3章 遥かなる国
♯40 戦いのあとで
セロリア城の戦いから3ヶ月。リディアはリュークの襲撃もあって兵士を更に50万増やした。平原の墓の数が増えている。ダンテは自分が育てた兵士の墓に花をそえた。
酒場ハルニス。アニスとハルマキは店の中でダラダラと過ごしていた。
ハルマキが呟いた。
「もう戦いはこりごりだ。敵も味方もたくさん死んだ」
「そうね」
ハルマキは傍らに置いてある剣を見た。
「いつか、剣を捨てる日が来るのかな」
アニスはそれには頷けなかった。敵はまたやってくるかもしれないのだから。
暗い表情を浮かべたハルマキを気遣い、違う話をした。
「そういえば、あんたに両親はいるの?」
「いる。けど、会いたいかどうかと聞かれるとそうでもない」
「両親なのに?」
ハルマキは伸びをした。
「いろいろあんだよ」
アニスはそれ以上の詮索はやめた。
「今度みんなで行きたいわね。日本」
「まじか。みんなって?」
アニスは背もたれにもたれかかった。
「リディアとダンテとジャンヌ」
「無理だろ!戦いあったばっかだぞ?」
「いや、大丈夫よ。何かあれば魔法で知ることも出来るし、すぐにセロリア城に帰ることもできるわ」
日本へ帰る。何度か頭に過ったことはあるが、本気で帰りたいとは思わなかった。それに両親はハルマキは死んだと思っているだろう。こちらに来て4年も経つのだから。
「まぁ、行くなら案内するけど」
アニスは立ち上がった。
「城へ行きましょう」
リディアは机に向かい熱心に筆をとっていた。ペンを置き、思い切り伸びをした。その時、扉がノックされた。
「はい」
扉が開き、アニスとハルマキが部屋に入ってきた。
「いらっしゃいませ。こちらへ」
併設してあるテーブルに三人は着いた。
アニスが口を開いた。
「私たち、日本に旅行に行こうかと思ってるんだけど」
「それは素敵ですね!」
「リディア。あなたも来なさい」
リディアは俯いてしまった。玉座を放り出して旅行なぞ許されるのだろうか。
「安心しなさい。1泊2日よ」
「ですが、城がまた襲われたら……。」
「魔法ですぐ知らせがあるし、魔法ですぐに城の中よ」
この世界の住人は、なんでも魔法で解決しようとする。魔法が無くなったらどうするんだとハルマキは沁々思った。
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