♯41 さすらいのトレジャーハンター






 リディアはしばらく考え込んだ。そして。


 「近いうちにお返事を書きますね」


 アニスは頷いた。


 「ゆっくり考えてね」


 二人はリディアの部屋から退出した。廊下を歩く二人。


 「なんでそんなに日本に行きたいんだ?」


 「リディアは緊張しているの。また国の危機が訪れるんじゃないかってね。だから今必要なのは息抜きなのよ」


 なるほど。リディアを気遣ってのことだったのか。


 「城に何かあればすぐに戻れるし、問題ないわ」


 二人はスタスタと廊下を歩く。途中、ダンテとすれ違い睨みを利かせた。


 「アホ」


 「チャラ男」


 ダンテはすれ違い様に言葉を漏らした。


 「ありがとな」


 「きも」


 ダンテが激怒した。


 「こっちは礼を言ってんだよ!騎士の礼は素直に受けとるべきだぜ」


 「はいはい。らしくねぇことしなくていいから。騎士とか」


 「俺は騎士だ!アホ!しね!」


 ダンテはドカドカと足を鳴らして歩き去った。








 ──酒場ハルニス。ハルマキはこちらに来る前の事が気になっていた。アニスにそれをぶつけてみた。


 「アニス。俺をセロリアに飛ばした時さ」


 アニスは頷いた。


 「なんで俺がハルマキだって分かったんだ?」


 「なんとなく」


 よくなんとなくで出会えたものだ。


 「私の運はそこで使いきったわ。無事にセロリア王国を取り戻せたし、昔のことはいいじゃない」


 ハルマキは頭の後ろに手を組んだ。


 「サラ、元気かなぁ」


 「例のトレジャーハンター?」


 「あぁ、噂は聞くけど」


 突然、扉が勢いよく開かれた。冒険家のような格好をした見知った女性がハルマキの前に立った。


 「よ、よぉ。久しぶりだな」


 「なんだ、ハルマキか」


 「なんだとはなんだ」


 「ごめん。なんか呼ばれた気がして」


 アニスは呆れたように言った。


 「あんたが噂をしたらみんな来ちゃうんじゃない?エルフも来たし」


 「確かに……。こいつがサラ」


 よろしく、と二人は言葉を交わした。


 「なんか凄いお宝の情報しらない?」


 「南の遺跡に金貨が大量にあったぞ。手を付けてないからそのまんま残ってるはずだ」


 「ありがと。じゃあね」


 サラは物凄い勢いで店から去っていった。


 「再会の感想は?」


 「変わらねぇな、あいつ」


 ハルマキは少し安堵した。帝国が王国になっても、変わらないやつも居るのだと。


 「さ、飯にしようぜ」









 一週間後の昼過ぎ、二人は昼食を終え思い思いにクツロいでいた。


 「手紙来ねぇな」


 「あんたがそう言うと来るわ。ほら」


 小鳥が窓から入ってきた。


 「なんで!」


 「あんた、自覚してないかもしれないけど予知の能力を持っているのよ。まぁ質はかなり低いけどね」


 アニスは小鳥の足にくくりつけられた手紙の筒を取り外した。


 「俺にそんな力が……。」


 手紙を読み始めるアニス。


 「実戦には勿論、日常生活ですら使えないから安心しなさい」


 確かに虫の知らせ程度の力だ。何にも役には立たないだろう。


 アニスはハルマキの顔の前に手紙を広げた。


 「んー。お?まじか」


 手紙にはリディアとダンテ、ジャンヌが日本への旅行に参加する旨が書かれていた。


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る