


 「面白いです!」


 今度はリディアがぴょんぴょん跳ねた。


 「意味は分かりませんが、とても感動しています!あ、青になりました!皆さん行きましょう!」


 リディアが先頭を歩いて交差点を渡った。


 「アホ、あとは女王陛下に任せてお前は帰ってもいいんだぜ?」


 「いいのかな?そんなこと言って……。あ、女王。そこ右」


 「はい!」


 華やかな通りから外れ、薄暗い路地に入った。質と書かれた看板の店の前に立ち止まった。


 「着いたぜ」


 アニスはメモを取り出した。


 「金貨と日本の通貨を交換するのね」


 「なるほど。アニス、日本のことを勉強なされたんですか?」


 「ハルマキから聞いたことをメモってるだけよ」


 皆は質屋に入った。中は狭くぎゅうぎゅう詰めになってしまった。


 「みんな、悪いけど外で待ってて」


 ハルマキを残し、皆は外へ出た。


 



 

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